特集 オンライン診療の胎動(3)
クリニクスサミット2018から
2018-06-08
小児地域医療におけるオンライン診療の経験
外房こどもクリニック院長黒木 春郎 氏

黒木春郎氏は、千葉県房総地区でプライマリケアを実践。2016年からオンライン診療を取り入れてきた経験を語った。

「オンライン診療とはインターネット回線を利用しビデオチャットで診療する方法だ」と切り出した黒木氏は、この4月からのオンライン診療料、オンライン診療医学管理料の加算は大きな一歩を記したと強調した。

黒木氏は、千葉県いすみ市にクリニックを開院したが、小児科専門医が常勤でいる医療機関は、50キロ半径内では同院だけという状況だという。かつ、いすみ市はご多分にもれず少子高齢社会となっているが、医師はさらに少ない。

オンライン診療の導入では、医療過疎地での小児医療の展開、それと小児医療のニーズは増えているが医療資源は偏在している。この2つの課題を同時に解決できることを考えた。その上で、外来、入院、在宅に続く新しい概念になるのではないかと思い、導入を決意。

患者の適応について、黒木氏は次のように考えている。まず問診と視診で診療可能な状態であること。つまり病態が安定し、急性期ではないことが求められる。さらにビデオチャットで意思疎通が可能であること。これは医師と患者の関係が安定していることにほかならない。そして、重度心身障害、家族構成や生活状態などの理由で通院が困難な患者であること―とした。

現在は多くのオンライン診療実績を残してきているというが、定期的な面談ができ、負担も少なくなるために患者にとっても非常に有益だという。

小児医療自体が、QOLの向上の要望が多く、小児医療資源の偏在が顕著のため、今後もオンライン診療への期待は高まるだろうと結んだ。


北海道だからこそ求められるオンライン診療
札幌医科大学医学部耳鼻咽喉科学講座准教授高野 賢一 氏

高野賢一氏は、札幌医科大学医学部のオンライン医療システムを用いた新たな難聴医療の模索を報告した。

高野氏によれば、世界的な高齢化により難聴疾患は増加の一途をたどっているという。難聴の発症率を見ていくと10年後には60歳以上の3割が、70歳以上の5割が難聴となる見方もある。とともに見逃せないのが、先天性難聴だと高野氏は強調する。新生児の1000人に1~2人が発症し、多くの先天性疾患の中で最も頻度の高い疾患だという。北海道では年間3万6000人の出生があるが、30~40人が先天性難聴を発症する確率だ。

多くは蝸牛の病変がその原因とされるが、この部分の細胞が環境に弱いため、比較的簡単に障害を起こしてしまう。治療は難しく、人工内耳を装着することで聞こえを取り戻すことができる。いわば人工臓器なのだが、“もっとも成功した人工臓器”といわれているという。

この人工内耳の手術が初めて国内で成功したのが33年前。保険適用になったのが成人は1995年、小児では1997年だ。以降、小児に行われた人工内耳利用者が、現在では進学・就職などの転機を迎える時期となる。そこでさまざまな問題が見えてきており、ともあれ人工内耳を装着した後の医療、療育、教育、家族などのサポートが大切になるのだ。

その取り組みのために、広大な北海道で効率的に充実した難聴医療を行うことを目的に先端聴覚医療センターが作られた。その上で、インターネットを用いた双方向の遠隔システムを活用することを考えている。その中で発達の評価、ハビリテーション(小児時のリハビリテーション)を実施していく。凡用性の高いメドレーのオンライン診療システムを用いて、取り組んでいく予定だという。


在宅医療でもオンライン診療は不可欠
東京都医師会会長尾崎 治夫 氏

最後にあいさつに立った東京都医師会会長の尾崎治夫氏は、「本日の講演で語られた通りに、オンライン診療は頭痛外来から難聴治療まで、未来に向けて役に立つ分野になることは明らかだ」と指摘。東京都医師会としても、オンライン診療をいい方向に大切に育てていくことを念願しているとした。その意味で、「今回の診療報酬改定で評価されたことは大いなる進歩といえる」と話した。

都医師会では会員に対し、遠隔(オンライン)診療についてアンケート調査を行った。そこでは約9割が遠隔医療を知っていると答えた。またどのくらいの患者を診療したかとの問いには、1~10人が7割近く、50人までを含めると9割近くを占めた。また遠隔治療についての考えは、賛成・反対が半数ずつとなったという。

先日、総務省から人口推計が出たが、東京都の場合、2045年までほとんど人口に変化はないことが分かった。一部の区部では、むしろ人口が増加傾向だという。

尾崎氏は、「その中で禁煙外来や生活習慣病、安定したアレルギー新患などに対しては、オンライン診療は非常に有効だ」と指摘した。その上で、区部の人口密集地で高齢化が進んだときには、現在の在宅医療体制では対応が厳しいと強調。今後、在宅医療についても、オンライン診療が必要になると見通した。

(取材 ● 田川丈二郎/医療タイムスNo.2350)

 

twitter

facebook

ページトップへ戻る