「誰もが地域で暮らせる」共生社会の実現をめざす
社会福祉法人翔の会 特別養護老人ホームゆるり(神奈川県茅ケ崎市)
2019-07-19
社会福祉法人翔の会が運営する法人初の高齢者介護施設の特別養護老人ホームゆるりでは、それまでの障害者事業で培ってきた高い介護技術と、本人中心の視点を尊重する介護の考えを活かしている。さらに、児童発達支援センターや保育園がある複合支援施設にある特養として、障害者や子ども、高齢者など誰もが安心して暮らせる「共生社会」の実現をめざしている。


障害者支援事業から参入「本人中心」の介護を提供

社会福祉法人翔の会は、神奈川県茅ケ崎市内の障害者やその家族らの集まりである「むつみ会」を前身に、20年以上にわたり地域の障害者を支えてきた。「障害があっても地域のなかで暮らしたい」という思いに応えるため、「誰もが地域で暮らせること」を理念に掲げ、その対象をやがて障害者だけではなく高齢者や児童へと拡大。現在は「共生社会」の実現に向けて、障害者支援施設や障害者福祉サービス、放課後等デイサービス、保育園、特別養護老人ホームなどを運営している。

特別養護老人ホームゆるり(定員100人)は、こうした「共生社会」の実現への第一歩である複合支援施設ちがさきA・UNのサービスの一つとして、2012年7月に開設された。地域に特養や保育園が不足していたことから、同一建物内には児童発達支援センターとともに保育園もあり、多様な関係性が生まれることをめざしている。

「法人として初めての高齢者入所施設ですが、障害者支援事業の利用者には重度の身体障害者も多くいますから、これまで培ってきた介助のスキルを活かすことができました。長年障害者支援を行ってきた私たちにとって、介護は『支援』であって、『サービス提供』という感覚はありません。あくまで生活の場を支援する視点を大切にしています」と、ちがさきA・UN施設長の松永徹さんは力をこめて言う。

全室個室の10部屋を1つとしてつくられており、各ユニットには専用の玄関やキッチン、リビング、浴室などを配置。職員に制服はなく、ジャージやスウェットも禁止にしているのも、利用者と職員という立場の壁を薄くし、生活感を味わってもらえるようにする工夫の一つだ。

さらに、同法人が徹底しているのが「同性介助」。「障害者支援では、昔から『本人中心』という考え方を非常に重視してきました。入浴介助や着替えなどを業務として繰り返していくと、職員は利用者の性別に対する意識が麻痺しがちです。そうならないように、当施設では利用者と同性の職員の介助を優先しています」と、ゆるりの管理者の関野淳さんは説明する。


多様な人との関わりが役割や生きがいを生む

ゆるりでは利用者が、同一建物内の保育園や児童発達支援センターに通う子どもたちと近所に散歩に行ったり、建物内で互いに行き来する光景が日常的に見られる。

「たとえば、天気が悪く外で遊べないときに、『これから子どもたちを連れて行ってもいいですか』と連絡が来ることもあります。イベント時だけでなく、日常的に関わることが重要です」と、語る関野さん。

「認知症の人でも、子どもたちの前ではシャキッとします。“自分が教えるんだ”という役割や生きがいを感じているようです」と、多世代が集まる効果を指摘する。

人と人との交流は建物内だけではない。ゆるりのエントランスでは毎週金曜日の午前10時から昼ごろまで、近隣の農家の野菜などを売る青空市「あ・うんプチマルシェ」が開かれる。同施設の高齢者や子どもも店員を務め、訪れた地域の人たちと交流するきっかけにもなっている。

「プチマルシェや1階のカフェを縁側のような役割にして、地域と施設の境目をなくし、新たな地域コミュニティを構築していきたい」と、松永さんは意欲を語る。


●社会福祉法人翔の会 特別養護老人ホームゆるり
〒253-0072
神奈川県茅ケ崎市今宿473-1
TEL:0467-84-6211


(介護ビジョン 2019年5月号)

 

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