2018年度介護報酬改定の大枠を提示(2)
2018-02-09
2018年1月21日には今年度の介護報酬改定率が0.54%とプラス改定が決まり、1月28日に報酬単価が発表された。

それに先駆けて2017年12月17日に開催された第156回社会保障審議会介護給付費分科会(分科会長:田中滋慶応大学名誉教授)では、審議報告の取りまとめが話し合われ、同12月18日には介護報酬に関する審議報告が提出された。同取りまとめの内容は報酬改定の根幹に関わるものなので、前回に引き続き審議報告の内容を紹介していく。


多様な人材の確保と生産性の向上

第156回社会保障審議会介護給付費分科会で、2018年度の介護報酬改定に関する内容が4つの柱で示された。「1、地域包括ケアシステムの推進」「2、自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現」「3、多様な人材の確保と生産性の向上」「4、介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定性・持続可能性の確保」が柱になっている。前回1と2について述べたので、引き続き3と4について説明する。
3点目の「多様な人材の確保と生産性の向上」については、「人材の有効活用・機能分化、ロボット技術等を用いた負担軽減、各種基準の緩和等を通じた効率化を推進」を念頭に、次のような方針を打ち出した。いずれも介護の担い手が現在だけではなく将来にわたって不足するという予測に、対策を講じたものといえる。

(1)生活援助の担い手の拡大として、「訪問介護については機能分化を考える。介護福祉士等は身体介護を中心に担う。生活援助については、人材確保の裾野を拡大するとともに、新研修を創設して質を担保する」と提示した。新研修については、現在の訪問介護員の要件である130時間異常の研修は求めないが、生活援助中心型のサービスに必要な知識などの研修を行うということである。

(2)介護ロボットの活用の促進としては、「特別養護老人ホーム等の夜勤について、業務の効率化等を図る観点から、見守り機器の導入により効果的に介護が提供できる場合には評価を行う」と具体的に導入に加算を考える。ただし、審議中に出されたそのほかの介護ロボットについては今回言及していない。

(3)定期巡回型サービスのオペレーターの専任要件等の緩和では、「定期巡回型サービスのオペレーターについて、夜間・早朝に認められている次の点を日中についても認めることとする」とし、「1.利用者へのサービス提供に支障がない場合には、オペレーターと随時訪問サービスを行う訪問介護員、および指定訪問介護事業所、指定夜間対応型訪問介護事業所以外の同一敷地内の事業所の職員の兼務を認める」こととした。さらに「2.夜間・早朝と同様の事業所間の連携が図られているときは、オペレーターの集約を認める」とした。

(4)ICTを活用したリハビリテーション会議への参加が認められる。「リハビリテーション会議(リハビリテーション関係者間でリハビリの内容等について話し合うとともに、医師が、利用者やその家族に対して、その内容を説明する会議)への医師の参加については、テレビ電話等を活用してもよい」とし、直接訪問しなくても良いと述べている。

(5)地域密着型サービスの運営推進会議等の開催方法・開催頻度の見直しでは、「地域密着型サービスの運営推進会議等の効率化や、事業所間のネットワーク形成の促進等の観点から見直しを行うことになった。具体的には「個人情報・プライバシーの保護等を条件に、現在認められていない複数の事業所での合同開催を認める」「定期巡回・随時対応型訪問介護看護の介護・医療連携推進会議の開催頻度について、他の宿泊を伴わないサービスに合わせて、年4回(3か月に1度)から年2回(半年に1度)にしても良い」と緩和する。


介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定性・持続可能性の確保

4点目の「介護サービスの適正化・重点化を図ることにより、制度の安定性・持続可能性を確保」だが、ここでは福祉用具や集合住宅への訪問介護をはじめ居宅系サービスの見直しを提案している。

(1)福祉用具貸与の価格の上限設定について、「福祉用具貸与について、商品毎の全国平均貸与価格の公表や、貸与価格の上限設定を行う(平成30年10月から)」「福祉用具専門相談員に対して、商品の特徴や貸与価格、当該商品の全国平均貸与価格を説明することや、機能や価格帯の異なる複数の商品を提示することを義務づける」ことなどが提示された。このうち、全国平均貸与価格の算出方法など、細かい点については報酬単価等の提示と共に示されることになる。

(2)集合住宅居住者への訪問介護等に関する減算および区分支給限度基準額の計算方法の見直しでは、「集合住宅居住者に関する訪問介護等の減算の対象を、有料老人ホーム等以外の建物にも拡大する」「事業所と同一敷地内または隣接する敷地内に所在する建物について、当該建物に居住する利用者の人数が一定以上の場合は減算幅を見直す」「集合住宅居住者の区分支給限度基準額を計算する際には、減算前の単位数を用いることとする」「定期巡回サービス事業者は、正当な理由がある場合を除き、地域の利用者に対してもサービス提供を行わなければならないことを明確化する」としている。

(3)サービス提供内容を踏まえた訪問看護の報酬体系の見直しについては、「訪問看護ステーションからのリハビリ専門職の訪問について、看護職員との連携が確保できる仕組みを導入するとともに、基本サービス費を見直す」「要支援者と要介護者に対する訪問看護については、サービスの提供内容が異なることから、基本サービス費に一定の差を設けることとする」などが示された。

(4)通所介護の基本報酬のサービス提供時間区分の見直しでは、「2時間ごとの設定としている基本報酬について、サービス提供時間の実態を踏まえて1時間ごとの細かい設定に見直す」「基本報酬について、介護事業経営実態調査による収支差率等の実態を踏まえた上で、規模ごとにメリハリをつけて見直す」といったことが提示された。

(5)長時間の通所リハビリの基本報酬の見直しについても「3時間以上の通所リハの基本報酬について、同じ時間、同等規模の事業所で通所介護を提供した場合の基本報酬との均衡を考慮しつつ見直す」として、1時間単位の設定を立てる。


持続可能な制度に向けて

これらの提案については、委員の立ち位置によって様々な意見が出された。審議報告はこうした意見を踏まえたものになってはいるが、同報告について各委員から意見が出され、追加修正の提案も出された。

日本医師会常任理事の鈴木邦彦委員は「介護ロボットについては医療機器と同様に安全性を厳しく見る必要がある」など述べた上で、全般的に概ね了承する旨の意見を述べた。今回の改定では介護医療院の創設が決まったが、日本慢性期医療協会会長の武久洋三氏は介護医療院の創設と経過措置などの改定案に対し「評価できる内容」と賛同の意見を述べた。また、全国老人保健施設協議会会長の東憲太郎委員からも「老人保健施設への評価もできている」と概ね賛同を示した。健康保険組合連合会理事の本多伸行委員は「加算方式の報酬改定は算定を複雑化させている。次回改定に向けて抜本的な報酬策定も必要」と意見を述べた。

いっぽう、認知症の人と家族の会理事の田部井康夫委員からは「生活援助訪問介護に対する介護について上限を設けるなど、本人のニーズに応えられなくなる制限などは慎重に行うべきだ」として、介護保険利用者の立場を十分に配慮することを求める意見が出された。また、日本労働組合総連合会の伊藤彰久委員からは、市町村が是正を促す“生活援助のかけ離れた訪問回数”について、「市町村の裁量に任せるのであれば、ガイドラインを作るべきではないか」との意見も出された。このように利用者側の委員からは必ずしも賛同する意見が出されたわけではない。

医療保険や介護保険、年金などの社会保障費の増大は財政面からするとひっ迫した課題である。ただ、高齢者が増え続ける日本において保険費用の抑制だけが方策であるとは限らない。高齢者の医療や介護、年金を掌管する厚生労働省であるからこそ、まず利用者の満足度を高めることで「持続可能な制度」が国民自身のために必要であり、消費税をはじめとする税負担に対しての国民に理解を求めるという方法もあるのではないだろうか。

※本稿は2018年2月2日の時点の内容です
株式会社メディア・ケアプラス 松嶋 薫

 

twitter

facebook

ページトップへ戻る