特集 『かかりつけ病院』待望論(2)
中小病院の出番はここだ!
2018-11-20
「かかりつけ」患者を把握するには多職種協働が必須

‐「かかりつけ医」というと、日常的に医師自身が常時目を光らせて患者の変化を見逃さないというイメージがあります。

現実的に、それは難しいでしょう。たとえば当院の在宅患者は常時60人、外来患者は一日平均80人、入院患者も30床がほぼ満床状態です。これらすべての患者さんについて、生活情報まで含めて医師一人ひとりが頭の中に入れ、その変化を逐一把握するのはさすがに不可能です。そこでカギを握るのが、ケアマネジャーや地域包括支援センター、そして地域の各介護事業所等の方々です。当院も、そのような多職種連携には力を入れています。例えば、「この患者さんのご家庭の様子はどう?」と投げかけると、担当のケアマネジャーが「先生、家族構成はお二人だけで、奥様も軽度認知症がありケアするのが大変なので、今のまま帰しては危険です」と教えてくれます。先日も、ケアマネジャーが利用者さんのお宅を訪ねたら、少し様子がおかしかったので当院に連絡を入れご家族とともに外来受診された、ということがありました。

‐そこまで介護事業者の力を引き出すために、どのような工夫をされていますか。「異変に気づくための10ポイント」を用意するとか・・・。

福祉系の専門職ではあっても、当然ながら医療に精通しているとは限りませんから、その人の技量によっても求めるものは異なりますし、そもそもマニュアル通りにはいかないものです。「何でもいいから、気になることがあったらすぐに連絡ください」と伝えることもあれば、一定程度の医療的マインドを持ち合わせていて信頼関係が成り立っている方であれば、その人にある程度の判断を任せて必要と感じたら病院に連れてきてもらうなり、連絡があれば緊急往診で対応することもあります。先ほどご紹介したケアマネジャーは、後者に入ります。

ただ、福祉職の方々がどこまで見きわめられるかは、普段からコミュニケーションをとっておかなければこちらもわかりませんから、会って話すことを重視しています。ケアマネジャーが主治医意見書を求めてくるときは、必ずケアプランを持参してもらい、面談するようにしています。ケアプランの更新のための会議の際も、よほどのことがないかぎり出席します。

また当院にはケアマネジャーが常勤で9人おりますが、この人たちが作ったケアプラン内容は定期的に会議を持ちチェックしています。こうして当院の医師や私が、どのような点に留意しているのかを理解してもらうのです。


200床未満の病院は外来患者をどんどん診よう

‐地域の方々と医療の接点として「外来」が挙げられますが、「病院は入院機能に特化すべき」という政策的な流れもあります。この兼ね合いはどう考えればいいでしょうか。

誤解されがちですが、厚生労働省は地域包括ケアシステムを支えるべき中小病院に対してまでも入院機能に特化してほしいというメッセージは出していません。それどころか、199床以下の病院に対してはむしろ、かかりつけ機能の強化を後押しする診療報酬を設定しています。これまでも、外来地域包括診療料は200床未満で算定可能ですし、2018年度の改定でも在宅療養支援病院は初診料に「機能強化加算」(80点)を算定できるようになったのはその象徴です。私は200床未満の中で専門特化した病院以外の病院は、周辺の診療所等医療機関の状況にもよりますが、むしろ地域の外来患者さんをどんどん診るべきだと思います。

ただし、地域医療構想の中の将来推計にも示されているように、今後ほとんどの地域では外来患者数自体も減っていくことを忘れてはいけません。人口が減り、高齢化が進めば、通院する患者が減るのは自明です。外来機能のみで収益を上げるという考えではなく、外来は「かかりつけ病院」として備えるべき機能の一つとして認識すべきでしょう。

だからこそ、ここに「訪問診療機能」も揃えれば盤石なのです。ただこれは、地域の医療体制とのバランスを見据えたうえで体制をつくれば十分なわけで、何も自前ですべて揃える必要はないのです。在宅療養支援診療所や往診に熱心な診療所の先生が多くいる地域なら、無理に自ら訪問診療を広げる必要はありません。むしろそうした先生方の手の届きにくい機能を担うほうが地域への貢献度は高くなります。たとえば、土日や夜間帯の往診、あるいは人工呼吸器、中心静脈栄養(IVH)といった在宅で高度医療機器が必要な患者さんの訪問診療に限定するといった具合です。他にもがん末期の患者さん、小児在宅医療など、一般的なかかりつけ医の在宅医療ではカバーしきれないケースも徐々に増えつつあります。

ここで再確認しておきたいのは、やはり在宅においても専門領域にこだわって及び腰になってはいけないということです。在宅の小児患者でも、小児専門医以外でもできることはたくさんあります。たとえば「予防注射」。定期的な診察だけならともかく、種類の多い乳幼児の予防注射を受けるために人工呼吸器を付けたお子さんを、毎回専門病院へ連れて行くご家族の苦労は大変なものです。代わりに医師のほうから訪問して予防接種をすることだけでも、かなりの負担軽減になるのです。


高度急性期・専門病院との連携は「患者本位」への理解がポイント

‐「かかりつけ」の大事な機能として、高度急性期病院や専門病院へつなぐという役割があります。これについてはどう考えていますか。

私は、基本的には患者さんのご希望に沿う形で各病院へつなぎますが、それがない場合は「医師同士」の個人的な関係が深い医師へ依頼するようにしています。

患者さんを送った後、先方でどういう医療を行い、どのような状態で戻してくれるか、というのがとても大事だからです。時にはアドバンス・ケア・プランニング(ACP)も踏まえて地域で治療している場合もあるので、それも含めた治療内容に関する要望も伝えますが、そのことをきちんと認識してもらう必要があるのです。高度急性期病院はややもすると「治療一本やり」になりがちなので、そうした面も踏まえた治療を理解していただく必要があります。

これは逆に先方から当方を見る際も同じで、「○○町の△△先生はどういう技量を持っていて、ここまでなら診てくれる」と判断して患者さんを引き継ぐことになります。だからこそ、医師同士のコミュニケーションと信頼関係が大事なのです。

‐病院同士の連携はいかがですか。

これは、地域連携室がどれだけ病院のなかで機能するかがポイントになります。自院の得手・不得手はわかっていますし。これは私見ですが、どうも院内で連携室の位置づけが高い病院はアクティブですし、逆にそうでないと院内連携がスムースではなく、結局紹介患者は減るのではないでしょうか。思ったようにつながらず、思ったように帰ってこないのですから。言うまでもなく、同じことは自院でも問われます。

‐ありがとうございました。

(3)へつづく

 

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