特集 遠隔地の医療で生きる5G 高精細画像が距離を越えた診療に
5G 医療・暮らしをどう変える!?
2019-06-18
2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向け、次世代移動通信システム、5Gの実用化の動きが進んでいる。果たして医療分野ではどのような利活用がされるのか。NTTドコモ5Gイノベーション推進室担当部長の奥村幸彦氏が、その最前線を語った(新社会システム総合研究所主催「シルバー&ヘルスケア戦略特別セミナー」を取材)。


東京と和歌山でのデモストレーション

5Gをどのように医療分野に生かすか。奥村氏らが現状取り組んでいる範囲でいうと「高精細な映像をリアルタイムで伝送する」「複数の映像を一括して送る」などで活用していくことが考えられている。実際に医療分野で実用化していくためには、通信装置、通信の周辺装置などとの組み合わせも大切になるという。

その上で奥村氏は、和歌山県で行った医療分野の実証実験の模様を紹介した。それは和歌山県立医科大学病院と県内山間部の診療所を光回線と5Gで接続し、複数の高精度映像の伝送による遠隔診療の高度化を実証試験するというものだ。

セミナー当日は、東京都港区のドコモ本社と和歌山県立医大病院をネットワークでつなぎ、地域の診療所に見立てたドコモ本社内の診療所と大学病院内の診察室にいる医師が4K高精細テレビ会議システムにより、リアルタイムでコミュニケーションをとりながら、4K高精細接写カメラ、エコー、CTを駆使した遠隔診療を進めるデモストレーションの模様が上映された。


「一緒に画像を見ている臨場感」

医大にいた医師は、「画質のよさは想像以上。エコー画像で見る心臓の動きも鮮明で、診断の質が上がる」との感想をよせ、診療所医師も「県立医大の先生が隣にいて、患部画像を一緒に見ているような臨場感があった」など評価は高かった。

事実、和歌山県立医大は、遠隔外来を早くから実施していたが、通信速度が遅く、画像の解像度が粗悪で非常に苦労していたという。

奥村氏が言うに山間部の診療所には光ファイバーがまだ届いていない地域が多いという。そこにリーチしていくためにもモバイル環境は有用といえる。

実証実験では、皮膚科とともに、循環器内科、整形外科、リハビリ科などの実験を行っており、映像自体を送ることで目の前に患者がいるような事実が評価されている。


救急医療の応用も総合実証試験が

また奥村氏は5Gを用いた移動診療車を紹介した。これは災害現場・無医地区での医療、職場や各種施設での健診などに対応する機器を搭載し、5Gでネットワークが結ばれた総合病院との間で遠隔診療を行うもので、広範囲でタイムリーな医療を実施することが可能となる。

デモストレーションでは、総合診療科医に妊婦健診に訪れた患者に対して、遠隔地の産婦人科医が4Kテレビ会議によるリアルコミュニケーションが行われた。

また5Gの救急医療の応用も総合実証試験が行われている。これは群馬県前橋市で前橋市、前橋市消防局、ICTまちづくり共通プラットフォーム推進機構、前橋赤十字病院の協力のもと行われたもので、救急搬送中の時間を有効活用し、適切な処置を行うまでの時間の大幅な短縮により救命率の向上を図るものだ。

実験では前橋市消防局の救急車と、ドコモの試験車両を架装したドクターカーにはそれぞれ屋根上に5G移動局を搭載。救急車からは、医師を乗せたドクターカーと合流するドッキングポイントに向かうまでの道中、ベッドサイドモニタや俯瞰・接写カメラ映像などをパッキングした4K映像を、5Gを介してドクターカーおよび受入予定の救急病院と共有した。参加した医師からは、「救急車の中の状況を克明に外部に発信できるようになることは意義が大きい」など高い評価を得たという。

5Gは2019年9月にプレサービスが実施され、2020年春には商用サービスが開始する。都市部から地方まで、必要とされる場所に適切な機能と周波数帯で展開されるなど、限られた分野よりも地域の活性化などに貢献できる可能性を秘めている。

(医療タイムス)

 

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