特集 病院にこそ求められる総合診療医(下)
制度とは別に現場レベルで整備が進む「病院版総合医」
2017-12-06
【まとめ】
総合診療専門医とは別に病院版総合診療医が必要

患者の高齢化に伴い、医療提供のあり方も大きく変わりつつある。東京都後期高齢者医療広域連合の調査(2015年3月)によると、75歳以上の後期高齢者の64%は2つ以上の疾患を治療しており、80代以上になるとその割合は7割弱になるという。

それも多くは1つの医療機関で診ているのではなく、たとえば膝下のしびれを訴える高齢者を診察したところ、他の病院の内科に糖尿病、ほかにも骨粗しょう症で整形外科に、網膜症と白内障で眼科にかかっていることが(後で)わかった-といった具合だ。単なる合併でなく、それぞれが絡み合っていることも多いことから、個別の診療科の専門医による「多科受診」でなく、複数の疾患を一度に見られる医師が必要との見方が広まっている。

こうしたことから注目されているのが「ジェネラル医」だ。「総合診療専門医」の研修が18年度からスタートするが、一方ですでに現場で従事している医師に向けた学習機会を設ける必要があるとの指摘もある。

というのは総合診療専門医が研修を積み、現場の第一線で活躍するのは5~10年後。それまで待つことはできないし、総合診療医がプライマリケアをめざす診療所の医師をもっぱら想定しているため、病院の総合医は育ちにくいとの見方があるためだ。

日本病院会はやはり2018年春から独自の「病院版総合医」制度を立ち上げるが、こちらは卒後6年以上の医師を対象にしており、あくまで現役医師に「ジェネラリスト」的な診療技術を身につけてもらうことを主眼に置く。医師の立場とすれば生涯教育の一環と位置づけることもできそうだ。

理念として、(1)包括的かつ柔軟に対応できる総合的診療力を有する医師を育成する、(2)複数の診療科、介護、福祉等の分野と連携・調整し全人的に対応できる医師を育成する、(3)医療と介護の連携の中心的役割を担うことができる医師を育成する、(4)チーム医療を推進できる医師を育成する、(5)地域医療にも貢献できる医師を育成する-を掲げる。

こうした仕組み以外にも、東京城東病院のように、それぞれの病院が独自に「総合内科」を設けたり(図)、あるいは、医師自身が日々の診療のなかで「専門領域以外の知識も身に着ける」といったケースも散見されるようになってきている。


「総合医」の病棟配置は収益面での評価に課題

病院のなかには「総合診療科」といったかたちで独自に位置づけ、育成に着手するところも出てきている。もともと病院の医師は外来、手術室、病棟を股にかけているため病棟での医学管理が手薄になっており、これを総合診療科の医師が「病棟専属」として対応することで医療の質が向上するとの期待もある。

とはいえ、こうした取り組みに収益が伴うかと言うと、必ずしもそうとは言い切れない。現行の診療報酬体系では内科的体制への評価は高いとは言えず、「重症度、医療・看護必要度」における項目は外科寄りで、内科的診療への評価は充実していない。ある病院では高齢者医療でフル回転しており、病棟では看護師を過加するほどだが、患者一人の1日入院単価は4万円代前半だという。これでは多職種を配置するにも限度がある。

総合診療医の多くは患者の在宅での暮らしぶりなど、「医療以外」の課題にも目を向けるが、これをどう評価するかという問題もある。

高齢社会はいずれ終わりを告げるとはいえ、「団塊ジュニア」と言われる1971~74年生まれの世代が75歳以上となる2046年から15年前後は、こうした医療提供体制が求められる。医学教育や組織運営だけでなく、診療報酬もそれに沿ったあり方が求められそうだ。

(フェーズ3 2017年10月号)

 

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