Communication/コミュニケーション

薬剤師力向上特集

慢性疾患治療薬のアドヒアランス向上を目指した服薬指導とは 1

堀 美智子(ほり みちこ)

薬剤師。医薬情報研究所 株式会社エス・アイ・シー取締役/医薬情報部門責任者。一般社団法人日本薬業研修センター 医薬研究所所長。名城大学薬学部卒。同大薬学部医薬情報室、帝京大学薬学部医薬情報室勤務を経て、1998年から2002年日本薬剤師会常務理事。主な著書に『OTC薬ハンドブック』(じほう)、『ハイリスク薬説明支援ガイドブック』(じほう)など。

 治療継続率が低下しがちな慢性疾患のアドヒアランス向上を目的とした服薬指導の在り方について、医薬情報研究所 株式会社エス・アイ・シー取締役の堀美智子さんから、そのポイントとテクニックを伝授していただいた。


 アドヒアランスという言葉が最近注目され、いろいろなところで使われるようになってきています。まずは私自身がアドヒアランスについて真剣に考えなければいけないと思った背景についてお話したいと思います。

 

どんな気持ちで患者に薬を渡しているか

 仕事柄、ドクターにインタビューをする機会が多く、皆さん非常に好意的に質問に答え、指導してくださいます。しかし、以前パーキンソン病の専門医にお会いしたとき、辛辣なご批判を受けたことがありました。インタビューの終盤、パーキンソン病治療薬の副作用についてお聞きしようとしたら、ドクターの顔色が変わってしまったのです。そして「薬剤師はどうして副作用のことばかり言いたがるんだ!」と激昂されてしまいました。しばらくインタビューへ行くのが怖くなってしまうほどの経験だったのですが、あのとき言われたことを思い返すと、こういうことだったのだと思います。

 

 最初から自分がパーキンソン病だとわかって来院される方は多くありません。脚が痛くなったりして、整形外科などを受診される方もいらっしゃいます。検査をした結果、精密検査を勧められ、パーキンソン病の専門医を紹介される。患者さんは単なる脚の痛みだと思っていたのに、よく分からない病名を告げられて、不安でいっぱいになってしまいます。そんななか薬局へ行って薬と一緒に渡された紙には、幻覚妄想などの副作用に注意うんぬんと書かれている。患者さんにしてみれば、自分はまだそれほどひどくないのだから、こんなに怖い薬を飲む必要はないだろうと思ってもしかたありません。薬剤師は本当に薬を飲んでほしいと思って、患者さんと接しているのだろうか。そういう苛立ちをドクターは私にぶつけたのだと思います。“薬剤師が話すこと自体が害になる”という意味での“薬害”であってはいけないのです。

 

 当然ながら、薬は飲んでいただかなければ効きません。うちの薬局にいらっしゃる高血圧の患者さんの服薬継続率を調べようとしたのですが、数値の特定化は簡単なことではありませんでした。来局されなくなったとき、普通薬剤師はこう考えます。「血圧を正常値にしなければいけないことは、皆さん分かっているはずです。これだけ薬局があるんだから、うちに来なくなったとしても、ほかの薬局へ行ってるはず」と。果たして本当にそうでしょうか? もしもほかの薬局へ行っていなかったら、その患者さんはどうなってしまうのでしょう。
こうした現状を踏まえ、高血圧を例に生活習慣病のアドヒアランスについて薬局としてできることを考えてみたいと思います。

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