特集 人生100年時代の未病ライフと健康リテラシー(上)
日本健康生活推進協会設立2周年記念シンポジウム
2018-07-09
高齢社会が進む中、人生100年時代といわれるようになった。今後、健康と病気の間を連続的に変化する生活=未病ライフと、それを支える健康リテラシーの向上が求められる。一般社団法人日本健康生活推進協会は5月24日、設立2周年記念シンポジウムを開催。未病ライフの周知と健康リテラシーの在り方について議論した。


【講演1】
未病の改善策の基本となる「食」「運動」「社会参加」

健康リテラシーを上げる日本健康マスター検定

一般社団法人日本健康生活推進協会は、「健康づくりや疾病予防に関する必要な知識、ノウハウを身につける機会を広く提供」「国民全体の健康リテラシーを高め、健康人材づくりに貢献する」などを理念に2016年に設立された。

大谷泰夫理事長は、基調報告の冒頭に「わが国の健康リテラシーを高める1つの手段として検定試験を実施した」として、同会が行う日本健康マスター検定について紹介した。同検定は、全般的な健康を体系別にカバーする健康リテラシーを測る検定だ。合格者は健康マスター(ベーシック/エキスパートの2種類)として協会から認められ、名刺や履歴書にも記載することができる(4年間有効)。

大谷氏は、同検定について「医師会、企業に協力をいただきながら、2年が経った。受験者数も着実に増え、2018年3月の検定では1万人を超える受験者数となった」と胸を張った。

同検定は、人生100年時代を迎えるにあたり、健康リテラシーを高めるためのものだが、それがどこから出てきたのか。大谷氏は「未病という考え方からきている」とした。

未病とは、人間の健康状態を健康か、病気かの二分論でとらえるのではなく、健康と病気の間で連続的に変化するものとしてとらえ、このすべての変化の過程を表す概念を指す(右図参照)。

大谷氏は、「人間はある日突然病気になるのではなく、長年の生活習慣や遺伝的体質による変化などを経て、症状が少しずつ顕在化してくる。これは生活全体にかかわってくることだが、未病は生き方の変革につながる新しい考え方といえる」と指摘する。


1人ひとりが未病について考え自らの行動に反映・変容

未病を考える場合、なぜ健康に気をつけるのかという問題に行きつく。ちまたでは「医療費が今後、膨大な金額になるためその削減を図るため」や、「健康寿命の延伸を目指す必要性がある」などといわれるが、それでは国民1人ひとりの日々の行動に変化を生まない。

大谷氏は、そのような大仰なことではなく、「孫の成長を見守りたい」「80歳まで山登りをしたい」、さらには「もっと魅力的でいたい」「1日でも長く社会で活躍したい」という、個人の身近な目標こそが、行動変容を生み出すと強調する。

つまり未病が目指すこととは、1人ひとりが未病について考え、自らの行動に反映し、変容させていくことにほかならないのだ。

現在未病の周知は進み、例えば2017年2月に閣議決定された「健康・医療戦略」の中でも未病の考え方が導入されている。今後、未病という考え方がヘルスケア産業の創出という政策にかかわることが考えられている。大谷氏によれば、その市場は「将来的には10兆円規模になる」と見込まれているが、1,000兆円超ともみられる高齢者の資産を活用し市場化できれば、相応な経済効果が期待できると指摘する。

その上で未病の改善策の基本となるのは「食」「運動」「社会参加」だという。

ここでいう「食」とは毎日の食生活を見直し、健康的な食生活に改善することをいう。決して高齢者だけではなく、子どもの時期からジャンクフードを手にしないという視点も必要だという。「運動」は、日常生活にスポーツや運動を取り入れることだ。運動不足が続くと、骨や関節、筋肉などの運動器の衰えが原因で日常生活に支障をきたすロコモティブシンドロームのリスクが高くなり、それを引き金に寝たきりになる場合も珍しくない。また「社会参加」も未病の改善のための、非常に重要な要素になる。地域でのボランティア活動や趣味、習い事を通じて、社会とのつながりを持つ高齢者のほうが、生活の自立度が高いことが実証されているという。

その上で大谷氏は、未病改善のための商品やサービスを提供する側、利用する側双方に健康リテラシーの向上が求められると語った。


自分だけではなく周囲も健康であること

日本医師会副会長で日本健康生活推進協会理事の今村聡氏は、「現在、人生100年時代に向けて、国をあげて健康寿命の延伸に取り組んでいる」と紹介。現在、平均寿命は男女とも世界でトップクラスであることはよく知られているが、健康寿命は男性で8歳、女性で12歳ほど短い。健康寿命の定義の中には、自分の申告によるものもあり、自分が不健康と考える場合には低くでてしまう。それを少しでも平均寿命に近づけようとしているのが国の施策だとした。

日本では、さまざまな形で健康診断が行われており、1人ひとりが自身の体の変化を知り得る機会がある。しかし受診率が低いことが問題だという。特定保健指導もようやく50%の受診率を超えた程度なのだ。 日本医師会としてはかかりつけ医制度も推進しているが、実際にはかかりつけ医もおらず、健診も受診しない国民も多い。

つまり、せっかくさまざまな健康施策を実施しても国民に参加してもらえないのが実態だ。健康検定に期待するところは、健康リテラシーを上げ、適切な健康習慣を持ってほしいということであり、それを家族、地域に広げていければなおよいという。

人生100年時代を迎え、自分だけではなく周囲も健康であること、さらには社会参加ができる人生を歩んでいくことが大事だろう。「そのために健康リテラシーの向上を目指していきたい」と述べた。

(中)へつづく

 

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