特集 「新専門医制度」時代の医師の集め方・働かせ方(前編)
新専門医制度で何が変わる?
2018-10-29
この4月から、新たな専門医制度の基本領域研修がスタートした。東京一極集中が進んでいるともされるなか、病院経営にとっての最重要課題である医師の人材確保にも大きな影響が及ぶのでは、と危惧する向きもある。新専門医制度の下で、いかに優秀な医師人材を確保し、長く働いてもらうか。経営者目線で、そのための方法論を考える。


【概論】
養成プログラム、期間変更で地域、診療科偏在が生じる

新専門医制度がスタートして約半年。新たな研修プログラムによる専攻医の養成はどうなっているのか。制度の変革による病院への影響について、現場の声を取り上げながら紹介する。


複数の病院での研修 統一性や質の担保が課題

新専門医制度の創設を振り返ると、卒後研修において系統的な専門研修の仕組みがなかったこと、各学会が独自の方針で専門医制度を運用していたため、領域間の統一性、専門性の質が一定でなかったことが、その背景にある。

専門研修の標準的な仕組みをつくろうという動きを受けて、2013年厚生労働省「専門医の在り方に関する検討会」の最終報告書が公表されたのを受けて、第三者機関として設立されたのが日本専門医機構だ。

専門医の認定は、基本的な診療科からなる基本領域(19領域)の研修を受けたのちに、日本専門医機構や各学会から認定されれば、「基本領域内科専門医」などを広告できる。さらに細分化した29のサブスペシャルティ領域の研修を受けることで、「循環器専門医」などとなる。

従来の専門医の育成は、各学会が研修カリキュラムを作成し、到達目標を設定。それを達成した段階で専門医試験の受験資格が認められるという流れだった。専門医の取得までは何年かかってもよい仕組みで、これが新制度における「カリキュラム制」となる。

もう1つの「プログラム制」は新制度で新たにつくられたもので、年次ごとに研修プログラムを定め、3~5年程度かけて基本領域の専門医を養成する。プログラムのなかで基幹施設と連携施設による研修施設群をつくることで、専攻医が地域の病院にローテートし、地域医療を支えつつ、医師を育成していく形だ。

内科や外科など、基本領域においてはプログラム制での養成を原則とし、サブスペシャルティ領域ではカリキュラム制も可となっている。

プログラム制において、研修は基本的に複数の病院で行うこととなる。連携施設での研修は短期でのローテートとなることから、基幹施設の研修プログラムとの統一性や研修の質をどう担保するかが問われている。

また、研修プログラムの作成、専門医の認定は各学会に任されており、「第三者機関としてのチェック機能が果たされていない」「専門医としての質を誰がどのように評価するのか」といった疑問視する声もある。

領域によって専門医の取得に難易度の差が生じたことから、比較的専門医が取りやすい領域に専攻医が流れたのも事実。ある病院トップは、「内科系、外科系のプログラム参加者が少なく、ハードルの低いほうへと流れている。将来的には、診療科の偏在による医師不足が生じるのではないか」と指摘する。


基幹、連携施設以外の若手医師確保は困難に

新専門医制度では当初、2017年度から専攻医の研修を開始する予定だったが、1年間延期して2018年からのスタートとなった。その最大の理由が、大都市中心・大病院中心の制度で医師偏在を招くというものだ。

専攻医の研修プログラムでは、指導医1人に対して専攻医3人までとなっている。指導医の確保は大都市の大病院が有利であることから、多くの専攻医がそういった病院に集中してしまうのは容易に想像できる。「地域医療に必要な施設で、指導医を置くことができない場合は指導医が不在であっても関連施設として例外的に認める」という規定が設けられてはいるものの、該当する施設はどれほどあるだろうか。

診療を行う医師は原則として、いずれかの基本領域の専門研修を受けることが基本とされていることから、研修を行う基幹施設、連携施設とならなければ、若い医師の確保はかなり難しくなったと言える。

一方で、日本専門医機構の専門医を必ず取得する必要はなく、日本病院会、全日本病院協会がそれぞれ、プライマリ・ケアを担う医師を養成する制度を始めたところだ。今後、新専門医制度とは別に、専門医の養成やスキルアップを図る研修制度をつくる動きが出てくるかもしれない。


幅広い病院での研修実施のメリットも

新制度について言われているメリット、デメリットは表の通り。メリットとしては、「個々の学会が認定していた専門医のレベルが統一できた」「プログラム制によって幅広い病院で研修が受けられるようになった」などといった指摘が挙げられる。

デメリットとしては、前述した医師偏在を憂慮する意見が多く、地方都市の病院トップからは首都圏、都市部への人材流出を懸念する声が複数聞かれた。また、多様なキャリアパスに対する配慮不足により地域医療を担う人材をどう育成、確保するかといった課題もある。


(後編)へつづく

 

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