課題山積の在宅医療はどう変わるか?(1)
~4月12日「中医協」(在宅医療その2)の議論から見えてきたもの
2017-06-16
2015年に初めて減少へと転じた「在支診」の数

今年4月12日に開催された中医協総会では、「在宅医療」(訪問診療)をテーマにした二度目の議論が行なわれた。そこでの議論は大きく分けて、(1)在宅医療提供体制の確保(安心して身近な地域において療養できる地域包括ケアシステムの構築推進)(2)看取りを含めた在宅医療の充実(多様化する療養に関するニーズの対応や看取りを支える在宅医療の推進)-の2つの視点からなる。

まだ4月の時点で、「在宅医療」に係る議論が二回にも及んでいるのは、厚生労働省にとっても2018年診療報酬・介護報酬W改定を1年後に控え、「在宅医療提供体制の整備」に向け多くの課題が山積しており、多様化した国民の在宅医療ニーズに、どう応えていくのかが重要なテーマとなっていると推察される。在宅医療に係る次回改定の内容等は未だ煮詰まっていないが、現段階で中医協での議論のプロセス等から垣間見える今後の展開を占ってみたい。

厚生労働省は2025年の「地域包括ケアの実現」に向けて、「在宅医療の普及・推進」が必要になる一方で、前回(2016年)改定から在宅医療の診療報酬にメスを入れ始めた。国の目指す「入院から在宅へ」の流れでの中で、これまで通りに点数誘導を進めると、総体的な医療費は際限なく膨張していくからだ。勿論、医療費削減を熱望する財務省からのプレッシャーも計り知れないと推察される。

今後は「在宅医療の普及・推進」と同時に、「在宅医療費(単価)の抑制」という2つのアンビバレントな命題に臨まなければならない厚生労働省の苦労がうかがえる。

さて、前出・中医協の資料によると、2007年に創設された在宅療養支援診療所(在支診)は2013年まで順調に増加傾向で推移してきたが、その後は横ばい傾向。特に2014年には全国で1万4,662あった施設数は2015年に1万4,562施設と微減ではあるが、初めて減少へと転じている。前述のように、近年の診療報酬改定で、在宅医療に対する重点評価を継続してきた厚生労働省は、2016年改定から少しずつ抑制へと舵を切り始めた。そのため、2016年度から在支診の数は更に減少傾向が続くと予想される。

前改定で特に影響が大きかったのは、在宅患者の重症度・居住場所・患者数に応じて顕著な傾斜配分が導入されたこと。「在宅時医学総合管理料」(在医総管)と「施設入居時等、医学総合管理料」(施医総管)〔注・旧特医総管〕を算定する医療機関は、自宅等の「単一建物診療患者以外の場合」には従来以上に手厚く評価される一方で、「単一建物診療患者の場合」は厳しい評価が導入された。こうした評価のあり方は「抑制」というよりは、「メリハリを付けた」との表現が、むしろ正しいのかもしれない。

在支診の動向に詳しい医業経営コンサルタントは次のように語っている。

「単一建物診療患者数の占める割合の高い在支診の中には、在宅医療からの撤退や縮小を余儀なくされる施設も現れてきた。一方、戦略としては外来を強化して、要件緩和された“主治医機能評価”の地域包括診療料・同加算算定医療機関へとシフトする動きも現れている。届出数だけで見ると、在支診は2014年頃がピークだったと断言できる。」


80%超が「在支診」届出の意向なし 問われるその存在意義

さて、中医協の議論の中では在支診の届出を行っていなくても、在宅医療サービス(訪問診療、往診、看取り)を実施する診療所の多いことが明らかになった。訪問診療を実施する診療所では、「在支診」(10,702)と「在支診以外」(9,895)の数は、拮抗しており、往診を実施しているのは「在支診」(9,289)よりも「在支診以外」(14,069)の方が多かった。何と1万4,562施設ある「在支診」の中で訪問診療を実施していない医療施設が約26.5%にも及んでいるのだ。これは、率直に言って由々しき事態ではないのだろうか?

また、在宅看取りを行っている全4,321施設のうち「在支診以外」が1,270施設にも達していることを鑑みると(図表1)、「在支診」の存在意義そのものが問われてくる。
現在、既に1万4,000施設を超える「在支診」で在宅医療を普及させるという当初の役割は、既に終えてしまったとの印象が強い。


更に「在支診以外の診療所の意向」(図表2)という興味深いデータがある。それによると、「在支診の届出を行う意向がない」との回答が実に83.4%に達しており、届出しない理由としては、約40%の診療所が「24時間往診体制が困難」と回答している。一方で、往診料を算定する医療機関の中で「深夜加算」算定施設は2.27%に留まり、「夜間加算」算定施設は5.32%に過ぎなかった。


先に述べたように、「在支診」が今後、急増することは考え難く、厚生労働省も「在支診以外」の「ふつうの診療所」に在宅医療の裾野を拡げていく役割を期待すると思われる。その場合に、在宅医療の「24時間対応」や、「夜間・深夜対応」をどうするのかが課題として浮上する。「機能強化型在支診」に比べて「在支診以外」は深夜・夜間や24時間対応の難しい理由として、医師や看護師、それ以外の職種のマンパワー不足が露呈している。それら課題を踏まえて、厚生労働省は恐らく、地域で「機能強化型在支診」(以下、機能強化型)を中心に「在支診以外」の多くの診療所(かかりつけ医)が「在宅医療の輪」に参画可能な制度設計を検討すると考える。

国は当初、各地域で複数の在支診による「在宅」グループ診療の仕組み作りを目指していたようだが、ここにきて「ふつうのかかりつけ医」が気軽に参加し易いグループ診療の仕組み作りを、2025年の地域包括ケア実現に向けて加速させていくと思われる。

見えて来るのは「24時間・夜間・深夜対応」の可能な「機能強化型」を柱に据え、その周辺に下部グループとして「在支診以外」の「かかりつけ医」が多数参加し、在宅患者の特性や状態、介護者の有無等の条件に応じて、役割分担をして地域の在宅医療を支えていく構図だ。2018年改定では、機能強化型とかかりつけ医の間のグループ化、要するに「在宅」の診診連携を推進する何らかの診療報酬評価が導入される可能性が高い。

そこで注目したいのは、「在宅患者訪問診療料」の規定。現状、「1人の患者に対して1つの医療機関の医師が同診療料を算定している場合に、その患者に対して別の医療機関の医師が訪問診療を行っても、同診療料を算定出来ない」仕組みとなっているが、前出のグループ診療を進めるために、この規定が何らかの形で緩和されることもあり得る。

更に、その存在意義の問われる「在支診」の仕組みについても、何らかの形でメスが入りそうだ。次回改定では考え難いが、将来の制度改正で「在支診」の要件が更に厳格化され、上位ランクの「機能強化型」に一本化されていくとの見方も推測される。ふつうのかかりつけ医が在宅医療を担っていく以上、中途半端な機能の「在支診」は必要ないと、厚生労働省は判断するのかもしれない。

在宅医療を担う診療所のグループ化について、厚生労働省は「富山県在宅医療支援センター設置事業」(平成26年度~)のような郡市医師会を中心とした在宅医療ネットワークの支援事業を進め、中医協での議論から各都道府県地域医療計画の中で在宅医療の数値目標や評価、更に地域の実情に応じた施策を検討していく考えのようだ。

(医療ジャーナリスト:冨井 淑夫)

 

twitter

facebook

ページトップへ戻る