特集 在宅医療と患者急変(中)
第1回日本在宅救急研究会シンポジウム
2017-09-12
【1つの病院提携】
在宅医療と急性期病院の“1つの病院連携”の有効性
医療法人青燈会小豆畑病院 病院長 小豆畑 丈夫 氏

1つの病院の医師・スタッフとのイメージで1人の患者を治療

小豆畑病院病院長の小豆畑丈夫氏は、自らが茨城県で実施している「在宅と救急の1つの病院連携」について報告した。

小豆畑氏がいう在宅と救急の1つの病院連携とは何か。例えば、重度の糖尿病患者が入院して胃がんの手術をしなくてはならないとする。病院では内科、外科、糖尿病科の医師たちが一緒になって患者を診る。それぞれの医師が協力して手術を実施し、退院後にも外科と内科の外来に通い続けるということがある。1つの病院連携とは、それと同じことを在宅医と救急医がやったらどうなのかという発想だ。在宅医と救急医のみならず、それぞれのスタッフ全員が1つの病院の医師・スタッフというイメージで1人の患者を治療したらどうだろうというのが1つの病院連携という考え方なのだ。そこでは病院の都合ではなく、在宅患者のニーズに応えることを目的とした連携となる。

具体的にいうと患者が搬送される場合には、必ず在宅医から救急医へ電話、もしくは書面にて患者情報の交換をすることを徹底。簡便な双方向患者紹介システムも構築した。全く知らない医師に患者を紹介するとストレスがかかる。そこでなるべく多く医師などが集まる機会を設けた。さらに1人の患者ができるだけ早く在宅に戻るために在宅・救急合同のカンファレンスを必ず退院前に行う。退院前のケアについて両施設で検討をする。これを2016年1月より在宅後方支援病院である同院と茨城県にある広域在宅療養支援グループが取り組んできたのだ。

紹介状では、どの医師に何をしてほしいかの項目に○をつけ、かつ簡単な患者プロフィールを記入できるものを用意。在宅から救急へと続くいくつかの疾患のクリニカルパスも作成した。難しい症例に関しては在宅医と救急医が集まって合同症例検討会も実施しているという。

多くの医師、看護師とたくさん会うことが必要と考え、年に3回程度合同で勉強会を開催。1度に約100人の参加者があるというが、実際に在宅医が紹介した患者の疾患に関して討論を行っている。また外部講師を招いてセミナーも実施している。


この連携は自院にとってメリットが多いと考える

小豆畑氏は、この1つの病院連携が高齢者の在宅救急の現場で起きている問題点の解決の糸口になるのではないかということから検証作業をした。

16年1月1日~12月31日にわたって、在宅医と救急医に参加を求めて実態を集計した。その結果は図1の通りだ。

茨城県の県北から県央の50キロメートルの範囲に、在宅医療グループは5カ所の在宅診療所を有している。その中央部、那珂市に小豆畑病院がある。

患者紹介元診療所によって、紹介数などにそれぞれ特徴があることが分かった(図2)。例えば水戸市にはさまざまな医療機関が密集しているため、小豆畑病院に来る必要はない。また茨城町は、隣の水戸市に収容される。一方、日立市、ひたちなか市には3次救急医療機関があるが、高齢者を積極的に受け入れる2次救急病院がないため小豆畑病院が紹介される。東海村には3次救急病院、総合病院はないが、地域救急に積極的な2次救急病院があるため、小豆畑病院には来ないのだ。

紹介患者のうち3分の1が外来、3分の2が入院となり、外来患者のほとんどは検査目的でやってくる。入院患者については摂食障害、肺炎が多いという。

ここで小豆畑氏が強調したのは、連携を開始すると夜間などの紹介がほとんどなく85%が普通の診療時間に紹介してくるという。また1年間を通じ複数回入院する患者を見ると、1回入院が53人、2回入院が9人、3回入院が3人、5回入院が1人だった。しかもこの患者らは1人も死亡例はなく、全員が在宅に復帰している。

副次的な変化をいえば、高齢者ばかりを受けていると在院日数も増えて経営的にはどうなのかとの心配もあったが、急性期病棟の利用率はこの連携を始めてからむしろ上昇したことが分かった。また平均在院日数はほとんど変わらず、療養病床の稼働率はアップした。小豆畑氏は、この連携は自院にとってメリットが多いと考えている。

検証作業中に行った在宅診療グループへのアンケート調査では、「連携をしたことによって紹介ストレスが軽減した」が90%、「紹介が円滑化した」が90%、「急性期対応に満足できた」が80%と高い水準となっている。


患者が入院すると在宅医が病院を訪れ激励

ここで小豆畑氏は、具体的な連携事例を紹介した。

90歳の男性が鼠径ヘルニアで救急搬送されてきた。病院として、手術をしないと死んでしまうことを伝え、その手術のリスクについても話した。患者が高齢ということもあり、患者はなかなか手術の決心がつかず困っていたが、男性の在宅医が病院に駆けつけ、電話で家族と話した。そこでは、「年齢の割には呼吸機能がしっかりしている。執刀医もベテランだ。手術をしたらどうか」と説得。家族も手術を決断したという。

さらに92歳男性の例を紹介。

度重なる脳梗塞の発症で寝たきりとなり、糖尿病も患い、慢性心不全、慢性腎不全の持病を抱えていた。この患者は何とか経口摂取をしていたが、誤嚥性肺炎を併発し、病院に紹介されてきた。診断では、肺炎が治って救命ができても気管切開が必要となることを説明。家族は挿管するかどうか悩んだ。そこへ在宅医が病院にきて、家族と救急医の三者で話し合いをした。在宅医は、「今まで何度も脳梗塞で倒れ、つらい闘病生活を送ってきた。その際、生きているだけの生き方はしたくないといっていた」ことを家族に伝えた。家族は人工呼吸器をつけないことを決め、患者は亡くなった。ただ家族からは感謝され、小豆畑氏は三者で話すことができた本当によかったと感じた。小豆畑氏によれば、患者が入院すると必ず在宅医が病院を訪れ、激励をしてくれる関係を築いている。

現在、この1つの病院連携を地域医療連携推進法人とし、法的にも連携施設として整備ができないかと検討中だ。

(下)へつづく

 

twitter

facebook

ページトップへ戻る