特集 緩和ケア病棟の機能、地域との連携
変化する緩和ケア病棟のハードルとさまざまな課題
2019-09-11
2018年度診療報酬改定で、「緩和ケア病棟入院料」は区分1・2に分けられ、緩和ケア病棟の機能分化が図られるようになった。一方で地域との連携の視点も求められている。7月に開催された日本ホスピス緩和ケア協会の大会では、機能分化と地域連携に苦慮する現場からの声が寄せられた。


緩和ケア病棟を取り巻く環境

長年にわたりホスピス・緩和ケア病棟の運営などに携わってきた淀川キリスト教病院緩和医療内科部長の池永昌之氏は、自らの経験を踏まえ緩和ケア病棟、さらには地域との連携の課題を報告した。

池永氏によれば最近の医療体制は、緩和医療病棟だけではなく、その周辺が変わってきたと指摘する。例えば、現在の大きな流れとして医師の働き方を変えざるを得なくなっている。特に超過勤務が指弾され、時間外のカンファレンスはできなくなったなどである。

また患者の家族との関係もだいぶ変わってきた。医師の勤務時間内にはほとんど家族が来られず、面談をするとなると時間外になってしまう。週末にならないと来られない家族もかなり増えてきた。

さらに大阪など大都心だけの問題かもしれないが、急性期病棟の病床が空くようになり、新たに緩和ケア病棟を新設することも増えてきた。医師の配置がない中で、病床だけが増えている現状があるのだ。これらの状況の中で、「ケアの質を保たなければいけない事態に直面している」(池永氏)。


過渡期にあるがん治療と緩和ケア

池永氏は、「がん治療とホスピス緩和ケアの関係も過渡期にある」と強調した。特にがん治療の進歩で、抗がん治療で入院しなければならないのは治療開始時だけ。ほとんど入院しないで治療が進められているのが実情だ。

その一方で非常に厳しい状況までがん治療が行われるようになり、予後2~3カ月までは何らかの治療が行われるようになった。したがって緩和ケア病棟が担当する時期は、予後の非常に限られた時間の中で、早く調整しなければ間に合わないということも起きている。

ただ同院が立地する地域は、在宅緩和ケアの施設が普及してきたという。自宅での治療を希望すれば、自宅に居られるようになった。このことも、緩和ケア病棟が変わらなければならない理由の1つだ。逆に入棟依頼があればできるだけ、早い対応も必要となる。


拠点病院とのコミュニケーションが大切

このような中、入院料1・2、緊急入院加算が設定され、またがん対策基本推進計画の中で緩和ケア機能を分化するという文言がいきなり出てきた。

「私がホスピスをはじめたころは、症状緩和と看取りのケアをしっかりとやっておけばよかった」(池永氏)のだが、現在では地域連携、特に前方支援、後方支援との連携が必要となってきている。

拠点病院との十分な連携、コミュニケーションが大切となり、一方で長期入院はせず在宅復帰率が評価されるようになっており、「後方支援にも今まで以上に取り組んでいかなくてはいけないだろう」(池永氏)。


医師のアウトリーチ、人材交流

その上で池永氏は、地域のバックアップ機能としての緩和ケア病棟の役割、特に自宅や施設に復帰した場合の「緊急入院を受け入れる役割を担わなければならない」という。

ただ「独居である」「自宅に介護者がいなくて、患者や家族の不安が大きい」「受け入れの施設がない」場合にはどうするのかという問題がある。その解決のためにネットワークを広げていかなければならない。

ネットワークの拡大のためにも医師が病棟の中にいるだけではなく、アウトリーチし、人材交流を図り、患者宅を訪問し、地域の医療機関と連携して必要な時はバックアップすることが大きな目標になっていく。

さらに池永氏は、緩和ケア病棟として時間外の緊急入院にどう対応するかの回答は考えなければならないとする。病棟としては大変な労力となるが、その対応は不可欠だ。

一方で、緊急入院だけが多くなると、緩和ケア病棟なのか急性期病院なのか分からなくなる。そのためにも急性期型の緩和ケア、いわゆる入院基本料1の適切な人員配置とはどういうものかを考えなくてはならない。

また緩和ケアチーム、在宅緩和ケアが発達し、その中間に位置する緩和ケア病棟とはどうあるべきか、考える時期にきていると指摘。特に緩和ケア病棟は、死に対峙した患者、家族と接していくべきだとした。限りある命を背負った患者、家族と意味や価値を共に探す役割。それが緩和ケア病棟が地域の中で活動していくキーワードになるのではないのかと結んだ。



■30日以内の退院は本義ではない 現場でどう対応しているのか

緩和ケア病棟の課題を整理

最後に行われたパネルディスカッションの冒頭、座長を務めた日本ホスピス緩和ケア協会理事長の志真泰夫氏は、現在緩和ケア病棟が抱えている課題を整理した。

それによると、▽緩和ケア病棟が入院料1を算定し、在院日数を短くして自宅に戻すと、当然緊急入院も増えてくる。それをどう緩和ケア病棟で受けていくのか。▽緩和ケア病棟から在宅診療に出たり、在宅訪問している事例が見られるようになってきたが、今度それをどう展開していくべきか。▽緩和ケア病棟から地域に帰そうとしても、その受け皿がない場合にはどうするのか。-これらを踏まえ、会場も交えて議論された。


緩和ケア病棟を辞めた理由

もともと緩和ケア病棟に勤務し、その後在宅ケアに移った相河氏は、病棟を辞した理由を「30日以内という在院日数を区切られたことが一番の要因だった」とした。

緩和ケア病棟に入院する場合、在宅にいられなくなって余命もあと1カ月というがん患者が少なくない。その患者に対し、「1カ月経ったら他の病院に移ってもらう」「地域の病院に転院してもらう」ことを伝えることに反発を覚えたのだ。

最後までしっかり看取ってあげたいとの思いから、緩和ケア病棟に移ってきた。しかし30日以内という区切りがあると後は自宅しかないと思い、在宅緩和ケアに移ったという。


体験入院を実践

会場からも、関西で緩和ケアに取り組む病院の実践報告があった。なかでも、時間外緊急入院を受け、体験入院も実践しているとの発言が注目された。

体験入院とは、まだ入院しなくてもいい患者に4泊5日で入院してもらい、病院に登録。1度は自宅や施設に帰ってもらうが、何かあったら受け入れを約束する。また自宅や施設に帰っている間の医療的なサポートも自院の医師が出向いて行っているという。

2018年は約200人が退院したが、そのうちの130人が死亡退院。70人が退院、再入院を繰り返しているという。

患者は、地域の拠点病院などから「最後まで面倒を見てくれる病院がある」と聞いて、来院することが多い。「最後まで面倒を見るが、途中で帰ってもらうこともある」と伝えるが、自分が最後まで見ますというひと言で患者が皆、納得して自宅に戻ってくれるという。


とことん寄り添えば長期入院も

そこで大事になるのが、患者のACPを確認する中で、患者の持っているバックグランドをすべて聞くことだという。家族の存在、その家族はどのくらい患者に関われるのか。その中で自宅には帰せないと判断すれば、長期入院も辞さない。

実際、2018年に300日の入院を余儀なくされた患者が1人いた。とことん患者に寄り添っていけば、長期入院もあり得る。しかしその他急性期の部分で頑張れば、在院日数などはクリアできるというのが実感だ。

体験入院について、パネリストが発言。日本の医療は、個人の努力によって支えられている部分が大きいと指摘した。個人の努力をどうシステム化するかが大きな問題で、自分をまかせられる医師がいるから自宅に帰ろうといえるようになることが大事だとした。


次期診療報酬改定を危惧

また別の参加者からは、「30日で区切るのは病院側の都合だ」との発言があった。当該参加者の地元で行ったアンケート調査では、やはり30日で帰ってもらうということを伝えるという病院が多かった。

しかし、「自分は政策の問題でそれを行うのはおかしいと思う」。そのため症状が落ち着いて、いま緩和ケア病棟にいなければやっていけないという状況を脱したら、次の人のためにいったん譲ってくださいと伝えているという。

また自宅に戻すときにも患者家族の意向を踏まえなければならない。家族が無理だとなれば、療養型の施設を探さなければならないが、すぐに入院というわけにはいかない。結局30日の退院は守れなくなり、施設要件2で入院料1を算定している状況だという。2020年の診療報酬改定でどのようになるのか危惧しているともいう。

その他、地域のリソースをどう展開するかにも議論がおよび、地域緩和ケアシステムの構築への理想が語られた。

(医療タイムス)

 

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