特集 医療費はどれだけ増えるのか(3)
焦点はハイブリッド型社会と健康経営
2018-12-05
【シンポジウム】
健康経営の実践で明らかに業績に差がつく
座長 慶応義塾大学大学院教授 中村洋氏
シンポジスト 西村周三氏 松本吉郎氏 江崎禎英氏

健診を受けないと賞与減額インセンティブは有効でない

中村 今日の講演は大変勉強になった。先生方からほかの先生に意見はあるか。

西村 欧米では病院で亡くなる場合、施設で亡くなる場合、自宅で亡くなる場合、それぞれどういう治療を行うかという研究が進んでいる。終末期医療の医療費はがんと非がんとではかなり違うと聞いている。「何とか助かる」と思ってかけた費用と「無理だけど何かやろう」と思ってかけた費用の違いなど難問山積だ。ただ、終末期の問題は医療費だけでなく、ACPも大切。強調したいのは抽象論でなく具体的な事例について、私たちはどういう死に方をしたいのかを学ぶ手立てを医師会に取り組んでいただきたい。

松本 国民目線で見たときに医療費の使い方について厚労省に検討会ができて、日本医師会も発案にかかわり、委員を派遣した。江崎さんから国民のための視点について話があれば聞かせてほしい。

江崎 国民の側がどう変わらなければならないのかは、すごく重要なポイントだ。実は私が経済産業省と厚生労働省のポストを兼務しているのは奇跡のような話で、この2つの省は相反するような歴史を歩んできた。経産省は戦後復興から資源のない日本で国民が食べていかれるように「売れるものは売ってくれ、稼げるものは稼いでくれ」と後押ししてきた役所だ。厚労省は「金のために身体を壊してどうするのか」という立場の役所である。だから健康を考えると経営はうまくいかず、経営を考えると健康はうまくいかなかったが、仕方がなかった。

仕事のために身体を壊して医療費を使っている状況をどう改善するかがポイントで、経営者自身に「従業員の健康を考えないと経営は立ち行きませんよ」と。健康経営を実践している企業はホワイト企業としてよい人材を採用できるようになり、健康経営を実践していない企業に比べて明らかに業績に差が出ている。健康診断を受けないと本人と上司のボーナスをカットする企業も出てきた。インセンティブで人は動かない。受診しなければ出世させないとすれば変わる。このようにして企業文化を変えながら国民の側から健康とすることだ。


ワクワクドキドキしながら健康になる方向を目指す

江崎 ここからは経産省の分野だが、健康になることを目的にせず、気がつかないうちに健康にしてしまう。例えばフィットネスクラブにイケメンのインストラクターがいれば女性会員が集まって、楽しみながら健康になっていく。我慢するのではなく、ワクワクドキドキしながら結果的に健康になっていくことを目指したいと思う。

松本 いかにして国民の側から健康になっていくか。リテラシーが非常に大切だ。いわゆる健康食品は本当に健康なのか・・・とか。健康経営については2年前に厚労省で健診の見直しを行った。従来は「会社側は60歳や65歳までの健康は考えるが、退職した後の健康までは考えない」という考え方の会社もあった。しかし健康経営の推進のおかげで、会社側の考え方が変わってきている。私は、健康経営を非常に革新的は取り組みとして評価している。

西村 健康について個人で考えるのか、集団で考えるのか、地域で考えるのか。職場で集団として考えるのが健康経営の意義だと思う。1人ひとりの責任が表に出過ぎた社会を修正する意味で健康経営は意義があると思う。

(文:小野貴史、写真:本誌編集部/医療タイムス No.2376)

 

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