[特集] 介護医療院への転換、施設種別と転換方法の視点から検証を
2018-07-09
 
2018年度介護報酬改定の目玉となった、「介護医療院」。基本報酬や【移行定着支援加算】の新設など報酬面での優遇に加え、診療報酬上では「住まい」として扱い、在宅復帰率の計算式や自宅からの受け入れ患者数に含めることが認められるなど、介護・医療療養病床からの転換を後押しする環境が整えられた。ただし、実際の転換に際しては、介護・医療療養病床、介護療養型老人保健施設(療養型老健)のどの施設種別からの転換なのか、さらには全床転換か、病床の一部転換であるのかで、事前に検討すべき課題が異なるという。介護事業所専門のコンサルタントである、
日本経営の大日方光明氏に詳しい話を聞いた。

介護療養病床、医療療養病床、療養型老健のうち、介護医療院への転換が比較的スムーズに運ぶのは、すでに「医療から介護への橋」を渡った経験のある療養型老健でしょう。逆に、介護の橋をこれから渡らなければならない医療療養病床は、設備、人員、収入のいずれの面からも乗り越えるべきハードルがあるように思います。以下、施設別に課題を整理していくことにしましょう。
 
◆療養型老健は看護配置、介護療養病床は患者基準が転換時の課題に

介護医療院にはI型、II型の類型がありますが、I型は介護療養病床の療養機能強化型A、II型は療養型老健に相当する基準の設計となっています。この点においては、それぞれに相当する基準を満たしていれば、移行については比較的スムーズに行くものと考えられます。
既存の施設のうち、療養型老健については、介護療養病床、医療療養病床よりも比較的、II型への移行がしやすいように思います。入居者もほぼ現行のままで問題ないと考えられます。診療所を併設している施設であれば、処置室やエックス線装置といった医療設備の基準も満たせるでしょう。
ただし、介護療養病床から転換した老健であっても、療養型老健ではなく、通常型の老健として運営している施設では少し事情が異なり、看護配置基準等がネックになる可能性があります。介護療養病床からの転換時に、通常型老健の職員配置基準の「看護・介護合計で3対1、うち7分の2程度は看護職員」に適合するように、配置の見直しを行っている可能性があるからです。そのため、「6対1」の看護配置を満たせない施設があることも想定され、その場合は看護職員の新規採用、ないしはダウンサイジングも検討しなければなりません。
 
療養型老健の次に転換を検討しやすいのは、介護療養病床のように思います。ただし、療養機能強化型A相当のI型医療院への転換を目指す場合は、患者の状態に関する基準が障壁になる可能性があります。例えば、I型で最も評価の高い「サービス費(I)」の算定には、「入所者に占める重篤な身体疾患を有する者および身体合併症を有する認知症高齢者の割合が50%以上」、「入所者に占める喀痰吸引、経管栄養またはインスリン注射が実施された者の割合が50%以上」といった要件があり、苦慮する施設も少なくないと思います。
I型への転換を計画されている施設は、自院の患者構成や今後の見通しについて、事前に十分シミュレーションを重ねることをお勧めします。集患方法自体を抜本的に変更することに加え、場合によってはダウンサイジングなどを検討する必要があるかもしれません。
 
医療療養病床は、最初にご説明したように3施設の中で最も検討内容が多岐にわたり、意思決定が難しいタイプのように思います。I型医療院への移行という点に注目して考えると、介護療養病床よりも医療的ケアの必要性が高い患者の多い、医療療養病床のほうが移行しやすいと言えるかもしれません。
その半面、「介護の橋」を渡ったことがない故の難しさがあるのも事実です。生活の場あるいは療養の場としての介護施設と、治療の場としての医療機関では、現場の従事者の感覚が少し違いますから、入居者とのコミュニケーションの取り方や、レクリエーションのあり方、医療資源の投入量や処置内容、保険点数の処理といった点で、戸惑うことも多いのではないかと思われます。
 
◆全床転換か一部転換とするのかも大きなポイントに
 
さて、ここまでは3つの施設種別に着目してポイントを整理してきましたが、もう1つ、転換を検討する際の大きな軸になるのが、全床転換する介護医療院単独型とするのか、それとも一部病床だけを転換して医療保険適用病床との併設型とするのか、という点です。順に説明していくことにしましょう。
 
転換に向けたシミュレーションの際に、経営陣が頭を悩ませる点の1 つが、恐らく医師や看護師、薬剤師といった医療スタッフの配置の問題だと思います。
その点、医療の病床を残す併設型は、一般病棟や地域包括ケア病棟に医療スタッフを配置転換することで、場合によっては、より高い報酬区分の届出も可能になるので、全床転換よりもスムーズな移行が期待できます。なかでも、「地域包括ケア病棟」は、2018年度診療報酬改定で、在宅復帰率と在宅からの受け入れ患者数の計算式に、介護医療院からの入棟患者を含めていいことになりましたから、組み合わせとしては非常に相性がいい病棟だと言えるでしょう。
 
問題は、全床転換する介護医療院単独型のほうです。例えば、介護療養病床からII型の介護医療院に転換する場合、医師の配置はそれまで3人であったのが、100対1でもよくなり、配置の再検討を迫られることになります。病院から介護施設への転換を図る上で、人員配置もそれに合わせてあり方を変えていかなければなりません。外来や在宅医療の機能を拡充して、介護医療院は後方支援病床として活用するモデルとするのも1つの方法です。
 
これらの点を総合的に勘案すると、単独型に移行する場合は、「病院ではなくなる」前提で、どこまで医療機能を残すのか、介護医療院の配置基準を超えるスタッフを訪問看護や、その他の居宅介護サービスなどにも関わってもらうようにするのか、あるいは思い切ってスリム化するのか。転換に先立って、将来に向けたビジョンをしっかりと固めておく必要があるでしょう。
 
介護医療院の現在の報酬体系からすると、経営的には看取りまで対応したほうが好ましいのですが、今回、【在宅復帰支援機能加算】が残された点を考慮すると、厚生労働省は一部の入所者が在宅復帰することを想定しているように見えます。ですから、「訪問看護や訪問診療、あるいはデイケアといった地域とつながる機能は、単独型に移行する場合でも、拡充しておくほうが望ましい」、というのが介護医療院への転換をお考えの皆さんへの私からのアドバイスです。

 
□ 株式会社日本経営 大日方 光明(おびなたみつあき)氏
介護福祉コンサルティング部/ソリューション事業部 課長。日本経営入社後、病院経営コンサルティング部に配属。在宅診療所、介護施設への出向を経て、現在は主に医療機関の介護事業展開や社会福祉法人の経営改善コンサルティングを専門とする。地方医師会、看護協会等各種関連団体での講演、厚生労働省・業界団体の政策調査業務等も担当。
 
 
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