特集 インセンティブで健康づくり(上)
健幸ポイントプロジェクトの成果
2017-06-19
2014年~16年の3年間、全国6自治体で実施した「複数自治体連携型大規模健幸ポイントプロジェクト実証」では、健康無関心層を取り込み、医療費抑制につなげるなどの成果を生んだ。5月11日には、都内で成果報告会が開かれ、総括と展望が語られた。今後は持続可能なための予算の原資をどうするかなどの課題も明らかになった。


【事業概要】
無関心層の行動変容を促す健幸ポイント事業 延べ参加者は6自治体で2万人を超える

無関心層を動かすためインセンティブを生かす

総務省、厚生労働省、文部科学省(スポーツ庁)の3省庁が支援をし、2014年から16年度に至る3年間、「複数自治体連携型大規模健幸ポイントプロジェクト実証」を、宮城県伊達市、栃木県大田原市、千葉県浦安市、新潟県見附市、大阪府高石市、岡山市の6自治体が実施。延べ参加者が2万人を超える大規模実験が行われた。

5月19日に開かれた成果報告会では、筑波大学大学院人間総合科学研究科教授の久野譜也氏は、まず健康無関心層に言及した。

これまで国や自治体が実施する健康施策に参加するのは運動が「充足している、満ち足りている」と考える3割の住民であり、7割は無関心だった。さらに「充足していない」と答えた7割に、「今後運動をする意志があるか」聞いてみたところ、7割は「やる意志がない」と答えたという。「これはショックな結果だった」(久野氏)。

さらに「やる意志がない」7割は、さまざまな「健康情報」も入手してないことが分かった。これまでは、久野氏などの公衆衛生的な立場からいえば、「国民は健康や運動が必要なことを分かっているはずだ。分かっているができないところをどう変えていくか」という論点で議論をしてきた。しかし、結果として情報を入手していないから、リテラシーが上がらない。つまり健康や運動の必要性も分かっていないのではという仮説が成り立つ。今回は、健康無関心層を引っ張り出すという仕掛けはないのかということで、インセンティブが生まれた。


関心がもたれる金額は月2,000円 6市で約200のプログラムを用意

これまでインセンティブの大規模なエビデンスが取られていない。今後は自治体レベルで1万人単位、10万人単位で実験をしていくビジネスモデルを作っていきたいと、事業を4年前に企図。3省庁の連携事業として3年前から立ち上げて、今年3月に終わった。

これまでも予防事業に取り組む自治体や健保のヒアリングをさせてもらってきたが、エビデンスベースで事業が組み立てられていないという実態が見えてきた。つまり、どういうインセンティブを提示していけば、自分たちが訴求したい無関心層が興味を持つのかということが、実は自治体担当者レベルでの発想のみでほとんどの事業がなされているということが分かった。実際に無関心層が興味を持つという確証がないのに、担当者が予算や自分たちのマンパワーによって、インセンティブを決めているのである。それが一番大きな問題だったのだ。

ではどういうインセンティブなら無関心層を引っ張り出せるかということを7,000人規模で調査した。そこでは具体的な金額として調べたという。まず月500~1,000円というインセンティブに、無関心層は全く反応しない。それでは逆に月1万円、2万円のインセンティブではどうかというと、実はこの金額も反応が芳しくない。そんなにもらえることは相当大変なことだろうという警戒心が生まれるというのだ。関心がもたれるインセンティブは月2,000円~6,000円だった。そこで今後の原資のことも考え、今回の実験では一番安い月2,000円のインセンティブで取り組んだ。

プログラムは各自治体が主体で行う健康教室のほかにも、民間企業が行う健康サービスも対象とし、健康無関心層も参加しやすいように6市合計で200程度のプログラムが用意された。貯まったポイントは、Pontaポイント、地域商品券や全国商品券、寄付に交換することができる(図1参照)。



行動変容の定着化 原資獲得のため民間の協賛も

3年間にわたる事業の結果、インセンティブと運動プログラムを組み合わせて提供することで参加意欲を刺激し、メタボ該当者および予備軍の減少や肥満者の減少につながる行動変容を見せたという。また60歳代では1人あたりの年間約4.3万円、70歳以上では1人当たり年間9.7万円の医療費抑制につながることも明らかになった。

さらに今後は、最大獲得ポイントが半分以下になっても継続して参加すると回答した人が7割以上に上るなど、行動変容が定着していることが伺えるという。原資獲得のために、参加者負担も考えつつ、民間企業の協賛を募ることも有効だとした。

(中)につづく

 

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