特集 「老健」が地域医療・介護を変える!?(後編)
~老健の現状
2019-03-14
■事例
管理データの見える化で在宅復帰率、回転率をキープ
独立行政法人地域医療機能推進機構 宮崎江南病院附属介護老人保健施設(宮崎県宮崎市)


2018年4月から「超強化型」を算定する宮崎江南病院附属介護老人保健施設。在宅復帰施設としての職員の意識向上、退所支援の充実、新規入所者の確保などにより高い在宅復帰率や入所利用率をキープする。

急性期一般入院科1、回復期リハビリテーション病棟、地域包括ケア病棟を有する宮崎江南病院は地域医療支援病院として地域の医療・介護・福祉への貢献を理念に掲げている。併設施設として健康管理センター、訪問看護ステーションのほか、1998年に開設した宮崎江南病院附属介護老人保健施設がある。



同院院長を兼任する白尾一定施設長は就任以来、地域包括ケアシステムへの貢献を訴えてきた。実際、老健は退院支援に力を入れてきた同院と連携し開設当初から患者の在宅復帰および在宅支援施設として機能している。

老健は新設された「超強化型」を2018年4月から算定、特にリハビリに力を入れている。老健には理学療法士 7人(うち1人兼務)、作業療法士3人(同)、言語聴覚士2人(兼務)の計12人のリハビリスタッフを配置。身体面だけでなく認知機能面へのリハビリも行う。

入所時には3カ月間ほぼ毎日実施する短期集中リハビリ、週3回の認知症リハビリと個別リハビリを提供。通所リハビリは同年9月からリハビリテーションマネジメント加算Ⅳの算定を開始した。通所リハビリの収益比率は地域医療機能推進機構(JCHO)の老健内で最も高い。超強化型への移行と利用率増にて、2018 年度上半期は2017年度と比較し、収益が入所で9.5%、通所8.8%増となった。


川越大地・主任医療社会事業専門員は「老健への入所を希望する同院の急性期患者さんがいるので、ある程度回転を促していかなければなりません。老健自体が在宅復帰施設という位置づけであり、必然的に一番上の類型をめざしました。在宅強化型からの移行はそこまでハードルは高くなかったです。在宅強化型の算定にあたって発足したプロジェクトチームでの取り組みが大きかったと思います」と説明する。


介護スタッフが訪問指導 在宅を意識したケアを提供

2012年度介護報酬改定時に新設された在宅強化型を算定すれば、試算では月200万円以上の増収となったため算定をめざしたものの当初は要件を満たせなかった。在宅復帰率を上げることで2013年2月から算定を開始したが在宅復帰率50%を維持していくことが困難な状況だった。そこで同月「在宅強化型老健プロジェクトチーム」を立ち上げた。

プロジェクトでは、老健は在宅復帰をめざす施設であるという全職員の意識改革と多職種協働による退所支援システムの構築を目的とした。老健の管理者、看護師長、支援相談員、ケアマネジャー、リハビリスタッフのほか、居宅介護支援センターのケアマネジャー、宮崎江南病院のリハビリスタッフが参加し、週1回のペースで会議を行った。

職員の意識改革として管理データの見える化を実施。在宅復帰率、回転率、要介護度4以上の割合などの目標数値を設定、毎日の数字を確認し算定状況の報告書としてまとめ、各部門の朝礼で共有した。現在でも超強化型の算定要件に改変し活用している(図)。

入所早期からの在宅復帰支援については入所前後訪問指導を積極的に行った。利用者を「期間限定入所」、「在宅復帰」、「長期およびターミナル」などとグループ分けし、それぞれに応じたベッドコントロールを実施。例えば訪問指導を行う際、在宅復帰をめざす場合はリハビリスタッフや介護スタッフが、長期およびターミナルは施設ケアマネジャーや看護師が訪問するといったことを判定会議で決めている。それ以前は施設ケアマネジャーか支援相談員が行っていたものを多職種が担うことで負担の分散を図り、訪問指導を増やすことができた。

プロジェクトに中心となって関わった別府和男・支援相談員(主任介護福祉士)は「数字で成果が見え、様々な職種が入所者の自宅に足を運ぶことにより在宅復帰への意識は高まりました。特に介護スタッフが在宅での生活を意識したケアを老健施設内で行うことができるのは大きいです」と強調する。1年半前に病院から異動してきた田中美枝・看護師長は「病院はスタッフ数が多いこともあり、組織としての決定はトップダウンで下りてきます。老健は各部署が自分たちでできることを考えて上げていくボトムアップなのでスタッフの意識の高さを感じます」と話す。

リハビリや在宅復帰機能を紹介元機関にアピール

在宅復帰を推進すればするほど新しい入所者を確保しなければ経営は厳しくなっていく。2017年に一時期、入所利用率が下がったことがあり、老健では地域への営業活動を積極的に展開している。

2017年11月から月50件を目標に支援相談員と事務スタッフなど5~6人で入所者の紹介元の病院、開業医をはじめ地域包括ケアセンター、居宅介護支援事業所への訪問を行う。超強化型の機能説明や自施設の取り組みを紹介する広報紙を作成、配布している。

「宮崎市内は高齢者施設が多く、要介護認定を受けた高齢者はいわば取り合いになっている部分があります。老健という施設の認識が十分されていないので、しっかりリハビリができて在宅復帰のノウハウがあることをアピールしていくことが必要だと思います」(川越主任医療社会事業専門員)

超強化型の算定、営業活動の強化により2018年度の入所利用率は平均94%と高い数字をキープできている。「入所者は在宅から、宮崎江南病院から、他院からが各3分の1といった状況です。かつては附属病院からが半数でしたので営業の成果だと思います。老健は入所者をただ待って受け入れるだけでは今後生き残っていけないのではないでしょうか」と別府支援相談員は強調する。

施設運営ポイント
・プロジェクトチーム結成により算定要件を維持
・訪問指導で介護スタッフを活用
・営業活動で新規入所者を確保


■まとめ
老健運営の「トリセツ」
施設外の取り組み強化で地域で求められる施設になる

2018年度介護報酬改定では介護老人保健施設の位置づけと地域のなかで果たすべき役割が明確になった。
利用者や地域のニーズに応えていくために何をすればいいのか。運営する際のポイントをまとめた。

取り組むべきポイント
・時期改定までに上の累計の算定をめざす
・入所退所時の訪問指導を実施
・リハビリテーションを強化

老健は中間施設であり、在宅復帰、在宅支援が大きな役割であること、さらに医療を内包しているという点を押さえておくことだ。入所サービスに加え、ショートステイや通所リハビリなどを強化し、必要に応じて病院と連携していくことで医療ニーズにも応える必要がある。

老健の報酬区分となる5つの類型は点数制したことで上の類型をめざしやすくなった。特に「その他」は今後なくなることを想定し今のうちから「基本型」を、「基本型」は「加算型」に上がるための運営戦略を立てていくことが欠かせない。

今回の特集で紹介した老健は「超強化型」を算定していた。そして算定に向けた取り組みとして入所前後の訪問指導を挙げている。

新規入所者の訪問を行えば入所後の支援がスムーズとなりケアの質向上にもつながる。退所時の訪問は通所リハビリや訪問リハビリなど利用者としての関わりが継続できる。支援相談員やケアマネジャーだけでなく、必要に応じてさまざまな職種がかかわることで増員なしで対応できる。

老健運営の核となるのがリハビリテーションの充実。週3回以上のリハビリとリハビリ専門職の配置が評価項目に含まれている。

福祉医療機構の介護報酬改定の影響に関するアンケート調査では収益についても聞いている。

「在宅復帰・在宅療養支援機能加算II」を算定できる「超強化型」では52.9%が前年度比で増収になったと回答。「在宅強化型」で46.2%、「加算型」でも37.5%が増収となるなど、在宅支援強化が運営の大きなポイントとなっている。

一方で「超強化型」「在宅強化型」の1割超が減収となっている。その要因として利用率が前年度比80~90%未満と低下していることが挙げられた。従来からの在宅復帰率と利用率とのバランスをとりながらの運営が必要となってくる。

(フェイズ3 2019年1月号)

 

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