特集 4月スタート!「介護医療院」に未来はあるか?(中)
2018-06-19
【現場の視点】
介護療養、医療療養では転換に向けた課題に差

介護療養病床の多くを介護医療院に移行する陵北病院。介護医療院への見解と、自院の転換についての考え、療養病床全体を踏まえての対応のあり方を聞いた。


介護医療院I型と病床を組み合わせた転換を検討

1968年より高齢者医療に特化した療養型病院として運営してきた陵北病院は、介護療養病床369床と東京都内でも大規模な病床数を持つ。介護医療院への移行については、一部を病床として残し、多くはI型(I)介護医療院とすることを決めた。

田中裕之院長は、「介護療養病床のすべてが療養機能強化型Aなので、条件が同じI型(I)にスライドさせる形です。介護医療院に移行するのは310床程度で、残りは病床としたいのですが、機能については診療報酬などを踏まえて決めたいと考えています」と説明する。

同院では自治体側の受付準備ができ次第、開設申請を行う考えだ。介護医療院の施設基準を満たすには改築が必要となるが、そのための補助金、助成金などを把握できていない市町村は多く、移行に向けた動きはまだ鈍い。

現行の介護療養病床の経過措置については6年間延長されたが、「6年間のうちに考えればよいという病院があると聞きますが、もっと焦って準備すべき。開設に向けて取り組むべきことはたくさんあります」と田中院長。介護療養病床、医療療養病床、介護療養型老健から介護医療院に転換した場合に算定できる移行定着支援加算(93単位/日)は、転換後1年間の加算で2021年3月末までの期限付きとなっている。「特に医療療養病床からの転換は、対象が40歳以上の要介護認定を受けた人になることなど、手続きに相当の労力と時間が必要です。介護保険財政が厳しくなる市町村に難色を示されることも考えられます」(田中院長)


看取りや在宅に対応できる医療機能が求められる施設

介護医療院の診療報酬上の取り扱いについて、村山正道事務長は、在宅復帰率の要件として他病棟(急性期一般入院料や地域包括ケア入院料等)からの移動も在宅復帰として評価の対象となることが一番大きいと評価する。さらに前項で述べた移行定着支援加算は、介護療養と医療療養等から介護医療院への転換の際に設けられたもので事業者にとってはインセンティブだが、高額介護サービス費に該当するとはいえ、利用者の負担が発生することを問題視する。

介護療養病床からの転換については「I型」「II型」「特別介護医療院」の3つの類型から、さまざまな組み合わせが可能となる。療養機能強化型A、強化型Bについては、それぞれ算定要件がI型介護医療院(I・II)とほぼ同じであり、移行はスムーズに行くことが想定されるものの、「入所者1人当たりの床面積8m2という要件が満たせない場合、25単位の減算となり、従来の報酬との収支差はゼロです」と村山事務長は指摘する。

「医療と介護に共通した今改定の目玉は、看取りに関する取り組みの評価です。介護医療院をはじめ療養病棟入院基本料、地域包括ケア病棟入院料、在宅ターミナルケア加算などの施設基準要件では、厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえ、各医療機関がガイドラインに沿った「看取りに関する指針」を策定しなければなりません。医師をはじめとした、他職種で患者情報を共有して進めなければならないことになります」

介護療養型老健相当とされるII型について、村山事務長は60床あたりの収支を、多床室の基本報酬(表)をもとにシミュレーションした。



介護配置4対1(15人)のII型(I)に対し、5対1(12人)となるII型(II)は年間350万4,000円のマイナス。II型(II)に対し、6対1(10人)のII型(III)は年間240万9,000円のマイナスとなった。「単純に収支を見ればII型(III)の類型が報酬は下がるが、人員確保の難しい施設では最もコストパフォーマンスに叶っていると見えます。仮に複数の病棟があれば、II型とI型を組み合わせるといった方法が運営しやすいかもしれません」(村山事務長)

さらに医療療養病床については介護医療院への転換として考えると、まずはII型に転換し、3カ月の実績を踏まえてI型に転換することが順当といった見解を示す。

田中院長は「医療療養病床からは要件を見る限り、直接I型への転換は相当困難であると思われます。しかしII型への転換を想定すると、医師や看護師、介護職員の配置数が急激に減少し現場が混乱するのは必至。そもそも、介護医療院は入所者の生活・暮らしを支えつつターミナルケアや在宅サービスを行う施設という位置づけであり、この機能を充実させるためには、何といっても介護職員の人員確保が鍵となってきます」と話す。

「八王子市の条例で特別養護老人ホームに対して定款の変更を義務づけた部分に、特養での入所困難となった場合の行き先として『介護医療院』を追加との記述がありました。これまでは、特養で対応できない場合は病院に搬送されていましたが、看取りを含めて急変時の対応を介護医療院も担うということ。そのため、居住系施設とはいえ相当の医療機能は必要となります」

●医療法人永寿会 陵北病院
住所:東京都八王子市西寺方町315
TEL:042-651-3231
病床数:411床(介護療養病床369床、地域包括ケア病棟42床)

(下)につづく

 

twitter

facebook

ページトップへ戻る