鹿児島市内で「みなみの薬局」など3店舗を経営する、原崎 大作さん。薬剤師としての活動のかたわら地元団体のオーガナイザーや県内起業家の支援などをマルチにこなしています。実は、原崎さんはGooCoの初期開発の協力者でもありました。その当時のことから薬局の今後の在り方までを紐ときます。
オシャレでオープンな薬局を。日頃から患者と接点を持てるように
鹿児島市にある「みなみの薬局」。近くに総合病院があり道路をはさんで薬局が並ぶ、いわば門前通りに立っています。そこでは総合病院からの患者さんが中心です。そうした中で、「みなみの薬局」が特徴的なのは、インテリアや内装がオシャレで、外から薬局の中が見られるオープンな設計。
原崎さん「『患者さんは病気を隠したいのに、こんなフルオープンで、外から顔がまじまじと見えるようなところに来ないよ』と当初は、反対されたんです。
ただ、僕には確信があったんです。コンビニエンスストアでも中に人がいるのをわかるように、わざと雑誌売り場を入口周辺にして、にぎわいを演出するでしょ。薬局もそれと同じだと。実際に薬局をオープンしてみて、患者さんは来てくれましたし(笑)」
原崎さんは、薬学系の大学を卒業後、調剤薬局、病院勤務などのキャリアを経て独立。薬局を自ら営むようになり、患者さんが自然と集まってくる姿を見て「患者さんは技術で薬局を選ぶのではない」ことを思い知りました。そこで重要なのが、「場づくり」「人づくり」「企画づくり」の3つです。
原崎さん「学会の発表を見てもそうですが、薬剤師は、いかに“刀(=技術)”を研ぐかに熱心で、刀をしまう“鞘(=薬局)”をないがしろにしがち。今、僕は技術よりも、スタッフの力を最大限発揮できる方法を真剣に考えています」
“場”とは環境。人が気持ちいいと思える空間の演出にありました。
原崎さん「みなみの薬局が内装にこだわっているのもそのため。“人づくり”で言えば、スタッフの適正配置や、ツール導入による業務の標準化、介護や育児をしながらも安心して働き続けられるしくみづくりなどです」
“企画づくり”は、原崎さんが学生のインターン生が経験していたことでした……
原崎さん「いかに日常の段階から患者さんに薬局と接点を持ってもらえるかにチャレンジしています」
薬剤師が求める薬歴を具現化した、UX設計のGooCo
経営者としてだけではなく、TED×kagoshimaオーガナイザーや起業家の支援など、さまざまなフィールドで積極的に活躍している原崎さん。実は、原崎さんはグッドサイクルシステムの遠藤 朝朗とも10年来の知り合いでした。
原崎さん「GooCoの“サッと入力”は僕が言ったことが形になっています」
電子薬歴の中には、SOAP形式(「S(subjective):主観的情報」「O(objective): 客観的情報」「A(assessment): 評価」「P(plan): 計画(治療)」の4つの項目に分けて記録する方法)で、記入欄がはじめから決まっています。
それぞれの項目に書いていくタイプのものがあり、そのやり方は、負荷がかかると、GooCo開発時には薬剤師としてシステムに対しアドバイスをしていました。
原崎さん「私たちは、話を聞いてから、それがSかOかと判断するんですよ。
だから話の内容がSOAPのどこにあたるのかを決めてから書くのではなく、まず記録してから、その内容がSOAPの何にあたるのか決めた方が、人の情報処理の負担が減るんです。それでGooCoは、情報を記録してからSOAPの項目を選べるようにしてもらいました」
原崎さんは、開発当時にもうひとつアドバイスしていました。
原崎さん「たとえば、資料とノートがあったとして、資料を見ながらノートに書きこむときって、資料左でノートを右にして書きませんか。逆にすると書きにくい。
たぶん、それが直感的に正しくて。PC版のGooCoでは画面の左側に患者さんの基本情報を並べて、右側に入力項目が並ぶようなレイアウトがいいんじゃないかと」
また、GooCoは、禁忌や併用薬など薬学的な監査の面においても薬剤師の業務を支援するシステム。薬歴を見るとパッとわかるしくみにもなっています。
原崎さん「実際に、薬剤師たちは、薬歴を見た瞬間に、“何が重要な情報か”を把握したいと思っていて。それができているのが、GooCoだと思います」
現場の薬剤師さんが求める薬歴を追求し具現化したもの。それが、今のGooCoなのです。
人間の幸福を考えられるのは人間しかいない
近年、医療費の圧迫が社会課題となり、薬剤師や薬局に対しても厳しい目が向けられています。こうした中、原崎さんは、ガードレールを例に挙げながら、薬局は「価値」ではなく、「意味」として捉えることが重要になっていると話します。
原崎さん「ガードレールって、ほとんど役に立ってないですよね。だって、ぶつかった跡がないじゃないですか。むしろ、あったら困るわけで。ガードレールは役に立たないことが正義なんです。
でも、ガードレールがなかったら、崖とか走るのが怖いでしょ。ガードレールがあるから、安心して走れますよね。交通事故の件数を減らすものではないけれど、あることに“意味”があるんですよ」
原崎さんは、薬局もそんなガードレールと似たようなものだと思っています。
原崎さん「今は、そういったものに対して景観が悪いとか、使われないものにどれだけお金を使っているんだと言われます。けど、薬局もガードレールのようなものだと思えば、少し気持ちが楽になるので、そう考えるようにしてるんですよ」
また、薬剤師が提供していた仕事が、技術の進歩によりAIにとって代わられる可能性が出てきました。こうした中で、薬剤師の存在意義は「人の幸福に寄り添えること」だと、原崎さんは考えています。
原崎さん「処方箋で出された薬を正確に調剤して、患者さんの服薬を管理するだけであればAIでもできると思っていて。じゃあ、何が違うかといえば、ひとりの患者さんにとっての幸福を追いかけることかなと。
たとえば、痛み止めを渡すことで、痛みがない時間をつくり出して、痛みによる不安を取り除けます。それによって、患者さん自身の人生にとってどんな価値が生み出せるだろうか、そういった視点を持って、患者さんと接せるのは人間にしかできないと思うんですよね」
薬を渡す“意味”に想いを巡らせ、想像力を持って患者さんに接することが大切になっているのです。
患者一人ひとりの有限な時間を、充実したものにするために
原崎さんにはがん患者さんのみとりなど人間の生死に関わる現場に携わる中で、気が付いたことがありました。
原崎さん「病気になったときに不安になる3つの要素があります。それが“金”と“時間”と“心”なんです。入院代のお金が足りるかなとか、やりたいことやしたいことがあるのに時間がないなぁとか、さらにいつまで治療が続くのかと不安がつきまとう。
だから、この3つの価値を維持し、高めることが、僕にとっての“命を守ること”だと思っていて。私は、10歳のとき交通事故で片足を失い、それ以来、義足で過ごしています。自由に体を動かせないから、頭を働かすようになったのかもしれません。
先日も、骨肉腫で足を切断した子に、走り方の指導をしてきたんですよ。そしたら30分ぐらいでみごとに走れるようになって。その子の人生を豊かにできたと思えて、嬉しかった。
そういうのが人間の仕事で。命の価値を高めることに貢献してるな、と。そういうこともあって、最近、患者さんの薬を待つ時間分だけ、寿命を延ばせているかを考えています。ものすごく壮大な話ですが、常に“問い続ける”ことは大事にしたいです」
薬歴のこれからの変化を原崎さんはどう考えているのでしょうか。
原崎さん「これからの薬歴は、もっと世の中の役に立つ視点に変わっていくと思っています。たとえば、薬歴は今、疾患ごとのソートはできないんです。
薬剤師はあくまでも疾患名は推測で記録しているから、それができないのも理屈ではわかるんですけどね。薬歴の情報が個人の服薬を最適化するだけでなくて、たとえば、糖尿病の患者数を地域ごとに比較するなどのデータの活用ができると、おもしろくなっていきますよね」
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