特集 「老健」が地域医療・介護を変える!?(前編)
老健の現状
2019-03-13
介護老人保健施設が、「中間施設」としての位置づけを強めている。同時に、介護療養病床の廃止に伴い介護医療院が創設され、老健のあり方が問われる時代となった。地域包括ケアシステムのなかで老健をどのように位置づけ、どう活用していけばいいのか。それ次第で地域の医療・介護を変えていく可能性を秘めている。


■概論
在宅復帰、在宅支援という老健機能の充実は必須

退院後の在宅復帰を支えるため介護老人保健施設を併設する病院は多い。2018年度介護報酬改定では在宅支援機能を果たすための新たな評価体系が導入された。老健の役割を振り返りつつ改定のポイントを紹介する。


高い類型の施設ほど在宅支援に注力

介護老人保健施設は重介護を必要とする高齢者に対し、医療と福祉サービスが一体的に提供されることが必要という考えのもとでつくられた。社会保障制度審議会での議論では「医療機関と特別養護老人ホームを統合し、それぞれの長所を持ち寄った施設」という位置づけだった。

創設時から病院と自宅の中間施設として、▽家庭・社会復帰のためのリハビリテーション、生活訓練の実施、▽家庭ではケアできない要介護者に対し、医学的な管理と看護を中心としたサービスの提供―が挙げられていた。だがその運営は施設によって開きがあり、いわば“特養化”している施設も見受けられる。そういった背景から2012年度介護報酬改定では「在宅強化型」の類型が新設され、在宅復帰機能が強化された。また2017年には介護保険法が一部改正され在宅復帰に加えて在宅支援機能が老健の定義として明確に示された。これにより老健の役割は、▽在宅復帰、在宅療養支援のための地域拠点となる施設、▽リハビリテーションを提供する機能維持・改善の役割を担う施設―となった。

厚生労働省が2015年度に実施した調査では、老健の退所後の目標を「自宅」としたのは「在宅強化型」57%、「加算型」43%、「従来型」20%で、算定要件の厳しい類型ほど退所後の在宅生活を目標に設定したケアに取り組んでいた。

2016年度には退所後の状況確認についての調査を行っており、状況確認をしているのは「在宅強化型」89%、「加算型」88%、「従来型」27%だった。先の調査と同様に厳しい要件をクリアしている施設ほど退所後を見据えた在宅支援を行っていることがわかる。

このような流れを受けて2018年度改定では在宅支援機能を評価するための新たな指標が設けられた。


老健での医療提供を評価する加算が新設

2018年度改定で注目すべきは報酬区分の類型が3段階から5段階に変更されたことだ( 図)。旧類型では半数の老健が「従来型」であり、上の区分をめざすにはハードルが高かった。在宅復帰率を上げようと取り組んだ結果、空床が増えて経営が厳しくなり、在宅復帰に取り組まないほうが収益上プラスになるといった状況だった。

そこで老健全体の底上げを図るという意味合いからステップアップしやすいように類型を5段階に細分化。旧類型の「従来型」「加算型」の中間に「基本型」を設けた。さらに上の評価として「超強化型」を新設した。

類型を決める要件として様々な要件が設定されているのが大きな特徴だ(表)。在宅復帰、在宅支援機能の評価に10項目で90点満点となる「在宅復帰・在宅療養支援等指標」が導入された。


在宅復帰率、ベッド回転率といった結果だけでなく、入所退所前後の訪問指導といったプロセスを含めた評価体系となっている。また、在宅支援を強化、評価するという観点から通所リハビリ、訪問リハビリの実施や在宅サービスに関する指標が含まれている。

老健と医療機関との連携、老健での医療サービスの実施についても新たな加算がつけられた。老健の医師と入所者のかかりつけ医が連携し処方方針を決めたうえで減薬する取り組みとして、「かかりつけ医連携薬剤調整加算」(125単位/日)が新設された。従来からの「所定疾患施設療養費」についても2段階に分け、老健で行うことができない専門的な検査が必要な場合の医療機関との連携を評価する点数の高いII(475単位/日)が新設された。

福祉医療機構が実施した「2018年度介護報酬改定に関するアンケート調査」で、最も多かったのは「基本型」で37.3%。以下、「加算型」33.1%、「超強化型」10.1%、「その他」8.3%、「在宅強化型」7.7%の順となっている。

多くの施設では従来の類型と同等か上位の類型に移行していた。「在宅復帰・在宅療養支援等指標」のなかで、基準値の達成が困難とされた項目は在宅復帰率、ベッド回転率の順に多かった。


■解説
2018年度改定後の老健運営在宅サービスで利用者拡大入所につなげる流れをつくる

2018年度介護報酬改定では介護老人保健施設の類型が再編され新たな要件も加わった。改定を受けたうえで老健をどのように運営していけばいいのか。小濱介護経営事務所の小濱道博代表に老健の改定ポイントと運営の留意点を聞いた。

2018年度介護報酬改定では在宅復帰率に加えて在宅復帰の指標として新たにいくつかの項目を設け、ポイント制とすることで従来の「在宅強化型」の上に「超強化型」を設けています。改定前の在宅復帰・在宅療養支援機能を有する事業所が標準となり、報酬は4区分に分けられた形です。

最大の特徴は特別養護老人ホーム化した長期滞在型の老健を切り捨てるという方向性が明確になったこと。従来の区分Iから区分IVに移され「特別介護保健施設サービス費」となりました。区分IVは加算の多くが算定できず、新設の加算についてはすべて算定できません。

改定前、老健全体のうち半分以上は長期滞在型である一番基準の低い「従来型」であった。従来型は新類型の「基本型」まで上げなければ運営が厳しく、一方、「在宅強化型」を取得していたところは「超強化型」を狙うことになる。それぞれ目標がワンランク上ったということである。

従来型は「その他」の位置づけとなっていて算定基準がない。これは、「その他」は老健ではないということを意味する。2018年度改定では老健の基本報酬自体は現状維持だったが、前述のように加算がとれないということは収入を伸ばせないということである。その認識がない施設も多い。在宅強化型を算定していたところは超強化型をめざし取得していて、老健は二極化しているといえる。

「その他」は3年後、または6年後の改定で廃止になると予想している。従来型が老健の半数を占めていたことから、今回の改定でいきなり切り捨てることはできなかったが、経過措置を受けたと捉えるべきであろう。

老健はもともと、病院と自宅との中間施設という位置づけ。自宅に直接戻れないときに集中してリハビリを行ったうえで帰すのが役割である。今回の改定で老健が在宅復帰施設から除外されたことで病院からの患者の受け入れが厳しくなり、空床が目立つという指摘があるようだがそのようなことはない。病院は平均在院日数の制限があり、機能回復が十分でない場合は老健に移すか、在宅でデイケアを使うかしかない。老健で空床が目立つのは、長期滞在ができなくなった他の施設との競合といった別の要因があるのではないかと考察する。

老健のビジネスモデルはデイケアと訪問リハビリの在宅サービスで利用者を拡大し裾野を広げること。そこからショートステイの利用者をつくり、入所につなげていくという流れをつくらなければベッドが回らない。訪問も通所も地域密着型グループホームもサービスとして提供していく面を広げていくことが重要。従来型は早期に基本形の算定を行い在宅復帰を進めていくべきである。


(後編)につづく

 

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