財務省の社会保障改革への提言
~厚生労働省案より急進的な医療費削減策
2015-12-14
■後発医薬品係数、調剤体制加算の後発品割合いずれも80%を要望

財務省の諮問機関である財政制度等審議会は、今年10月9日、社会保障制度の改革案を提言しました。言うまでもなく高齢化の進展で膨張する社会保障費を抑制することに主眼が置かれており、速やかにガイドライン等を決めて実施するものから、今年度末或いは来年度末に実施や結論を出すもの、また2017年の通常国会までの法案提出や、出来る限り早期に取りまとめるものまで、具体的な改革工程が示されています。

医薬品や調剤報酬等のあり方に関しても、厚生労働省(中医協)での議論以上に具体的で、急進的な提言が織り込まれており、今後の調剤薬局のあり方を考える上で、非常に興味深いものがあります。中医協での議論の内容と、この財務省改革案を見比べて熟読すると、厚生労働省と財務省の間の激しい攻防が体感として伝わってきます。

厚生労働省と同様に財務省も「後発品の使用促進策」には執念を燃やしてきましたが、「後発医薬品使用割合目標引き上げに伴い来年度の診療報酬その他の措置」が明記されており、既に講じて来た施策の強化として「DPC病院の機能評価係数II“後発医薬品係数”について、評価上限を現状の60%から80%へ引き上げ」と記されています。

一方、厚生労働省のDPC評価分科会の資料によると評価上限が「従来の60%から70%に引き上げ」とされていましたから、財務省の提言との間には10%もの隔たりがあります。また保険薬局の「後発医薬品調剤体制加算」についても、後発品割合が現状の55%・65%の二段階の評価が、来年度改定では基準を更に引き上げることを提言しています。厚生労働省は2013年度には46.9%の後発医薬品シェアを60%に引き上げる目標を掲げていますが、財務省は更に高い目標を示し、「2017年度内に80%」という目標を示し、これに対応した措置を取ることが必要と主張しているのです。現状、50%に満たない後発品割合を2年間で、30%も上げること等、本当に可能なのでしょうか?

この他、処方せん様式の変更(後発医薬品への変更不可欄にチェックをした場合の理由の記載の義務化)や、非DPC病院に対する、後発医薬品使用割合に応じた診療報酬上の加減算措置導入等も、追加的に講じることを目指しています。

更に財務省が2017年通常国会での法案提出に意欲を燃やしているのは、(1)スイッチOTCが認められた医療用医薬品に係る保険償還率の引き下げと(2)十分定着した市販品類似薬の保険給付からの完全除外の加速化-の2点です。市販品類似薬とは湿布、漢方薬、目薬、ビタミン剤、うがい薬で、これらは完全に公的医療保険の適用から外すべきと主張しているのです。「完全除外」という言葉の使い方に、財務省の力の入れ具合が分かります。ちなみにビタミン剤については、2012年度から単なる栄養補給目的での使用は保険適用から除外されており、うがい薬に関しては昨年度からうがい薬のみの処方は、保険適用から除外されています。

保険給付の見直しに全力を注ぐ財務省視点からすると、今後、セルフ・メディケーションの大義名分の下に、スイッチOTCの促進や、市販品類似薬の対象範囲拡大等が、相当なスピードで進められていくのではないでしょうか。

もう一つ、財務省が速やかにガイドラインを決めて実施したいアイテムとして、「生活習慣病治療薬の処方ルール見直し」があります。これに関する記述として「その処方に当たっては、性・年齢、進行度、副作用のリスク等に応じて、基本的には個々の患者毎に医師が判断すべき」と医療側からの反発に対しての予防線を張りながら、「高血圧薬等を例に取ると、我が国では高価な降圧薬(ARB系)が多く処方されている。費用対効果による評価や、それに基づく処方ルールの明確化や価格付けのあり方等について、検討が必要」と、薬価の高いARB治療薬に言及し、ディオバン、ブロプレス、オルメテックの3品目が、「医薬品国内売上高上位」のベスト5に名を連ねていることを示しています。

財務省は恐らく、ARB系降圧薬の処方ルールや価格付けのあり方に関する見直しを求めて行くのでしょう。

(医療ジャーナリスト:冨井 淑夫)

 

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