オンライン診療の推進に向けて
技術革新を国民が最大限に享受するために
2018-06-11
規制改革推進会議「医療・介護ワーキンググループ」は2018年5月8日、オンライン診療の推進に向けた提言を発表した。今後の超高齢社会が進行する中、最新技術を活用することで、患者が在宅のまま、オンラインで受診から服薬指導、薬の授受まで、「一気通貫の在宅医療」を享受することが可能となったことを指摘。その上で、診療報酬での評価などは「極めて限定的」との認識を示した。ここでは提言の内容を掲載する。(本文中の表記を編集部で整えています)


1.オンライン医療の推進の必要性

日本が未曾有の超高齢社会に突入する中、通院困難な患者が全国で大幅に増加しており、在宅での医療や介護のニーズが高まっている。高齢者を支える側の家族も、医療従事者も高齢化が進んでおり、居住する地域で安心して在宅医療・介護を受ける環境を作り上げることは、喫緊の課題である。

他方、目覚ましい技術革新は、医療や介護を受ける者の負担を減らし、利便性を高める大きな潜在力を持つものとなっている。すなわち、インターネットやスマートフォンの普及で、多くの者がネットワークでつながる時代になり、さらに4K・8Kの超高精細映像などの情報を、4G・5Gという高速・大量の通信システムで送受信し、集積する環境が作られつつある。集積したデータを人工知能技術(AI)の深層学習により解析できるようになれば、予防まで含めたより質の高い医療を得られるようになろう。

これらの技術を活用することで、患者が在宅のまま、オンラインで受診から服薬指導、薬の授受まで、「一気通貫の在宅医療」を享受することが可能になってきている。「一気通貫の在宅医療」ができるようになれば、患者や家族の負担が軽減するだけでなく、重症化の予防や院内での感染症予防にも効果をもつ。あわせて、医療従事者の負担軽減にも役立つことになろう。


2.制度・規制の不断の見直しの必要性

規制改革推進会議医療・介護ワーキング・グループにおいてはこれまで、国民・利用者の目線で、一気通貫のオンライン診療を実現するための課題点・阻害点などについて議論を進めてきた。これも踏まえ、厚生労働省は、2018年3月末に「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(以下、「ガイドライン」という)を策定し、公表した。

このガイドラインにおいては、昨年秋以降の当ワーキング・グループの議論において主張してきた、(1)初診におけるオンライン診療については、医師の判断により許容され得ることの明確化(2)オンライン診療を提供する際の医師の所在について、一定の条件が満たされれば、医療機関以外の場所であっても認め得ること(3)オンライン診療を受ける際の患者の所在について、患者の職場などについても認め得ること(4)オンライン診療の利用にかかる適切な例示が、具体的に書き込まれた。これらの事項が、実際のオンライン診療の現場において、具体的に活用されるよう、厚生労働省は注視するとともに、関係者に分かりやすいQ&Aを整備することなどにより、広く周知していくべきである。

しかしながら、今回のガイドラインは、オンライン診療普及に向けた第一歩としての限定的内容であり、制度開始時点における対面とオンラインの適切な組合せを模索した上で設定されたものである。

また、2018年4月の診療報酬改定ではオンライン診療についての科目が新設され、オンライン診療の重要な第一歩が踏み出された。しかし、その対象範囲は、診療報酬算定の条件として『初診から6月の間は毎月同一の医師により対面診療を行っている場合に限る』となっているなど、極めて限定的である。

以上の通り、通院が困難で不便を強いられたり、病院が近隣になく心細い思いをしている多くの高齢者に、オンライン診療による質の高い在宅医療を提供する取り組みはまだ始まったばかりである。技術的に可能になった環境を国民が最大限に享受するためには、医療に関連する制度・規制を、技術の進歩に応じて、国民・利用者の目線で柔軟に、かつ不断に見直す必要がある。

したがって、このガイドラインが、今後のオンライン診療の普及促進に向けた具体的かつ明確な指針となるように、ガイドラインの「毎年の見直し」を確実に担保して、常に最新の技術・考え方を反映させることが必要である。

さらに、オンライン診療の利点をより本格的に享受するためには、次年度のガイドラインの見直しと併せて、今回よりもさらに重要となる次回(2年後)の診療報酬改定に当該見直しなどを反映させるため、今後、以下の課題を検討することが重要である。


3.今後の課題―オンライン診療の潜在力を発揮させるために

オンライン診療は、これまでできなかった診療を可能にする。例えば、センサー、モニター技術などを活用することで、患者の病状に関するリアルタイムなデータを収集・分析することが可能となる。視覚・聴覚だけではなく、触覚・嗅覚・味覚分野のデータ収集を行う技術革新も進行中である。

こうした利点を最大限に生かし、高付加価値型の診療を発展させるために、今後、次の課題についても検討すべきである。


(1)オンライン診療を診療報酬に反映させるための基本方針と、オンライン診療に係るデータの収集ルールを策定するべきではないか

オンライン診療の成果を適確に評価し、診療報酬に反映させるべきである。オンライン診療による成果が「対面診療と同等である」と評価されるための具体的な条件を明らかにし、その条件を満たした場合は診療報酬上の扱いも同等とする、という基本方針を定めるべきである。さらに、「対面診療でできなかったことを可能にした」と評価される場合は、それに応じた診療報酬上の扱いを検討すべきである。あわせて、オンライン診療に関するデータを広く集めるためのルール策定も必要である。

また、技術進歩の速さに鑑み、オンライン診療の保険収載範囲は2年に1度の診療報酬改定を待たずに、上記によって収集されたデータを解析した結果得られたエビデンスが示され次第見直すことが望ましい。


(2)オンライン診療の特性に合わせた包括的な診療報酬の仕組みを拡大するべきではないか

時間的・空間的制約の少ないオンライン診療の促進は、病気の予防や重篤化の防止につながり、ひいては医療費全体の削減に資する可能性がある。こうした特性に適した疾患(例えば糖尿病・高血圧など)を整理し、「予防医療」として包括的な診療報酬上の仕組みを検討すべきである。

また、オンライン医療は継続的なモニタリングを可能にする点が特性の1つであり、「見守り」的活用の観点からも、包括的な診療報酬の仕組みの拡大が必要である。


(3)オンライン診療を提供する医師の所在について、一定の要件を満たせば医療機関以外でも診療報酬の対象とするべきではないか

現在の診療報酬では、「当該保険医療機関に設置された情報通信機器を用いて診察を行うこと」とされている。しかし、同種の機能と性能を持つ機器であれば場所を限定する必要はない。診療場所を保険医療機関以外に拡大することで、医療従事者の負担を軽減すべきではないか。

この点について、ガイドラインにおいては、「医師は、必ずしも医療機関においてオンライン診療を行う必要はない」とされている。このガイドラインの考え方を診療報酬に反映させるべきである。


(4)患者の合意のもとで対面とオンラインを組み合わせた療養計画が作成された場合、初診から6カ月以上の毎月対面診療を要件とする必要はないのではないか

現在の診療報酬では、初診から6カ月は毎月同一医師の対面診療を受けることが要件になっている。しかし、例えば、かかりつけ医に紹介されて遠方の専門医に受診する場合、この要件を満たすことは難しい。この要件の必要性・妥当性について、移動困難な患者の目線で柔軟に、見直すべきである。


(5)一定の条件を満たせば、初診におけるオンライン診療も診療報酬の対象とするべきではないか

ガイドラインでは、初診におけるオンライン診療も、一定の条件を満たせば、医師の判断により「許容され得る」とされている。今後、これに関する必要十分なエビデンスが示されたと判断された段階で、初診についても診療報酬上の評価の対象とすべきである。

(医療タイムスNo.2351)

 

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