「大手調剤薬局チェーン=悪玉」論に物申す!
2018-07-20
大手チェーンを直撃した「40万件超」ルール

筆者は今年5月末から6月にかけて、某専門誌で日本の売上規模トップ10に入る大手調剤薬局チェーンを何社か取材する機会を得ました。今回の調剤報酬改定は周知のように、大手調剤薬局グループに大きな「逆風」をもたらしましたが、最もダメージを受けたのは、やはり調剤基本料が再編され、企業グループ全体の処方せん受付回数「40万件超ルール」が追加されたことです。前回2016年調剤報酬改定では、グループ全体の処方せんが「4万回超から40万回以下」に属する薬局で、「特定の医療機関等の処方せん集中率が95%超(今改定から85%超に見直し)」または「特定の医療機関との間で不動産の賃貸取引のある」薬局は調剤基本料3しか算定出来ず、調剤基本料が半分以下に減額されました。更に追い打ちをかけるように、今改定から40万件以上の薬局グループに属する薬局へ、新たな減額措置が導入されたのです。

同一グループに属する薬局からの処方せん応需・調剤割合の高いことから、調剤基本料2・3算定に留まっていても、「かかりつけ薬剤師指導料を月100回以上、算定している薬局」に対しては調剤基本料1の算定が可能でしたが、追い打ちをかけるように今改定からは、その取り扱いも廃止。大手チェーンの運営する薬局の多くは、「かかりつけ薬剤師・薬局」の取り組みを推進していたとしても、調剤基本料1の算定が困難になりました。今改定で、大手チェーン薬局には「二重の圧」が課せられたことになります。つまり、店舗数が多く全国展開する大手チェーンには、個々の「薬局の質」に関わらず、物理的に報酬がマイナスになる仕組みが導入されたわけです。大手チェーンでは、最上位ランクの調剤基本料1からの撤退を余儀なくされる薬局の増加が危惧されますが、基準調剤加算が廃止され、新設された「地域支援体制加算(以下、同加算に略)」(35点)においても、大手薬局チェーンに対し厚生労働省が意図的に“梯子”を設けているような内容も見られます。

同加算は「かかりつけ薬剤師が機能を発揮し、地域包括ケアシステムの中で地域医療に貢献する」薬局として、1年間で常勤薬剤師1人当たりの「地域医療に貢献する体制を示す8つの実績要件」が明示されています。

「夜間・休日等の対応実績400回」、「かかりつけ薬剤師指導料の実績40回」等を含めた8つの実績要件を全てクリアするのは大変です。しかし、届出が実現すれば、地域医療への貢献度が高く、患者や医療機関から「選ばれる薬局」として認知されるのは、言うまでもありません。

ところが、調剤基本料1の届出薬局に対しては、8つの実績要件から免除され、麻薬小売業者の免許取得や、在宅患者薬剤管理の実績、かかりつけ薬剤師指導料の届出を行っているだけで、同加算の算定が可能だと言うのです。

「かかりつけ薬剤師指導料等の実績40回以上」を実際に算定することと、「かかりつけ薬剤師指導料等に係る届出をする」ことの条件の落差は、現場の地域薬剤師の皆様は言うまでもなくお分かりでしょう。


「薬剤師の質」では病院や中小規模薬局を凌駕する大手薬局チェーン

同加算の当該要件の違いについては、筆者が取材した大手チェーンの関係者から「不公平だ!制度として整合性が取れない」との意見を数多く聞くことになりました。

以前にもこの欄で書きましたが、国の大手チェーンに対する“狙い撃ち”は、厚生労働省よりも国家予算のサイフを握る財務省の意思が強く働いているのです。2017年に発表された財務省の「社会保障について」という報告書では、大手調剤薬局チェーンの成長が、いかにも“医療費膨張の温床”であるかのような記述があり、昨夏に発覚した幾つかの大手チェーンによる処方せん「付け替え」請求について、当該企業の実名入りで言及されています。それを受けて、幾つかのメディアでは大手調剤薬局チェーンは全て、不正を行っているかのような誤った報道がなされています。実際、筆者には官庁絡みの印象操作のようにも受け取れたのです。大手・中小規模を問わず、調剤薬局個々の「質」には差がありますし、コンプライアンスへの取り組みに関しても千差万別です。

ただ筆者が多くの調剤薬局を取材し、現場を見てきた経験から言うと、薬剤師に対する体系的な教育体制や管理職のマネジメント能力、高度な薬局オペレーションや薬剤師のコミュニケーション技術、服薬指導・調剤技術のいずれをとっても、大手調剤薬局グループが中小規模薬局や病院を凌駕していることは間違いありません。

実際に喫緊の課題である「かかりつけ薬剤師」育成に関して中小薬局の多くは、まだまだ大手に遅れを取っているのが現実ではないでしょうか。「働き方改革」の視点からも、労働環境の改善・整備にいち早く着手し、薬剤師の雇用面からも優位に立ってきたのは一部の大手薬局チェーンであり、リーディング・カンパニーとして調剤薬局業界全体をけん引してきたのは間違いありません。

もちろん、全ての大手チェーンの経営が健全に行なわれているとは言いませんが、大手調剤薬局グループの業態を、一律にネガティブに捉えることはバイアスのかかった誤った見方であると考えます。

(医療ジャーナリスト:冨井 淑夫)

 

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