特集 『かかりつけ病院』待望論(1)
中小病院の出番はここだ!
2018-11-19
病院の機能分化が進み、地域包括ケアシステム時代を迎えつつある今、中小病院が生き残るには、地域に根ざす以外に方法はない。そこから導きだされるのは「かかりつけ病院」というあり方だ。また、地域にとっても安定的な医療、安心を確保するという点からも、「かかりつけ病院」の存在は不可欠と言える。そこで今回は、地域住民の「かかりつけ」機能を備えながら、病院ならではの特徴を生かしている病院の事例を踏まえつつ、中小病院の今後のあり方を考える。

200床未満の病院が今、岐路に立たされている。高度医療を追求するには事業規模が小さすぎ、医療機能を絞り込むにはベッドをはじめ、償却の済んでいない設備がある‐。ところが、そんな中小病院にこそ、求められる役割がある。地域の「かかりつけ病院」だ。

まちの診療所の医師が担う役割として「かかりつけ医」がある。日本医師会では「健康に関することを何でも相談でき、必要なときは専門の医療機関を紹介してくれる身近にいて頼りになる医師のこと」と定義している。

一昔前の開業医を彷彿とさせ、今でも地域の要役として活躍する医師は多いが、一方で医師に求められる役割はより多岐にわたり、高度化している。だからこそ多職種連携が注目されているのだが、病院にはそうした「チーム」があらかじめそろっている。しかも、家では面倒を見きれない、不安だ‐といった際に「それなら一晩、様子を見ましょう」と言える入院機能まで備えている。

病院こそ、「かかりつけ」の役割を担うべきなのだ。


【提言】
「かかりつけ病院」の条件
地域の人たちが「あの病院に行けば」と思える医療・介護・福祉を提供しよう

池端幸彦・医療法人池慶会池端病院理事長・院長は、外来・入院機能だけでなく、在宅医療などを担う人員体制も備えることができる点で、中小病院は総合的なかかりつけ機能を果たすのに有利なポジションにあると強調する。


医療、介護、福祉をワンストップで提供する

‐池端病院は「かかりつけ病院」を掲げています。地域のなかで具体的にどのような役割を果たそうとしているのでしょうか。

日本医師会では「かかりつけ医」について、「健康に関することを何でも相談でき、必要な時は専門の医療機関を紹介してくれる身近にいて頼りになる医師のこと」と定義していますが、当院で実践している医療はまさにこれです。病気に関して、何か困ったことが起きたら、まず声をかけていただく。いろいろ検討し、当院での治療やケアが可能ならそれを提供し、専門性の高い医療が必要なら、高度急性期病院や専門病院に紹介する‐というものです。

最近は地域包括ケアシステムの中で医療だけでなく、介護や保健、福祉も含めて一体的に提供することも、中小病院には求められています。つまり患者さんに「あの病院に行けば、どんな状態であろうがとにかく何とか対応してくれる」と思ってもらい、地域包括ケアが描く中学校区エリアで気軽に声をかけていただけるような、いわゆる「ワンストップ」で医療・介護・福祉を提供する病院をめざしています。
つまり、地域包括ケアシステムのなかで必要な医療を、介護・福祉等との連携の中で一体的に提供できる病院が「かかりつけ病院」と定義できるでしょう。


多くの専門医を揃えるだけではかかりつけ病院にはなれない

‐そのためにはどのような体制を構築し、医療を提供すべきでしょうか。また医師には、どのような姿勢が求められるのでしょうか。

「専門外の肺炎は診られない」「人工呼吸器をつけた患者さんはちょっと無理」といった選り好みをしていては、かかりつけ病院としての機能は果たせないでしょう。医師も同じで、私は「スキルも大事だが、ハートがより大事」と考えています。地域医療に対するモチベーションや考え方が重要で、どんな患者さんでも逃げずに、まずは自分(自院)でできる範囲で診てあげようという姿勢が不可欠です。当院の場合も医師と面談する際に最も重視するのはそこです。極端なことを言えば、そういうハートを持っているなら、スキルはむしろ後からついてくるとさえ思っています。逆に、そうした心構えがなければ、どれほど専門的スキルが高くても務まらないでしょう。

つまり、大規模病院とは根本的に発想が異なるのです。では多くの診療科の専門医を揃えなければいけないのかというと、そんなことはありません。逆に各専門医を10人集めたら「かかりつけ病院」になるかというと、そうではないのです。専門家は自分の専門分野以外のことになると他人に丸投げしがちです。こうなると、かかりつけの機能を果たせません。自分の領域は持ちつつ、専門外領域についても積極的にかかわり、総合的判断の上で自分(自院)では手に負えない判断すれば速やかに専門医につなぐという姿勢が重要なのです。


エコー、CTまで備えれば、かかりつけ病院としては盤石

‐設備面はいかがですか。

病院の中心となる医師の専門領域が、たとえば循環器科なら心筋梗塞等を診るための心エコーや心カテを始めとした設備、消化器外科だったら手術室も備える‐といったことになるでしょう。そうした中心の領域は二次救急医療のレベルまで設備を整え、あとは少なくとも一次救急医療を担える設備までを揃えるのが一般的ではないかと思います。最低限の血液検査ができ、レントゲン、心電計、胃カメラを備え、エコー、CTまで揃えられれば「かかりつけ病院」としては、まず万全と言えるでしょう。

言うまでもありませんが、入院機能をフル活用することも大事です。私自身の経験で言うと、在宅から入院に至った患者さんのうち、7~8割は慢性期病院で十分治療できます。緊急手術やICU管理が必要という患者さんはそれほど多くありませんし、救急隊もそのあたりは心得ていますから、そのような患者の多くは最初から二次・三次救急医療機関に搬送するようになっているはずです。脳梗塞でも軽いものであれば十分対応できるし、脳出血でも程度次第では、経過観察でいい場合もたくさんある。集中治療室での治療が必要となるような重篤な場合は送らなければいけませんけれど、そうでないなら「とりあえず1~2週間、入院して様子を見ましょう」と言える入院機能を備えていることが重要なのです。在宅療養を続けている患者さんの中には、短期間点滴治療に毎日通ってもらうことだけでも相当に困難というケースも多くあります。このようなケース等で、一時的な訪問診療・看護での対応だけでなく、場合によっては短期入院加療での対応等も選択していただけるのが、かかりつけ病院の強みではないでしょうか。

(2)へつづく

 

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