調剤薬局が担うべき「医療の国際化」への対応(2)
薬局店舗にもインターナショナルな人材を必要とする時代が到来
2019-05-23
約88%の調剤薬局薬剤師が外国人患者への対応に不安

調剤薬局の国際化への対応として、2018年に実施された興味深いデータがあります。それは、“英語版 薬のしおり”を作成する(一社)くすりのしおり協議会が、2018年6月15日から同26日の期間、「調剤薬局における外国人患者への対応の実態」を把握する目的で「全国の調剤薬局で外国人患者の対応経験がある薬剤師409名」を対象に行った調査((株)マクロミルケアネットによるインターネットリサーチ)。2018年9月開催の「第12回日本ファーマシューティカルコミュニケーション学会大会」で発表(筆頭発表者名・栗原理)されたものですが、その内容の一部をご紹介させて頂きます。

「今までに対応したことのある外国人患者の国籍」は①中国73% ②アメリカ50% ③韓国・朝鮮39% ④フィリピン34% ⑤欧州諸国23%-がトップ5。(ちなみに「不明」との回答が22%)

「外国語に対応できるスタッフの有無」は「いる」21%に比べて「いない」79%が多数を占めていました。「外国人患者の来局頻度」に関しては、「年1~5回程」が22%と最も多く、「月1~2回程」20%、「月3~5回程」17%と続きます。この来局頻度に関しては、外国人観光客が多い都市部や観光地等と、それ以外の地方ではかなりの格差があると推定されますし、処方薬だけでなく一般用医薬品の取り扱いを行なっているか否かで、結果は、大きく異なると思われます。「英語の医薬品情報が必要か」については、「思う」70%、「やや思う」25%で、約95%がその必要性を感じている一方、「外国人患者に対して英語参考情報があるか」の設問に、「ない」との回答が88%を占め、「ある」は12%に留まります。調剤薬局の外国人患者への対応は現状では、「未だ道半ば」の段階と言えるでしょう。

薬剤師と外国人患者とのコミュニケーションに関し、「外国人患者への対応に不安を感じるか」の設問に対しては、「感じる」43%、「少し感じる」45%で薬局薬剤師のほとんどが不安を感じており、「日本人患者と比べてどの程度、コミュニケーションが出来ているか」の設問には「日本人程ではないが出来ている」が30%。「最低限のことしか出来ていない」60%、「出来ていない」8%を合せると68%にも及んでいます。

2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、医療機関と同様に外国人患者受け入れの環境整備が必要なのは理解していても、調剤・服薬指導等の日常業務や、煩雑な事務作業等に忙殺され、外国人患者への対応に注力できる程の余裕がない薬局現場の実態がうかがえます。


薬局にバイリンガルの登録販売者を採用

薬局で市販される薬の種類やその内容は国によって大きく異なり、訪日外国人患者の増加に伴い、自国では処方せんなしで購入可能な薬が日本では処方せんが必要である等の理由で、薬局側が近隣の医療機関を紹介し、医療機関を受診後、改めて調剤薬局に来局する等のケースが頻発しています。

在留外国人患者も同様で、医療機関を受診し処方せんに基づき、薬を購入しても、薬剤師から理解できる言語での説明がなされないことから、アドヒアランス不全に陥り、適切な服薬に繋がらないケースも散見されます。英語以外の外国語に習熟した薬剤師がは極めて少ない現状から、薬局における「多言語化対応」等の対策に迫られていますが、小規模店舗が多くを占めることから、大病院等と比較し遅れを取っている現状があると思われます。

2018年6月に厚生労働省から発表された「訪日外国人に対する適切な医療等の総合対策」においては、一般用医薬品等に対し「多言語での情報提供の充実」が織りこまれています。また、石川県薬剤師会では「薬局における外国語応対等のツール集について」をホームページで公表する等、観光地の多い地方の薬剤師会等では、独自の取り組みが進んでいるようです。

調剤薬局の場合は、医療機関から処方せんが発行されてから、外国人患者が来局する流れになりますので、申し送りの徹底等、医療機関との連携・協力が不可欠であるのは言うまでもありません。

京都市の某中堅薬局では、連日のように多数訪れる訪日外国人観光客への対応に向け、登録販売者として最近、27歳の日系香港人女性を採用しました。彼女は香港の大学を卒業し、香港の日系企業で数年間勤務した後、来日。京都府の大学院(ビジネススクール)で学びながら登録販売者の資格を取得し、パート勤務で働いています。

中国語、英語、日本語を流暢に話すだけでなく、大学時代に第二外国語としてスペイン語を習得したバイリンガルの人材です。

当該薬局では、この女性をOTC医薬品の登録販売者の仕事に就かせ、加えて薬局内の医療通訳の役割も担ってもらっています。当該薬局では近い将来、企業本部の正社員として登用し、国際支援室のような部門を設置。グループ薬局全体の職員を対象とする英語・中国語研修等のインストラクターとして仕事をしてもらう予定です。勿論、本人の希望を考慮するのを前提に、店舗で一定の経験を積み、薬の商品知識等をつけてから後の段階になりますが、このような企業の動きを見ると、調剤薬局もインターナショナルな人材を必要とする時代が到来していることを痛感します。

次回では今回の続きとして、平成30年厚生労働省政策科学推進研究事業「外国人の受け入れ環境整備に関する研究」から、調剤薬局が係る外国人への医療支援のあり方を考えます。

(医療ジャーナリスト:冨井淑夫)

 

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