特集 地域格差が広がる在宅医療資源 病院が在宅医療を担う時代へ(後編)
<パネルディスカッション>診療所と訪看だけでは在宅医療を担えない病院が専門部署を設けて地域を訪問する
2019-02-07
パネルディスカッション-
診療所と訪看だけでは在宅医療を担えない病院が専門部署を設けて地域を訪問する


司会: 日本医療経営機構理事 今中雄一氏(京都大学大学院教授)

シンポジスト: 城守国斗氏(日本医師会常任理事)
        相澤孝夫氏(日本病院会会長)
        邉見公雄氏(全国自治体病院協議会名誉会長)
        迫井正深氏(厚生労働省審議官)


今中:会場内の出席者から演者への質問や意見をお願いしたい。

出席者A:相澤先生は広域型病院と地域密着型病院を提言したが、20年後の超高齢社会では医師がケアマネジャーの役割も担うなど今と役割が違うのでは?

相澤:病院が地域密着型医療をしようと思えば、担当医師はかかりつけ医に近い役割を目指さなければいけないと思う。日本病院会は病院総合医という認定資格を設けて、育成する方針を固めた。40~50歳まで専門医として働いてきた人が、専門医の道を究めるよりも、地域マネジメントや在宅医療、介護施設での医療にかかわるという役割になると思う。 
カリキュラム作成など病院総合医の育成方法は手探りで、現在は1年目が終わったところ。残り1年あるので、その結果を見て新たにカリキュラムを作っていきたいと思っている。

出席者B:地域によって違うだろうが、在宅医療における病院の役割が見えてこない。開業医だけで在宅医療を担うのは難しいが、病院内に在宅医療の部署を設けることも必要なのだろうか。

城守:地域の診療所がしっかりしていれば、病院にはその他の機能が求められる。一方、診療所や訪問看護ステーションが少ない地域では、中小病院が訪問看護の機能を備え、その体制に対応できる医師とメディカルスタッフが必要だ。専門の部署を設けるかは、地域から病院がどんな機能を求められているかによる。

出席者C:健康経営の考え方は非常に良いと思うが、がんにかかって離職して生活が瓦解してしまう人もいるし、低所得層などは健康経営の対象にならないなど、格差を広めてしまうことにはならないだろうか。

迫井:今の指摘は国の施策として悩ましいところだと思う。フロントランナーやグッドプラクティスの奨励に対して今の指摘はもっともなことで、「人もいないし、施設もないのに どうやって取り組むのか」という疑問が提示されてくる。健康政策は健康経営の対象になる人と一般の人とを分けて、両面で取り組むべき課題だと思う。すべてをセットでやろうとすると、フロントランナーとして頑張っている企業の足かせになりかねない。バランスが重要だと思う。

今中:邉見先生、何か意見はありますか。

邉見:貧富の格差による医療受診機会の格差は問題である。国立病院も不採算部門から撤退するなど、経世済民の考え方に逆行する流れがある。それ以上に大きな問題は医師の偏在だ。地域の偏在、診療科の偏在、勤務医が減ってビル診療所が増えている業態偏在の解決なくして、日本の医療は輝けないと思う。 
また、在宅医療の提供体制は、大都市で若い開業医が多い地域では医師会に任せておけば良い。ところが地方では有床診が無床化したり、後継者がいなかったりするので、病院が在宅医療をやるしかない。

迫井:在宅医療に対して、病院は地域の医療ニーズに合わせて取り組んでいただきたい。例えば地域に診療所や訪問看護ステーションがたくさん開設されているのに、病院が利益のために、診療所や訪問看護ステーションをかき分けて在宅医療に進出することは望ましくないと思う。同業者との関係を配慮することが大切である。

相澤:これからの病院経営は診療報酬だけに頼ることはできないので、地域に出ていって診療報酬以外で稼ぐ必要がある。そういう時代になった。急性期病床が減っていけばマンパワーに余裕が出るので、それを地域に投入すれば良いと思う。

城守:退院後の受け皿がないと急性期病床を削減できない。看護と介護にかかわる在宅サービスの整備が必要だろう。

(取材:小野貴史 / 医療タイムス No.2381)

 

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