特集 ここからはじまるエンドオブライフ・ケア 超高齢少子化多死時代における“つながり”(下)
エンドオブライフ・ケア協会設立2周年シンポジウム
2017-06-14
【講演2】
地域でつなぐその人の選択と心構えアドバンス・ケア・プランニングとは何か
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター医師 西川 満則 氏(エンドオブライフ・ケア協会相談役)


前もって意思表明する機会が準備される地域

国立研究開発法人国立長寿医療研究センター医師の西川満則氏は、医療選択だけではなく、気がかりなこと、譲れないことなどを前もって意思表明する機会が準備されている地域像について語った。

それはアドバンス・ケア・プランニング(ACP)と呼ばれている。アドバンスとは「前もって」、ケアとは「人生の最終段階に向け話し合っていく」、プランニングとは「計画することだが、本人が表明してつないでいく」ことを指す。

延命治療をするかしないか、施設がいいか、在宅がいいかなどをチェックするということがACPだという考え方があるが、それだけではない。地域で展開していくために、ツィッターほどの文量の文章となっているのが望ましく、単に治療法や療養場所の選択ではなく、自らが譲れないことや大切なことを綴っていくことがACPとなる。

ここで西川氏は、5W1Hを用いてACPを整理した。

何故前もっての話が必要なのか。西川氏は、患者がトレーニングを受けたACPファシリテーターから支援を受けたときに、▽患者の意志が尊重される▽遺族の心の傷が小さくなる-ことを挙げた。

さらにACPで何を語るのか。現在、国が推進した人生の最終段階における医療体制整備事業があり、実際にACPで何を語ったのかという報告がされた。その結果、70%以上が話したことは、▽望んでいる療養場所はどこか▽受けたくない医療行為は何か、30~70%が話していたことは▽困っていること▽気がかりにしていること▽病状の心配▽ゆずれないこと-など、30%未満が話していたことは、▽人工呼吸器の装着▽人工栄養の選択(胃ろう・輸液)▽最期を迎えたい場所の選択-だった。ACP自体が最初から、「あなたはどこで死にたいか」と聞くわけではなく、ある程度の時間をかけて自然と話題にのぼるようにするものだという。同事業のアンケート自体は1カ月程度のスパンであったために、「最期を迎えたい場所の選択などは割合として低かったのでは」と西川氏は分析する。


症状が改善したときこそACPをするべき

それではACPをいつやるべきか。例えば特養老人ホームに入所直後に、さまざま聞くことも多いが、時期としてはよくない。ベストは一時的に症状が改善したときとして、▽がん患者の疼痛が和らいだとき▽高齢の認知症患者の誤嚥性肺炎が改善したとき▽慢性心不全や慢性呼吸器疾患の急性増悪が改善したとき-など、本人も家族も周囲も、1つ乗り越えたというタイミングがいいという。

ただ地域に広げるときに、もっと前のタイミングもある。比較的元気なときに、例えば病院の外来で「タバコは何本吸いますか」「お酒は何合ぐらい飲まれますか」と聞くが、それらと同様に「ACPはやりましたか」と聞ければ、地域に浸透していくのではないかと西川氏という。介護系の現場で、広い意味でのACPをつなげてもらうことも大事だと強調した。

それではACPはどのように実施されるといいのか。西川氏は、「もしも・・・」という表現を使うと、コミュニケーションのストレスが少ないと指摘する。先ほどタイミングという話が出たが、「痛みが取れてよかったね。もしもまた痛みがでたらどうしますか」という聞き方がよいのだ。その上で、経験を聞くと大事だという。「もしも口から食事が摂れなくなったら、どうするか考えた経験はありますか」という聞き方がストレスを少なくするのだ。

このようにACPについて、5W1Hを使って整理すると理解は深まる。特に本人の意思決定支援をする際には、本人の意思、家族の意向、医学的判断が3本柱となり、重要視したい。また地域で患者が表明したACPをつなぐことは難しいが、ICTをうまく活用することが必要だろうと述べた。

(取材 ● 田川丈二郎 / 医療タイムス No.2304)

 

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