特集 今日から始める病院の働き方改革(前編)
「制度」「業務」「意識」の3つを変える!
2019-01-08
社会的課題となっている働き方改革だが、医療界でも医師を中心に議論が進められている。時間外労働の削減、外来・救急の縮小などに踏み切った病院がすでに出てきており、すべての病院において、医療提供体制の見直しは必至だ。急速な改革は医療の崩壊につながるといった懸念する声も上がるなかで、どのような道筋をつけ、取り組んでいけばいいか。国の議論と併せて、病院がすべき対応策を挙げる。


医療における「働き方改革」とは

国全体において、ワークシェアリングや労働生産性の向上、「量から質」への転換といった「働き方改革」が進められている。医療機関においても例外ではなく、「働き方改革」は待ったなしの状況だ。なぜ今働き方改革なのかを紐解くとともに、医療機関に関連する法制化や医療界全体の動きを捉えておこう。


時間外労働の上限規制の猶予以外の除外規定はなし

医療現場では過重労働や長時間勤務が恒常化し、「患者のために」「医療水準の向上のために」といった崇高な理念によって支えられてきた。だが、医療を取り巻く環境は急速に変化しており、精神論や昔ながらの慣習で対応するのには限界がきている。労働生産性の向上、柔軟な働き方、医療者および国民の意識改革など、新たな医療のあり方が問われているのだ。

医師の時間外労働については、政府が2017年3月に公表した「働き方改革実行計画」のなかで、「時間外労働規制の対象とするが、医師法に基づく応召義務等の特殊性を踏まえた対応が必要である」「医療界の参加の下で検討の場を設け、質の高い新たな医療と医療現場の新たな働き方の実現をめざし、2年後を目処に規制の具体的なあり方、労働時間の短縮策などについて検討し、結論を得る」と方針が打ち出された。

それを受ける形で、厚生労働省は「医師の働き方に関する検討会」を2018年8月に設け、検討を進めている。検討会では2018年2月に「中間的な論点整理」「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取り組み」をまとめた。

2018年6月19日には働き方改革関連法が成立し、医療機関において対応すべき項目が挙げられた(表1)。医師の時間外労働の上限規制に5年間の猶予期間が設けられたほか、除外規定はない。



「緊急的な取り組み」など労働環境改善に遅れ

医療における働き方改革については時間外労働の上限規制、医師法に基づく応召義務等が論点として挙がっており、今年末から来年始めにかけての取りまとめに向けて議論が進められている。
7月9日開催の同検討会では、「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取り組み」の実施状況が報告された。院内での検討や具体的な取り組みを実施したのは大学病院で30.3%、大学病院以外で26.8%。法定労働時間を超えて労働させる場合に必要な「36協定」を締結していなかった病院もあるなど、医療現場での労働環境改善の取り組みの遅れが浮き彫りとなった。厚労省は改善に向けた支援ツールを用意しているが(表2)、医療現場への普及には至っていないのが現状だ。


そのような中、各地の医療機関が次々と労働基準監督署の立ち入り調査を受け、医療界に激震をもたらした。医師の残業時間の長さを指摘され、過去に遡って院内に滞在した全時間分の時間外手当の支給、36協定の遵守などの是正勧告を受け、時間外勤務の改善や当直勤務の体制変更といった医師の働き方の変更にとどまらず、診療縮小や時間外の病状説明の取りやめといった医療提供体制にも影響をおよぼしている。

労基署の介入の有無にかかわらず、労働環境の改善には早急に取り組まなければならない。次章では、国の議論の方向性と具体策を紹介していく。


(後編)につづく
(フェーズ3 2018年11月号)

 

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