特集 医療とAI・ICT(下)
医療現場の新しい形
2018-09-20
【パネルディスカッション】
医療系企業は挑戦的に協力してくれる その高い熱量に応えていきたい
モデレーター:上前田直樹氏(グローバル・ブレイン株式会社 Partner in charge of AI & Cyber Security)

シンポジウムの後半は、会場参加者から寄せられた質問に登壇者が1つひとつ答えていった。そこでは現在のAI・ICTと医療の接点が見え隠れした。

‐医療現場は今後どう変わっていくのだろうか。

高木 いろいろな考えはあるが、まずゲノムとか抗体なども含めてAIなどに、まとまっていくのではと思う。

河野 私たちの商品の最初の顧客は製薬業界だったが、他業界と比べても数字が好きな業界だと感じている。現在ではエビデンスというセンシティブなところで、私たちの技術が貢献できるのではないかと考えている。コミュニケーションの先端を築いていくことが今後の使命だ。

伊東 コミュニケーションは定性データなので捉え難いところもあるが、エビデンスとして数値化していくことが大切だ。

また医療という括りでいけば、バイタルとか体重とか分かり易い数字も出てくるので、その部分も当然加味されていくだろう。


‐AI用機器の開発には企業規模が必要か。大学発のベンチャーのポテンシャルをどう考えるか。

高木 作るということと得るということは、違うプレーヤーが存在するので、これはコラボレーションするしかないと思う。大学やベンチャーで始めても、どこかで行き詰まると思う。その部分を僕らが排除できたらいい。


‐AI用のデータを効率的に集めるためにはどうするか。

高木 正直いうと効率的には集められない(笑)。それは仕方がないことで、苦労しながらデータを集めるという覚悟がないとこの事業はできないと思う。

河野 事業がまわっていないとデータは集まらない。やりたいことがあり、そのための質の高いデータを集めることは大命題なのだが、そのためだけに出資を募ることはできない。事業として成立しなければならないのだ。私たちは、サービスを購入・利用してもらい、その上でデータも集まるという事業にようやく行きついたというところだ。

伊藤 メディカルケアステーションは、SNSの1つなのでデータは相当集まる。テラバイト規模で集まるので、それが今後のAIの足掛かりになることは間違いないと思っている。

当社のようにプラットホームを用いると、実際に現場で利用してもらいながら、生のデータが集まることとなる。


‐事業の拡大によるリソース不足はあるのか。

伊東 それが人材不足というのであれば、その通りだ。私たちは専門的な、例えば、がんが詳しいかといえば知らないし、その点はプロと組んでやっていくことだと思う。社会にいるさまざまなプレーヤーとは一緒にやっていきたいと思っている。

河野 事業を広げたいのに広げられないのが現実。選択と集中が余儀なくされ、例えば音声解析はやらないと決めているし、身振り手振りなどの非言語コミュニケーションは自力だけでやるのは厳しいと思っている。得意分野に注力して、それがニッチであってもいつか花開くと思っている。


‐AI用医療機器などで、皆が気にしているのはどういうところか。

河野 現在の、AIブームが始まるところからさまざま変わってきた。当初は全く理解されなかった。一般的なAIというのはビッグデータを使って、D-プランニングして…なのに、なんでおたくはAIなのともいわれた。今では、データを集めることは大事だねなど、風向きが随分変わってきた。

そこで何が残っていくのかといえば、長期的な視点で取り組んでいるところが勝っていくのかなと思っている。

高木 気になっているところはグーグル。グーグルは医療に結構本気を出しているなと感じている。米軍病院から退役軍人70万人のデータを集めてAIを作り始めているとの話もあり、彼らが物量で何かをしてきたら市場は全部食われるのではと思っている。


‐医療機関とともに働くことがあるだろうが、その際気を付けていることはあるか。

伊東 医療現場側の当事者意識を持つということだ。医療IT企業だからといって斜に構えるのではなく、自分から医療の現場に足を向ける。そこがポイントだと思っている。

河野 医療系企業は挑戦的にさまざま協力してくれる企業が多い。その意味では追い風で一緒にやっていきたいと思うのだが、逆に熱量が高くて、私たちが応え切れていないところも結構ある。今後市場を切り開いていく上で、その熱量の高さからみて必ず新しい市場を作っていけると思うし、他の業界にも影響を与えていけると思う。

高木 医療業界は、このぐらいのことはできているだろうなということができていない場合も多いので、きちんとインタビューをしていくことが大事だと感じている。


‐医療現場でAI、ITの普及はどの程度だと感じているか。

伊東 画像解析は比較的スムーズにいくと思うが、例えば人間の99.9%の精度とAIの99.9%の精度、つまり0.1%の誤差は違うだろう。AIの0.1%はよりシビアに受け取られると思う。

河野 普及という意味では、意外と進まないと実感している。ただ実際に使ってみようというエッジの立った人は多いのではないか。

高木 一番のネックは社会の受け入れ態勢がどのくらいなのか。法律の問題や個人の勘定の問題などもあるだろう。最終的には医師の判断になるだろうが、事故があったときにはどうなるのか、患者の信頼性はどうなのかという部分が払拭されないとなかなか広まらないかもしれない。

(取材:田川丈二郎 / 医療タイムス No.2365)

 

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