Q.第三者への継承をスムーズに進めるための留意点は?
2019-08-08
Q.
第三者への継承をスムーズに進めるための留意点は?

開業して30年が経過しました。親族の中に後継者はいませんが、幸いにも長く医院に貢献してくれている勤務医の先生がおり、彼に当院を承継してもらいたいと考えています。第三者への承継をスムーズに進めるためには、どのようなことに留意したらよいでしょうか。


A.
より客観的で、より余裕のある信頼関係を育むことが第一で、そうなると最優先のテーマも変わってくるかもしれません。

信頼関係と馴れ合いは大違い

「彼になら当院を承継してもらいたい」そう思えるということは、立場の違いを越えてパートナーとしての信頼感を、お互いに感じておられるということではないでしょうか。「任せたい」と言われれば、恐らく前向きに検討してくださることと思います。

しかし、信頼感があるからこそ、襟を正さなければならないというのも事実です。事業を承継するということは、ご本人だけでなく、奥様やご家族、スタッフの人生にも大きく影響することです。お互いの信頼感や、阿吽の呼吸ということに頼らずに、客観的に見ても「なるほど、先生は私たちのことを考えてくださっている」と思われるような関わり方をしていく必要があるでしょう。

例えば給与です。多くの医院では、勤務医の先生方の給与は、点数・患者数など実績に比例して設定されている場合がほとんどです。それは間違いではないのですが、後継者と目される先生に対しては、そこからさらに踏み込んで給与制度を考えていかなければなりません。

具体的には、例えばスタッフとのコミュニケーション費用(福利厚生費)、他院の先生方との情報交換のための会合費用(接待交際費)といった支出です。基本給とは別にプラスアルファとして、このような支出に対して予算・権限を与えることには大きな意味があります。

また、心おきなく仕事をするためには、老後やご家族のことについて不安がないということが一番です。ですので、もしもの時の保障や老後のことについて一定の予算を考える必要があるでしょう。退職金の積み立てや、万一の場合の保障を医院として確保するということです。


安心感と余裕を育む

給与は高いけれども人事権はない、他のドクターとの人脈もない、老後や万一のことは自分で考えなければならない。そのような形では、なかなか「思い」として受け止めることは困難です。

また、制度を見直された後は、少なくとも年に一度はオフィシャルな面談の場を設けて、今期の実績と来期の給与、目指す診察の姿、スタッフの育て方、内装や機器の予算などを、打ち合わせしていただきたいものです。

もしかすると、「言いたい放題、言ってくれるな」と思うシーンもあるかもしれません。しかし、それはまだ上手く伝える術を身につけていないからかもしれません。あるいは逆に、院長の気持ちを慮って、はっきりとは言えないケースもあるかもしれません。

重要なことは、思っていることをはっきり言っても大丈夫だという安心感をまず育むこと、思っていることをはっきり言われても、腹が立たないという余裕をまず育むことだと思います。

そうなると、もしかすると事業を承継してくれるかどうかは最優先の課題ではなくなるかもしれません。もっと大切なことのために、診療所の承継という一つの選択肢を提示する。そのような関係がぜひとも育まれればと思います。

(2019年8月度編集/日本経営ウィル税理士法人 医療事業部)
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