特集 人生100年時代の未病ライフと健康リテラシー(中)
日本健康生活推進協会設立2周年記念シンポジウム
2018-07-10
【講演2】
2025年問題を解決する健幸都市という概念

後期高齢者数が前期高齢者数を上回る

筑波大学教授の久野譜也氏は、健康リテラシーと未病について語った。

毎月総務省が人口統計を発表しているが、これまでは65~74歳の前期高齢者の数が、75歳以上の高齢者の数を上回っていたが、2018年に入ってその数が逆転した。

久野氏によれば、「これは2025年問題の扉が開いてしまったということ。それに対応する社会を一刻も早く作らなければならず、そのためにも健康リテラシーの向上が必要となる」と指摘する。

例えば介護分野では、前期高齢者の要介護認定は4%だが、これが後期高齢者になると33%と30ポイントも上がってしまう。後期高齢者の絶対数も増えており、日本全体として大変な社会課題になっていくことは間違いない。今後どう対応していくかが重要だ。

久野氏は、問題解決のために健幸都市という概念を10年ほど前に打ち出した。「都市、つまり街に住むことによって自然に健康になる。そういう街を日本全国で作るべき」と久野氏は強調する。あえて幸の字を使っているのは、心身の健康が目的ではなく、生きがいをもって100歳まで自分の人生を楽しんでいく、健やかに長生きができるという考え方によるものだという。

2009年にWHOが「グローバルヘルスリスク」というレポートを初めて出した。そこで死因ワースト20を発表しているが、久野氏はワースト5を紹介した。それによると1位高血圧、2位たばこ、3位高血糖、4位運動不足、5位が肥満という結果だった。これまでのエビデンスで、運動不足を解消すると高血圧、高血糖、肥満へのよい効果があることは分かっている。

一方で、75歳以上の人口増加とともに認知症への対応が非常に大切となる。認知症は、複合的な要因で発症するといわれているが、その一定の要因と見られているのが、糖尿病、高血圧などの生活習慣病だというエビデンスがでてきている。

つまり死因や認知症への対応では運動不足の解消が有益であり、高齢社会の進行の中で、「町そのものを健康となるよう変えていこうという世界的潮流があることを理解してほしい」という。


健康無関心層の壁を破る健康アンバサダー

リテラシーは、「知識」と訳されるが、久野氏はそれを否定。「知識と意欲」と訳されるべきと主張する。単に健康の知識を得るだけはなく、変革や継続をする意欲があってこそリテラシーが高いとされるのだ。

久野氏のグループが健康リテラシーに興味を持ったのは、約5,000人の地域住民に対して行った調査からだったという。結果的には厚生労働省が行っている健康栄養調査と同じような数値となったが、「身体活動が充足している」と考えている住民は3割、一方で「身体活動が満ちていない、不足している」と考えている住民は7割いるということが分かった。ただショックだったのは、「充足していない」と答えた7割に、「今後運動をする意志があるか」聞いてみたところ、7割は「やる意志がない」と答えた。さらに「やる意志がない」7割は、さまざまな「健康情報」も入手する意志がしてないことが分かった。「今後やる意志がある」といった3割は、集団として見ていくと情報を入手している(図参照)。これまで公衆衛生系の学会では、「国民は健康や運動が必要なことを分かっている。分かっているができないところをどう変えていくか」という論点で議論をしてきた。しかし、結果として健康無関心層は情報を入手していないから、行動に変わりようがないということが分かった。つまり、健康リテラシーが低いから行動が変わらないのだ。自治体が健康情報を住民に届けるのは広報誌・紙が多く、無関心層は読まない。久野氏も多くの講演を行うが、そこには無関心層は来場しないのである。

この7割の壁をどう乗り越えていくか。そのための健康リテラシーを上げていく方法を考えていかなければならないという。

そこで久野氏は、無関心層に情報を届けるため2年前から健康アンバサダーの養成を始めた。これは意志決定に影響を与える人(インフルエンサー)であり、コミュニティー単位に全国で200万人程度養成していきたいと考えている。現在企業、学会、自治体の産学官が一緒になり、情報を届けるシステムを作ろうとしている。

(下)へつづく

 

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