特集 緩和ケアの現在(3)
がんとの共生を目指して
2017-10-12
在宅と比較してどこが標準になるべきか

ケアタウン小平クリニック所長として、12年前から在宅でのホスピスを行っている山崎章郎氏は、「緩和ケアをがん治療の分野ではなく、がんとの共生に入れたというのは正しい判断だと思う」と今回まとめられた基本計画を評価。さらに基本計画には、「がん患者が尊厳を保持しつつ安心して暮らすことのできる社会の構築」を目指すためには、「がん患者を含めた国民が、がんを知り、がんの克服を目指す」と計画には明記されている。山崎氏は、がんと診断されたときから当然治らない可能性もあるわけで、「治らなかったときを想定することを、医療者の説明の中に加えていくべきだろう」と強調。「現実を知って初めて安心できる。患者の自己決定のためにその説明は必要だ」とした。

山崎氏は、緩和ケア病棟で勤務していた経験も踏まえ、「在宅と比較してどこが標準になるべきか」と疑問を呈した。つまり緩和ケア病棟と在宅では標準の考え方が違ってくるというのだ。症状の緩和でも、例えば在宅でも患者は亡くなっていくが、患者自身が在宅の症状は違うということを紹介。患者の苦痛の増す要因を考えると、緩和ケア病棟で患者たちが感じる苦痛がもしかして、標準ではない場所にいるから苦痛が増しているのかもしれない。標準ではない場所で行われる症状コントロールは、やはり標準ではないのではないか。そういう視点をもって地域とつながっていかないと、誤った症状コントロールが地域に広がる可能性があると危惧した。

その上で、在宅緩和ケアの質の評価が大事と指摘。現在は全国に在宅緩和ケア充実診療所があるが、そこで行われている緩和ケアが本当に適切かどうか保証はどこにもなく、在宅緩和ケアの基準というものをきちんと作って、その基準を公表していくべきと強調した。


ピアサポーターを有効に活用すべき

福岡県でがん患者団体ネットワーク「がん・バッテン・元気隊」の代表を務める波多江伸子氏は、がん患者の立場から発言した。同ネットワークはがん検診の啓発から在宅ホスピスまでをつないだ約50団体によるネットワーク。その中で、ピアサポーターを養成して、現在までに約200人が誕生した。

波多江氏は、がんを告知された患者、入院中の患者が自分の気持ちを吐き出せるがんサロンを開いているが、そこでがん経験者であるピアサポーターが1人ひとりの気持ちをゆっくり聞いていく。例えば乳がん患者は、がんの進行後の自分の身体のイメージが分からないが、そこに笑顔の乳がん体験者がサポーターとして支援すれば、患者はこれからの自分がイメージできうれしいという。医療者は何かしなければならないが、サポーターはいるだけでいいというのだ。

診断時からの緩和ケアが重要だといっても、実際は看護師もすぐにはついてくれない。それならば、ピアサポーターを活用してほしいと波多江氏は訴えた。


緩和ケアの機能分化 急性期と生活保障を

フリートークで話題になったのは、緩和ケアの機能分化ということだ。

山崎氏は、「緩和ケア病棟では適切なケアが必要になることはいうまでもない。ただそれが整えば、今度は亡くなるまで生活の基盤が保証されていくことが望ましい」とした。つまり、極めて重度で急性期の患者に対処することと、これからの生活保障が大事になった場合に、それぞれの要件として施設基準、人員配置の内容が変わってもいいというのだ。

さらにいえば、在宅と同じように、医療的なケアはするが、生活中心のホスピスのような緩和ケア病棟があってもいいのではないかとした。そこでは看護師が常時いなくてもいいし、医師もポイントにいればいい。そんな従来の枠組みをどうするかだけではなく、新しい可能性としての緩和ケアを考えていくことも必要と述べた。

しかしこの機能分化について波多江氏は、「よく分からない」と指摘。患者にとって大事なことは、「必要なものが必要なときにあることだ」とし、「緩和ケア病棟に入りたいと思ったら、待たされることなく入れることが一番で、機能分化は関係ない」と述べた。


地域の中の緩和ケアを考えるとき

会場との質疑応答では、発言者が地域における緩和ケアの役割に言及。そこでは、▽症状コントロール▽看取り▽医療従事者の研修▽地域住民の啓発-を挙げたが、その上で、「緩和ケア、エンドオブライフの地域内での共有化」を指摘した。つまり、地域の中での緩和ケアを協議する場を作ることが極めて重要だということだ。

発言者は、地域の中でのつながりがなければ、医療の姿が見えなくなってしまうと強調。実際には、患者から見えないことを、医療者は一生懸命やっているのが現状だとし、「だから議論の中であった緩和ケア充実診療所、緩和ケアの機能分化も見えなくなっている」と指摘した。

さらに、「緩和ケアが、個別の人生を支えるものであるなら、個別の人生の拠点は地域にあるわけで、そこを中心に考えなければ本当の緩和ケアができないのではないか」と疑問を投げかけ、「患者が主役でいられる地域を中心に、緩和ケアチームが活動するときが来ているのではないか」と訴えた。

(取材:取材 ● 田川丈二郎)
(4)につづく

 

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