特集 在宅医療と患者急変(上)
第1回日本在宅救急研究会シンポジウム
2017-09-11
救急医療とのあるべき連携とは

地域包括ケアシステムが機能するためには、在宅医療の充実が不可欠だ。一方で、在宅医療患者の急変憎悪に生じる救急医療との連携の問題も浮き彫りとなる。日本在宅救急研究会は、在宅医療と救急医療に関わるスタッフが同じテーブルについて課題を共有するために発足。7月22日に開催されたシンポジウムでは、在宅・救急医療の双方の立場からどうあるべきかが論議された。


【救急医の立場から】
在宅医療と救急医療の連携で浮き彫りとなる問題点
帝京大学救急医学救命救急センター 教授 石川 秀樹 氏

在宅と救急が研究会で同じテーブルで話し合う

日本医科大学大学院の救急医学分野教授、同大付属病院高度救命救急センターセンター長である横田裕行氏は、本研究会の代表世話人を務める。シンポジウムの冒頭、横田氏は、救急の立場として研究会に参加したと明言。実際にシンポジウム開催の朝にも、在宅から救命救急センターに救急車で搬送された患者を診てきたとした。それが横田氏の日常だが、救急医の視点からいうと、「もう少し早く手当をすれば救急車まで呼ぶことはなかったのでは」という患者が来る。最期は在宅で看取りたいという希望がありながら、救急搬送され、本来は希望しない延命装置をされることも発生している。「在宅医療と救命医療がうまく連携することによって、良き医療につながるのではないか」と強調した。

地域包括ケアシステムがいわれるが、「在宅で過ごす患者が病気になった場合にどうするのか」ということを、在宅と救急が研究会で同じテーブルについて話し合って解決していきたいと期待した。


在宅の急変に対応する病院機能を

帝京大学救急医学救命救急センター教授の石川秀樹氏は、救急医の立場から、在宅医療と救急医療の連携の問題点を語った。

まず石川氏は、在宅から搬送されてくる患者の現状を紹介。そこでは夜間にすぐ救急車で救命センターに搬送されてくるが、例えば同行した施設職員は患者のことが分かっていないことが多くある。誰に話を聞いても、患者の情報が伝わらず、無為に時間だけが過ぎていくという経験を多くしているのだ。

石川氏によれば、在宅で急変したからといって救急車ということではなく、病院の機能に合わせた対応の仕方があるという。その仕組みの1つが東京消防庁で行っている♯7119救急相談センターだ。今年で10年目となる事業だが、架電すると「救急を要することはない」「救急車で行くほどではないが、適切な病院を紹介する」とアドバイスがもらえる。人口の割合よりも高齢者からの相談が非常に少ないというが、この高齢者から相談があった場合にはかなりの確率で救急搬送や入院が指示されるという。つまり在宅における高齢者の医療ニーズは高く、そのためにも♯7119救急相談センターの存在を認知してほしいという。


機能分化が進めば、在宅医療がうまく進むのか

続いて石川氏は、看取りについて言及。内閣府のデータでは、自宅で亡くなりたいという数も増えているが、実際には病院で亡くなりたいという数も増加しているという。石川氏は、亡くなる瞬間の医療ニーズを一般の人たちは感じているのではないかと指摘。住み慣れた場所で亡くなるニーズも確かに多いが、「何が何でも自宅でというのは1割程度で、最後は病院でというのが圧倒的に多いことは知られていない」と述べた。


また東京近郊における療養病床数は、実は精神科の病床数と同じくらいしか存在していないと明かし、人口比でみると圧倒的に少ないとした。東京で自宅で亡くなる人の率が高いのは、在宅医療が進んでいるからではなく、病院・施設など行き場が人口に比べて極めて少なく、「必然的に自宅で亡くならざるを得ないからと、私は理解している」とした。

その上で石川氏は、多死社会が進行するにも関わらず、病床を削減し、医療費を縮小し、介護保険を骨抜きにしている現状は、救急医の目から見ても社会全体が姥捨て山のようになってきていると指摘。厚生労働省は、「在宅医療とは金を掛けずに死ぬことと見つけたり」と考えているのではないかと疑問を投げかけた。

人とカネを増やさずに機能分化を推進しようとしているのが国の施策だが、機能分化が進めば、在宅医療が進み人はうまく死ぬことができるのか。例えば東京の場合は、病床・施設は不足しているが、医師は余っている。その医師らは大きな総合病院で専門分化しているわけだが、これは結局在宅医療とは何ら関係のないこととなる。


在宅医療が目指すべきは自宅で看取ろうだけではない

東京都医師会で行った調査では、高齢者が入院する場合、自宅から来る患者は7割、施設からが1割。1カ月後どうなっているか見ると、自宅に戻れたのは5割、約3割がそのまま入院中だった。介護施設からきた高齢者は、元の施設に戻るのが2人に1人だった。

石川氏は、世の中で人が死を知る機会が少なくなっているとしながら、医療の現実というものを、医療者がかみ砕いて伝えてこなかったのではないかと危惧。その上で、「自宅で死なせること、病院で死なせないことが在宅医療ではないと思っている」と明言した。「適切な医療連携が保たれている環境で療養してもらい、想定内の中で最期を迎えていただく。本人も、残された家族も満足し、人としての尊厳が保たれていくことが大事だ」

結局、在宅医療が目指すべきところは、「救急医療を減らそうとか自宅で看取ろうということだけではないだろう」とし、高齢者自身の意識の改革、施設の意識の改革が必要だと述べた。

(中)へつづく

 

twitter

facebook

ページトップへ戻る