診療報酬改定検証 ~地域包括ケア病棟(1)
最上位ランクの入院料1は重点評価も、届け出を出来るのは「200床未満」病院に限定
2018-07-12
療養型及び軽度急性期から地域包括ケアへの転換が加速?

「当院は地域包括ケア病棟単体で見ると地域包括ケア病棟入院料1が届出可能なので、大幅増収と言えるが、今回の改定から在宅復帰先として、介護老人保健施設と療養病棟が“在宅扱い”から除外されたのは、正直に言って厳しい。私たちは、同じ法人で介護老人保健施設を運営し、地域包括ケア病棟から退院後の患者を転棟して在宅復帰率70%以上を何とか死守してきたので、退院先を新たに確保するのは大変だ!」と語るのは、地方都市に在るケアミックス型・165床の医療法人S病院・事務長のB氏。同院では、現在、一般病棟45床、地域包括ケア病棟80床、回復期リハ病棟40床で運営しているが、1年前までは一般病棟55床、地域包括ケア病棟30床、回復期リハ病棟40床、医療療養病棟40床の病床区分だった。施設リニューアルと病棟再編により、医療療養病床を全て廃止。一般病床10床分も地域包括ケア病床に移行し、地域包括ケア病棟を80床に増床した。

「今改定で新設された地域包括ケア病棟入院料1(2,738点)は従来の同入院料1から180点のアップとなり、更に新設再編された“在宅患者支援病床初期加算”(300点)を算定すると、報酬単価は1日3万円を超える。この他、地域包括ケア病棟“入院医療管理料”は出来高算定可能な項目が少なくないので、最上位ランクの1を届出出来れば、かなりの増収になる医療機関が多いのではないだろうか。包括・出来高のいずれを選択するのかは、各病院にとって一つの大きな戦略になるだろう」と当該事務長は語っている。

弾力的な病床運営が可能なことや、報酬アップで経営的メリットの大きさから、S病院のように療養病棟を廃止して地域包括ケア病棟への転換や、従来の「10対1」病棟から地域包括ケア病棟に転換しようとの動きは、全国各地域で顕在化しつつあるようだ。

今改定における「地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料」(以下、同入院料に略)の内容を検証していきたい。


「1日でも長く在宅で過ごす」ことに最大のインセンティブを!

中医協は今改定で、「地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化、強化・連携の推進」を一つのキーワードとして提示している。これが示すのは「高齢者等の地域住民が医療や介護を必要とする状態になっても、1日でも長く地域で暮らせるような仕組みを作る」とのメッセージだ。同入院料に係る改正点をつぶさに検証すると、この「1日でも長く」というコンセプトを色濃く反映した内容になっている。

これまで2段階で設定されていた同入院料は、4段階に再編された(図表1)。前述したように、最大のトピックは最上位ランクの同入院料1が設定されたこと。繰り返しになるが2,738点と180点の大幅アップ。現行の入院料1に該当するのが、同じ2,558点の設定となる同入院料2になるから、同じ名称とは言え、同入院料1は同入院料3と共に新設項目と言って良いだろう。現行の同入院料2に該当するのが最下位ランクの同入院料4。但し、従来の同入院料2よりも20点低い2,038点の点数設定であり、同入院料4しか算定出来ない地域包括ケア病棟は現状維持のままだと報酬単価はマイナスとなる。要するに、同入院料1~4まで顕著な傾斜配分の導入されているのが特徴と言える。


(図表1)
中央社会保険医療協議会 総会(第389回)「個別改定項目について参考資料」より一部抜粋、修正

そして、同入院料1及び3に関しては「200床未満の病院」でなければ算定出来ない。但し、厚生労働省が規定する医療資源の顕著に少ない地方の病院に対しては、「240床未満の病院」との要件緩和がある。これに関しては、地域包括ケア病棟を運営する「200床以上病院」から多くの疑義が呈されるようになっている。

ある210床のケアミックス型病院院長は「当院は同一法人の他の病院も併せて、幾度かに亘る病棟再編を実行してきたが、最終的に地域包括ケア病棟を86床にまで拡大した。ただ、200床を超えると同入院料1が届出出来ないのは、全くの想定外だった。今後は200床未満にダウンサイジングすることも含めて、当院の病棟再編を再検討しなければならないだろう」と不満げだ。

全国各地域を見渡すと、各々の地域事情で200床~300床クラスの民間病院がケアミックスを選択。急性期医療を担うと同時に、訪問診療・訪問看護、施設介護・訪問介護も含めた地域包括ケアを担う役割との両方の機能を兼ね備えた医療機関も少なくない。厚生労働省が機能分化の観点から、軽度急性期や在宅復帰後の医療、在宅支援等の役割を「200床未満病院」に求めたい意思は伝わってくるが、そう簡単には割り切れない地域医療の現状もあることは指摘しておきたい。


同入院料1・3に実績評価導入、2・4とは別建ての制度設計に

さて、最初の話に戻ると同入院料3は2,238点で、同入院料1と2の次のランクに位置するが、今改定の重要なポイントとなるのが、同入院料1と3に関してのみ、初めて基本部分の評価に加えて、「地域包括ケアに関する実績」評価が導入されたことだ。

まず、同入院料1~4まで全てに係る「基本部分」とは(1)看護職員配置(13対1以上)(2)重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度に略)(看護必要度I・10%以上〔従来の評価方法を用いた場合〕または看護必要度II・8%以上〔診療実績データを用いた場合〕)(3)在宅復帰に係る職員の配置(在宅復帰支援を担当する者を適切に配置)(4)リハビリテーションに係る職員の配置(常勤のPT、OT、STを1名以上の配置)‐の4点。


(図表2)
中央社会保険医療協議会 総会(第389回)「個別改定項目について参考資料」より

同入院料1と3だけに課せられる実績(アウトカム)要件は、(1)自宅等からの入棟患者割合(10%以上〔10床未満は1人以上〕)(2)自宅等からの緊急患者の受け入れ(3カ月で3人以上)(3)在宅医療等の提供(4)地域医療機関等との連携(5)介護サービスの提供(6)看取りに関する指針の策定‐になるが、最高位ランクの同入院料1が「在宅復帰率70%以上」、「病室面積6.4m2以上」を要求されるのに対し、同入院料3はこれら2つの要件が課せられないので、同入院料1と比較するとハードルはかなり低い。これらの点から、地域包括ケア病棟はアウトカム評価が求められる同入院料1・3と、それのない同入院料2・4は制度設計としては大きく二分類であり、各々の上位・下位の2ランクで報酬設定が行なわれたと考えられる。

そして、同入院料1~4の重症度、医療・看護必要度の該当患者割合の判定に関して、「従来の評価方法」と「診療実績データを用いた場合」の2つの方法についての記述がある。これは、今改定から急性期病棟と同様に、地域包括ケア病棟においても現行の測定方法(I)に加えて診療実績データを用いた(II)の方式が使われるようになり、将来的には(II)の方式へと収斂されることになりそうだ。(II)はレセプト・コンピュータに入っている既存のデータから看護必要度を抽出するやり方で、判定方法が簡素化されることにより、病棟での看護必要度の判定業務を行う看護職員らの作業量が軽減される。ただ、現行の(I)のやり方と比べて、(II)は5%位低く出てしまうことが多いので、その誤差を補うために(I)よりも低く設定されている。

地域包括ケア病棟の場合は、急性期病棟で使われる看護必要度の基準を満たす患者を(I)の場合は「10%以上」、(II)を用いた場合は「8%以上」入院させる病棟であることが条件となる。(次回に続く)

(医療ジャーナリスト:冨井 淑夫)

 

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