新たな理念を掲げ機能分化とネットワーク化、病院完結型から地域完結型へ
国家公務員共済組合連合会 横須賀共済病院(神奈川県横浜市)
2018-04-17
横須賀市、三浦半島で長年にわたり地域住民の健康を支えてきた横須賀共済病院。近年は地域医療構想のもと、機能分化とネットワーク化を図ることで自院と地域の他院の立ち位置を明確にし、連携体制を構築する。


地域医療構想を活用し自院をポジショニング

年間手術件数は約7,000件、救急車搬送受入台数は約1万台(2016年実績)。急性期医療の分野で全国トップ50の実績を誇るのが、横須賀共済病院だ。1906年に開設し、横須賀市、三浦半島における基幹病院の役割を担う。1日あたりの外来患者数は1,760人、入院患者数は同630人と、地域になくてはならない病院だ。

長堀薫病院長は「国が推進する地域医療構想を活用しながらビジョンを掲げ、病院の立ち位置や地域連携を進めてきた結果です」と話す。2001年から外科部長として同院に勤め、経営改善に資する数々のプロジェクトを成功させてきた。2012年に同院を離れ、他県で外科医療のレベル向上に努めたが、2014年に病院長として復帰した。

「病院を離れた期間は約1年半でしたが、その間に当院の状況は様変わりしていました。小児科は閉鎖寸前、外科の手術件数は1割減、救急車による搬送受け入れも2割減って8,000台。何より、地域における急性期病院としての役割を果たしていませんでした」

長堀病院長は病院運営が思わしくない理由を、「めざすべき方向性がない」「司令塔の不在」とし、組織改革に踏み切った。「職員の能力は高く優秀ですが、当時はみんながバラバラで同じゴールに向かっていませんでした。私も経営戦略のセミナーに通うなどして自院を振り返り、具体的な改善案に落とし込みました」

そこで、新たに「よかった。この病院で」という理念を掲げ、めざすべき方向として「高度急性期医療の提供」と、患者だけではなく家族、職員にとって魅力のある「マグネットホスピタル」の2つを明示した。


変化への対応を恐れずためらわずに革新する

小児科の存続に対しては市議会や地域医師会に働きかけ、「地域に必要」ということをアピールした。今では9人体制で、地域の開業医や横須賀市救急医療センターとも連携を図りながら地域の小児医療を支えている。

また、職員を集めて集会を開き「三浦半島地域における急性期医療の最後の砦として、役割を果たさないといけない」と述べ、課題を洗い出し、改善の道をたどっていった。

「機能分化とネットワーク化が大きな課題でした。高度急性期から慢性期まで、すべてを担うインテグレーターではなく、リソースを集中させて高度急性期および急性期を担うオーケストレーターになることをめざしました。後者については地域の病院、開業医との連携のあり方を模索しました」

そのため、慢性期医療を担っていた分院、訪問看護ステーションの閉鎖、回復期リハビリ病棟を一般病棟に転換するなど、組織の変革も行った。一つの病院が幅広いサービスを提供する、従来の病院完結型ではなく地域完結型医療へとシフトするには、自院の役割を明確にすることが機能強化につながると考えた。

「丸腰で相手の懐に入り込むと意外とぶつかり合うことはなく、むしろ腹を割って話ができます。近隣の病院長にも当院の戦略を説明し、お互いの医療課題を話すことで相互理解が深まりました」

現在、地域における各病院の役割は明確になりつつある。地域における入院患者シェアは2013年の27%から2015年には28.1%へと拡大。「院内でも地域連携センターの立ち上げなど、職員が率先してさまざまなアイデアを出すようになり、今では指示する側から、『いいですね』とうなずく立場に変わりました」

長堀病院長は「常に新しい情報を収集し、国や自治体の考えを推測すればポジショニングはでき、変化への対応は遅れません」と言い切る。むしろ、厳しい局面のほうが面白く、うまくいけば生き残りやすいと考える。地域医療連携推進法人制度についても、三浦半島地域はエリアが狭すぎず広すぎず、開業医などステークスホルダーも揃っているので実現しやすいのではないか、と指摘する。

「『ブランド推進室』を設置し、院内外に情報発信することで職員にも自院の強みを知ってもらい、モチベーション維持につながればと思っています。2017年は経営改善を図り成果があることを示すJHQC『日本版医療MB賞クオリティクラブ』(日本生産性本部)のクオリティクラスプロフィール認証も受けました。今後3~4年で上位のSクラス認証、さらに『日本経営品質賞』もめざしたいですね」

組織の進むべき方向性を示し、機能分化やネットワーク化を実現してきた長堀病院長の取り組み。「地域のみなさんに、『横須賀共済病院があってよかった』と思っていただけることで、マグネットホスピタルも実現します。それをめざすべく、今後も手は緩めません」と言葉を締めくくった。

●国家公務員共済組合連合会 横須賀共済病院
〒238-8558
神奈川県横須賀市米が浜通1-16
TEL:046-822-2710(代)
FAX:046-825-2103

(取材・文=大正谷成晴 撮影=原恵美子/フェーズ3 2018年2月号)

 

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