「遠隔診療」の新しい潮流
オンライン診療との親和性高い糖尿病専門や心療内科クリニック等
2018-04-10
「オンライン診療」の経営的メリットとは?

2018年度診療報酬改定では、「ICT等の将来の医療を担う技術の着実な導入」が謳われており、その中でも特に「遠隔診療」の適切な活用や「医療連携を含めたICTの有効活用」を進める診療報酬が新たに導入された。(図表1)

「遠隔診療」の一つで、今改定の大きな目玉として位置づけられた「オンライン診療」。その新設項目は4種類からなり、オンラインによる診察を評価した (1)オンライン診療料(70点・1カ月につき)に加え、 (2)「オンライン医学管理料」(100点・同) (3)「在宅時医学総合管理料 オンライン在宅管理料」(100点・同) (4)「精神科在宅患者支援管理料 精神科オンライン在宅管理料」(100点・同)の3つの医学管理料はオンラインによる((3)(4)は在宅での)医学管理が評価されるものだ。

(図表1)


オンライン診療(以下、同診療)とは従来から実施されていた遠隔画像・病理診断等から更に進化し、「ICTを活用し医師と患者が離れた場所でありながら患者の状態を把握し、診療を行う」もので、外来・訪問診療等の「対面による診療行為を補完する」ことを前提としている。「問診→モニタリング→診察」までの一連の医療行為が改めて診療報酬上で評価されたことになる。

(1)はオンラインで「診察を行う」ことへの評価で、(2)(3)(4)は「患者の状態を把握する」ことに対しての評価。(1)~(4)のいずれも算定が可能なのは、「特定疾患療養管理料」、「小児科療養指導料」「難病指導管理料」等を算定する初診から6カ月以上が経過した患者に限られる。主に慢性疾患や難病、神経難病等の患者等が対象で、「地域包括診療料」、「認知症地域包括診療料」算定患者も、その中に位置づけられる。診療所や200床未満病院等の「かかりつけ医」機能を持つ医療機関に同診療を普及させたい厚生労働省の強い意思が伝わってくる。

いずれも「対面診療と同診療を組み合わせ、療養計画を作成し、同計画に基づき診療を行って、その内容を診療録に添付する」ことが求められ、「3カ月連続の算定は不可能」であり、「対面診療の間隔を3カ月以上、空ける」ことも認められない。この他、一部の疾患を除いては「30分以内に診察出来る体制」や「オンライン診察の医師は対面診療を行っている医師と同一」等の厳格な要件に基づき運用される。試験的に同診療を導入している医療機関等を除くと、すぐに要件をクリア出来る医療施設は多くないと想定され、届出には時間がかかりそうだ。ただ、慢性疾患・90日処方の場合、3カ月に1度の対面診療だけだと医師・患者関係が希薄になり易い。テレビ電話と言えども、毎月“顔を見て対話”をすることで互いの信頼関係は醸成し易くなる。

更に、主治医にとっては当該患者が“かかりつけ医”を、より近隣の診療所に変更する心配もなくなるし、3カ月処方よりは3カ月に2回の同診療を導入した方が、レセプト件数も増え、医療経営への貢献度も高くなりそうだ。実際にICTに関心のある若手開業医・勤務医等の中からは、同診療に期待する声が少なからず聞こえてくるのだ。


「200床未満・主治医機能」病院で オンライン活用が増える?

実際に同診療と相性が良いと思われるのは、どのような医療機関になるのだろうか?

まず、考えられるのは診療圏が広く、遠方からでも患者が受診する糖尿病や循環器内科等の専門特化したクリニック。オンライン診療で算定が可能な8つの管理料・指導料等の中に「特定疾患療養管理料」、「生活習慣病管理料」、「糖尿病透析予防指導管理料」等、が入っていることからも、これら慢性疾患等を専門にする医療機関と親和性の高いことは容易に想像が付く。この他、主治医機能を評価する「(認知症)地域包括診療料」を届出する「200床未満病院」等の中にも、初診から半年を過ぎた患者に、同診療を導入する医療機関が増えることも予想される。

地方都市の糖尿病専門クリニックの院長(糖尿病専門医)は次のように指摘する。

「当院の場合、長期に受診されている糖尿病患者が大半を占めており、糖尿病患者の療養指導や予防等には、実際にオンライン診療との親和性は高いと思っている。ただ、当院では私が診察した後、薬剤・栄養管理等、その後の療養指導に係る業務は、CDEJ(糖尿病療養指導士)の資格を持つ看護師や管理栄養士等に任せている。オンライン診療が認められているのは現状、主治医に限られるため、今後、看護師や管理栄養士等の療養指導等にも生かせることが出来れば、より“使い勝手”が良くなると考える。」

確かに、糖尿病領域では近年、医師と他の専門職種とのタスク・シフティング(業務の移管)が進んできたが、医師と連携する他の専門職種にも同診療が認められると、普及は一層、進んでいくのかもしれない。これら専門特化したクリニックは地方だと多くはないため、他県等からでも患者が受診するケースも見られるので、3カ月のうち2回の受診をオンラインに移行することが出来れば、患者の利便性が増すことは間違いない。


患者のプライバシー保持にも貢献する同診療のメリット

その他、同診療との相性が良いと思われるのは、精神科・心療内科等の領域だ。前出・3種類の管理料で精神科に適用されるのは(4)で、新設の「精神科在宅患者支援管理料」を算定する在宅療養の精神疾患患者が対象となる。現実に、在宅に移行した精神疾患患者等の中には、合併症として、糖尿病・高血圧等の慢性疾患を抱える方も少なくはないことから、精神科在宅患者に対してのオンラインによる医学的管理にニーズがあり、厚生労働省は診療報酬での評価が必要と考えたのだと思う。

筆者も編集専門委員を務める月刊「JAHMC」(〔公社〕日本医業経営コンサルタント協会発行)の2018年2月号で、2016年から精神科のオンライン診療を導入した「新六本木クリニック」(東京都港区)の事例が紹介されている。2年間でオンライン診療の実績は1000件を超え、来田誠院長への取材では「引きこもりの方や最初は外出困難なパニック障害の方」等へのオンライン診療の有効性が具体的に語られているので、精神科系医療機関の方々には是非、読んで頂きたい内容である。

そこでは、カウンセリングが中心となる精神科・外来診療の特性と同診療との親和性の高さや、「治療中断の防止」等のメリットが報告されている。
精神科・心療内科クリニック等では、患者のプライバシーの点で、通院することの「敷居の高さ」が指摘されるケースも少なくない。要するに、うつ病やアディクション等の患者さんは、精神科や心療内科等に通院していることを周囲に知られたくない人も多いので、医療機関側も療養環境上、特別な配慮が必要になる。

オンラインで通院回数を減らすことに繋がり、患者の「プライバシー保護」の観点からも、精神科・心療内科等の領域で、同診療活用への期待は膨らむのではないだろうか。

(医療ジャーナリスト:冨井 淑夫)

 

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