特集 医療の使命を問い直す(中)
「国民の健康会議」が投げかけた課題
2018-11-13
【講演2】
いつでも看護師に電話をかけられる在宅患者が安心できる状況づくり
福岡赤十字訪問看護ステーション・福岡赤十字病院 副看護部長 井手 麻利子 氏

福岡赤十字病院に併設されている福岡赤十字訪問看護ステーション(機能強化型I)は1997年4月に開設された。管理者1人、看護師8人(ケアマネージャー兼務3人)、事務クラーク1人の体制で運営され、居宅介護支援事業所も開設している。

福岡赤十字病院だけでなく、多くの病院・診療所と連携を取っている。2017年度の利用者数は医療保険508人、介護保険1,090人。患者像は、末期がん患者、麻酔管理・外来科学療法中心の患者、人工肛門増設後の患者、慢性疾患患者(糖尿病、心不全、腎不全、認知症など)だ。年間在宅看取り数は20~40人で推移。研修や実習では、日本赤十字九州国際看護大学、福岡県看護協会(訪問看護養成講習)、認定看護師教育課程臨地実習(緩和ケア)などを受入れている。

がん看護専門看護師の資格を持つ管理者の井手麻利子氏(福岡赤十字病院副看護部長)は地域包括ケアシステムを取り上げた。


「ここで示した図以外にも、地域包括ケアシステムの組み方はいろいろあると思う(図参照)。地域ケアで大事な存在は民生委員やボランティアで、そういう人たちから具合の悪い人がいるという連絡が病院や地域包括支援センターに入り、訪問看護に入ってもらえないだろうかと相談される。いかに地域の人たちが周りを見ていくかが大切である」

患者とのかかわり方のポイントは安心の提供だという。

「福岡赤十字訪問看護ステーションは24時間対応なので『いつでも相談していいよ』と患者さんに話している。そう話すことによって、患者さんは安心する。いつでも看護師が電話に出てくれるという安心感を持ってもらうことがとても大事だ」

訪問看護師は病棟看護師と違い、患者の生活実態が見える。退院後、多剤服用や低栄養に陥る高齢患者が多いので、退院して不安な場合は訪問看護指示書の発行を主治医に依頼することを勧めた。さらに、福岡市では訪問診療医が少なく、訪問看護ステーションが医療機関に訪問を依頼しても断られる場合が多いが、患者が依頼すると応じてくれることもある。

会場内には一般市民も多く出席していたため、井手氏は「患者さんが主治医に向かって『先生に訪問診療をお願いしたい』と指名すると、応じてくれる医師も中にはいるのではないだろうか」と助言した。


健康に老い、健康に病気になり、健康に死んでいく
龍谷大学大学院教授 田畑 正久 氏

埼玉医科大学教授の秋月龍師はこう語っている。

「医療は人間の生老病死の四苦を課題にしている。この四苦は仏教が2,500年間取り組んできたもので、解決の方法を見いだしている。同じことを課題とするのだから、医療に携わる者はぜひとも仏教的素養を持ってほしい」

WHO(世界保健機構)では、身体的、精神的、社会的の他に健康の要素の4番目にスピリチュアルを加える議論がされた。スピリチュアルの仏教的な意味は(1)人間として生まれた意味(2)生きる事の意味(生きることで果たす役割・使命・仕事)(3)死んでゆくことの物語(安心、お任せ)(4)罪悪感からの解放‐である。

宗教は「存在の満足」に導く世界である。全人的医療とは、科学的客観性を尊重した医療と物語(人生観、価値観、死生観など)の組み合わせである。健康は、老化、病気、死の反対概念なので、定義の変更で「健康に老い、健康に病気になり、健康に死んでいく」といえる。(談)

(下)へつづく

 

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