患者一人ひとりの思いを尊重 初診から看取りまでを担う
富岡地域医療企業団 公立富岡総合病院(群馬県富岡市)
2019-02-15
公立富岡総合病院は二次医療圏で唯一の急性期病院として最新の医療機器を整備し、地域がん診療連携拠点病院としてがん治療を行う。一方で、地域包括ケア病棟や緩和ケア病棟を整備し、緩和ケアから派生した「シルバーケア」という新たな概念を発案。患者の思いを尊重した、患者中心の医療に取り組む。


がん診療と並行し質の高い緩和ケアを提供

富岡市のほか甘楽町、下仁田町、南牧村で構成される富岡保健医療圏の中核病院として急性期医療を担う公立富岡総合病院。リニアックによる放射線治療やPET-CTを導入し、地域の二次救急医療、周産期・小児医療に対応している。

2018年4月に地方公営企業法の一部適用から全部適用に移行。富岡地域医療企業団として新たなスタートを切った。同じ企業団で運営する回復期、慢性期を担う公立七日市病院と連携しながら地域医療を支える。

経営形態の変更に合わせ、運営の基本方針についても見直しを図り、(1)一人ひとりの人権と尊厳を尊重し、質の高い医療提供に努めます、(2)地域医療の中核として、関係機関との連携を図り、地元のニーズに応えます、(3)富岡地域医療企業団として、高い公共性と倫理性に基づいた事業運営に努めます、(4)全職員が、生きがい、やりがいを感じられる職場作りに努めます、(5)企業団として、地域医療構想に対応します-とした。

企業団企業長を兼務する佐藤尚文病院長は、「職員がやりがいを感じて働くことが大切だと考えています。多くの地域住民の命を預かるのは大変なこと、しかし疲弊してしまっているならば自分たちの提供する医療の意味や意義を見失っているのではないかという問いかけが必要。そういった思いを込め、職員には繰り返し伝えています」と話す。

理念には、「患者中心の医療」を掲げる。一人ひとりの患者がその人らしく生きられるよう、思いを尊重しながら支援することが、病院が果たすべき役割との考えからだ。「初診から看取りまで、全部をみるというのが当院の特徴かもしれません。私自身、それが一番いいと思っています。病院は機能分化が求められていますが、がん治療一つをとっても手術、抗がん剤、緩和ケアと細切れになってしまうのは本来、患者さんが望んでいることではないのではないでしょうか」(佐藤病院長)
2007年に地域がん診療連携拠点病院の認定を受け、早期発見と手術、放射線、化学療法を行うのと並行し、緩和ケアへの取り組みも始めた。2005年に緩和ケア病棟を開設。がんと診断された段階で、院内で患者登録を行って共有し、医師や緩和ケア認定看護師、薬剤師、MSW、臨床心理士による「緩和ケアチーム」で対応。治療とともに患者の心身の痛みや不安を取り除くかかわりをもつ。在宅での看取りも、同院の医師による訪問診療、訪問看護ステーションと協力しながら行っている。緩和ケア病棟の平均在院日数は開設時から約14日で、全国平均の40日よりかなり短い。患者のほとんどが予定入院ではなく緊急入院であり、自宅や介護施設などで療養する患者が必要に応じて十分な緩和ケアを受けられる体制が確立している。


ACPの考えを組み入れた「シルバーケア」を実践

緩和ケアを進めていくうちに、「非がんの患者さんにも同様の取り組みが必要ではないか」との考えから新たにつくったのが「シルバーケア(SC)」だ。「医療を上手に使い、いい最期を迎えられるかが大事。緩和ケアのなかで行われていたACP(アドバンス・ケア・プランニング)も、その取り組みに含まれています」と佐藤病院長は説明する。

シルバーケアを「一人ひとりの異なる加齢に伴う変化や、その人の生活や人生・価値観を最大限配慮した医療/ケアのこと」と定義づけた。緩和ケアと同様に、シルバーケアを実践するためのコンサルテーションチームを立ち上げ、多職種によるカンファレンス、患者の思いを汲み取り、つなぐといった取り組みを行っている。

入院時は2016年に開設した地域包括ケア病棟を活用。平均在院日数は約11日だ。2015年度には厚生労働省「人生の最終段階における医療体制整備事業」のモデル事業に参加。非がん患者の終末期における適切な相談体制のあり方を検討した。事業後は、相談員を養成する研修を開催するなど、地域全体でシルバーケアに取り組む体制づくりを行っている。

佐藤病院長は、「病気になったときに地域住民が困らないような適切な医療提供を行っていきます。そのためにも地域のなかでコンセンサスを得ること、患者さんにも理解してもらわなければなりません。地域の他医療機関、行政とも連携しながら進めていきたい」と語る。



●富岡地域医療企業団 公立富岡総合病院
所在地:群馬県富岡市富岡2073番地1
電話:0274-63-2111
外来患者数:1万4177人⁄月
入院患者数:8,140人⁄月
平均在院日数:11.8日
病床稼働率:82.2%
緊急搬送受入件数:227件⁄月
(2018年9月実績)

(フェーズ3 2018年12月)

 

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