特集 進む訪日外国人の医療受入れ(1)
地域の病院に期待が集まる
2018-07-03
2019年のラグビーW杯、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催を控え、訪日外国人の数は増加の一途だ。政府目標も年間4,000万人とされている。一般社団法人訪日外国人医療支援機構は6月6日、「第3回訪日外国人の医療支援情報セミナー」を開催。観光庁と厚生労働省から現在の施策が説明され、訪日観光客に対応する事業者からはICTの活用や語学研修などの報告があった。国が訪日外国人対応の拠点となる医療機関の整備を進めているが、患者がアクセスしやすい診療所や地域の病院こそ、対応に備えることが期待されている。


訪日外国人は受診できる病院を探している 未払い問題には、旅行保険の普及促進で対応
~観光庁の取り組み

医療の多言語・文化対応を質と量の両面で充実

観光庁からは、外客受入担当参事官の原田修吾氏が「観光の現状と訪日外国人の医療受診に対する取り組み」について講演した。

講演の冒頭で訪日する外国人旅行者数について日本政府観光局の資料から2017年は2,869万人で前年比19.3%増となっており、「2018年は3,000万人以上の訪日が見込まれている。2020年に4,000万人という政府目標の達成に近づいてきた」と話した。

政府が観光立国に向けて本格的に取り組みはじめた2003年の年間訪日者数は521万人にとどまっていた。それが微増を続けて、2013年に1,000万人を突破した。その後、「ここ数年はインバウンドが増え続けている」という状況だ。それに応じて訪日外国人の医療ニーズも高まっているのだが、その対応はまだ十分とはいえない。

「大都市部で外国人の宿泊者数が多いのは当然だが、かつてよりも地方の割合は増えている」

地域別の特徴もある。「全体的には8割が東南アジアからの訪日客だ」と原田氏。九州では週末を利用して訪日する韓国からの観光客が半数近くを占めている。都市部と京都や原爆ドームのある広島は欧米からの訪日も目立つ。長野では、スノースポーツ目的で、オーストラリアからの訪日が多い。医療機関で多言語・文化への対応を進める際は、地域特性に配慮することも必要になる。

政府目標は東京オリンピック・パラリンピックの開催年である2020年に訪日外国人旅行者数を4,000万人にすることだ(右表参照)。施策目標と現実のマーケットが大きく乖離することは珍しくなく、この数値についても「野心的な目標だった」という。ただそれもここ数年の旅行者数急増で達成が現実味をおびてきている。

そして観光庁では、「都道府県と連携しながら外国語診療が可能な医療機関を充実させていく。2020年までに外国人患者の受け入れ体制が整備された医療機関を全国に整備する」(原田氏)という。

医療における多言語・文化対応を質と量の両面で充実させていきたい考えだ。一方で、訪日外国人旅行者の約3割が海外旅行保険に未加入という状況のため、受け入れ体制を整えたい医療機関には治療費の未払いが課題となっている。

そこで政府は次のような取り組みを実施していく。

●外国語診療ができる「訪日旅行者受入れ医療機関」のさらなる充実。
●2020年までに、訪日外国人が多い地域を中心に、受付対応なども含めた「訪日旅行者受入れ医療機関」を現在の5倍にあたる100カ所に整備する。
●外国語対応支援ツールの活用促進や「訪日旅行者受入れ医療機関」への誘導について、医療機関への周知を進める。
●観光庁ホームページなどで医療機関情報の提供強化
●医療通訳、キャッシュレス診療サービスなどを利用できる保険商品の加入促進。

(2)へつづく

 

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