特集 進む訪日外国人の医療受入れ(3)
地域の病院に期待が集まる
2018-07-05
外国人患者の受入れ対応を推進 5力国語対応問診票など専用ツールを公開
~厚生労働省の取り組み

厚生労働省からは、医政局総務課医療国際展開推進室室長補佐の永松聡一郎氏が「外国人患者の受入れ体制に関する厚生労働省の取り組み」を講演した。

まず現状の分析で、訪日外国人の医療ニーズには、観光客に多い救急診療と健康診断や先進治療の医療目的の訪日があると紹介。この中で医療目的の訪日は経済産業省の「国内医療機関による外国人患者受入の促進に関する調査」(2014年)によると年間約7,000人程度だ。まだ人数は少なく、「来日前に予約しての受診なのでスムーズな対応ができる」(永松氏)。

ところが観光客の救急診療は、いつどこの医療機関を受診するか分からない。また訪日外国人数が増えてきたことで、想定外のケースも出てきている。

「予期せず出産となったケースや、脳内出血で死亡された方のご遺体を搬送するとき、ご遺体のエンバーミングや火葬について医療機関が対応したケースもある」

政府は医療機関における外国人患者受け入れについて次のように整理している。(1)がもっとも高規格で、受診頻度も高いと想定。(1)から(3)については、2020年度までに100カ所を整備する予定であったが、すでに前倒しで目標を達成している。(4)については観光庁が「訪日外国人旅行者受入医療機関」として発表しているものだ。受診頻度の低い医療機関であれば、受診対応できる医療機関への紹介ができるように準備しておけばいいだろう。

(1)JMIP認証病院
・包括的な受け入れ態勢
・医療通訳の配置
・宗教、慣習への対応
※外国人患者受け入れ医療機関認証制度

(2)通訳配置病院
・医療通訳の雇用
・外国人向け医療コーディネーターの配置

(3)院内体制整備病院
・院内案内表示、問診票などの資料の多言語化
・多言語対応ツールの導入や電話通訳の利用

(4)外国語による診療が可能
・厚生労働省では受け入れ対応を進める医療機関をサポートする事業を手掛けている。

「医療通訳育成カリキュラム」を厚生労働省のホームページで公開している。これは2016年度補正予算で一般財団法人日本医療教育財団が実施した医療機関における外国人患者受入環境整備事業で作成されたものだ。医療機関内で多言語・文化への対応を進めるときの参考になる。

また外国人向けの多言語説明資料も、同じくホームページで公開している。日本語と外国語を併記してあり、問診や説明にも使い勝手がいい。言語は英語、中国語、ポルトガル語、スペイン語、韓国語の5言語に対応している。診療科別の問診票、院外処方せんの説明など、診療や医事に関わる52種類の資料を入手できる。

医療通訳や医療コーディネーターの配備については、本年度も外国人患者受入れ環境整備事業として実施される。具体的な応募などの詳細については近日公開される予定だ。


新幹線内では249件の急病人が発生 9割が救急搬送‐JR東海
~一般事業者の取り組み

外国人観光客への対応について事業者からの報告があった。

株式会社マツモトキヨシ代表取締役会長の成田一夫氏からは、ドラッグストアにおけるインバウンド需要について、「外国人客は、売り上げの約7割が医薬品と化粧品だ。いわゆる爆買いは今も続いている」

そこで同社では、外国人観光客向けの対応を早くから実施。中国で普及している「銀聯カード」を導入するなどしたことで、中国人への認知度が高まったという。また2014年から免税対応もはじまり、客数を伸ばしてきた。

「特に言語への対応が難しい」

そこで社員研修を積極的に進めている。

医薬品については、病院を受診するよりもOTC医薬品は気軽に購入できるので、ドラッグストアは外国人観光客が増えたときの医療ニーズを相当数、引き受けることができそうだ。

日本航空株式会社常務執行役員経営企画室本部長の西尾忠男氏は、地方誘客の取り組みについて報告した。国内線の割引利用制度などを整備するとともに、観光紹介から航空券や宿泊、バスなどの予約までワンストップで提供する外国人向けの専用サイトを構築してきた。

「ウェブサイトの中に医療情報も組み入れたいと考えている」

東海旅客鉄道株式会社新幹線事業本部運輸本部部長の辻村厚氏は、新幹線における急病対応を紹介した。

2017年度、新幹線の車内では249件の急病人が発生し、そのうち9割が救急搬送となっている。また2割が緊急停車しての救急搬送対応だった。この中で外国人旅客は8件と少数だったが年々増えている。症状別では意識障害が26%でもっとも多い。また年齢・性別では20歳代の女性が多く、高齢になるほど少ない傾向がある。

車内で急病人が発生すると車掌は状況を確認してから、車内放送で医師の応援を要請する。4割のケースで応援を得られている。その後、医師の意見も参考に、運行を管理している指令へ連絡。救急車の手配、降車駅への連絡、緊急停車の対応などが行われている。

航空機内での急患では航空法が適用されるため機内で救命処置が行われる。そのための救急医療品の整備も義務づけられている。一方の新幹線は国内法が適用されるため、車掌やパーサーが医療行為を行うことができない。そのため速やかに停車して医療機関に搬送する。

ちなみに新幹線の車内には、AEDが設置されており、2017年度には14件の使用があった。この件数は近年増加しているという。車内で医師の協力が得られたときに備えて、いくつかの医療用具は常備している。

駅での外国人対応は増えており、京都駅の有人窓口は日本人よりも外国人が多いという。課題は英語教育で、独自の語学研修をしているほか、ウェブ翻訳などのICT活用も積極的に行っている。

(取材 ● 安藤啓一 / 医療タイムス No.2355)

 

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