動き出した「介護医療院」~積極的な「転換支援策」導入と同時に、3年後に予想される大胆な再編
厚生労働省は既に近い将来の「梯子外し」を考えている?
2018-11-08
前回までは、介護報酬の「移行定着支援加算」等を始めとする新設の各種加算や、届出病院のケーススタディによる広報活動等の動きを先に紹介したが、ここからは、「介護医療院」の具体的な施設要件や入所者要件の内容等について検証したい。

要介護者の「長期療養・生活支援」を担う介護医療院には、大きく分けて“介護療養型医療施設・機能強化型(A・B)相当(I型)”と、“「転換型」介護老人保健施設相当以上の(II型)”の2つのタイプがある。(II型)は現状、「転換型」老健でなければ認められないとされる。要するに、W改定の介護・診療報酬の転換支援策が導入されたとは言え、現存する介護老人保健施設の全てが「介護医療院」(II型)へ移行することは出来ないし、厚生労働省もそれを望んではいない。なぜなら、介護老健から転換することにより大幅増収になる介護医療院が急増すると、介護費用が膨張し、医療・介護費用削減を目指す国にとっては困った事態になる。国は転換を誘導すると同時に、その“さじ加減”が大事になる。恐らく今後、政策誘導により、急速に増える介護医療院に対し、同省は既に近い将来的の“梯子外し”を考えている筈だ。「移行定着支援加算」を算定出来るのが2018年4月から3年間に限定されることを踏まえると、同加算が廃止される3年後に、(恐らく増加するだろう)介護医療院の大胆な再編が導入されることが予想される。

さて、施設基準では医師に関して、(I型)が「48対1」、(II型)が「100対1」。いずれも基本は病院と同様に、全体で3名以上の医師が必要とされているが、宿直を行う医師を置かない場合は「1名以上でも良い」とされる。ただ、全床(II型)の介護医療院である場合は、宿直なしでも問題はない。加え、「医療機関と併設した介護医療院で同一敷地内の医療機関の医師が、速やかな診察を行なえる体制の確保されている」場合や「都道府県が当該体制を確保していると判断した」場合は、宿直を要しない。現状の規定では、当該施設や自治体に判断を委ねるというのだから、宿直要件は非常に曖昧に見える。

いずれにせよ、(II型)の場合は医師の増員なく導入可能な施設が多いと思われるので、介護老健の転換し易い制度設計になっている。

筆者が7月に転換して直ぐの「介護医療院」4施設を取材した際にも、現場の事務職員らは転換後の運営に関して分り難いことも多く、管轄する自治体と常に連絡を取り合って相談していた。制度がスタートして3か月の7月段階では、「県下第一号」の介護医療院が大半を占め、それらの多くが各自治体と常時、連絡を取り合いながらの“手探り”の運営を強いられていたように思える。


療養環境は「自宅」と同じ生活施設の扱い?

看護職員は(I型)・(II型)のいずれも「6対1」の基準で、介護職員は前者が「5対1」~「6対1」。後者が「6対1」~「4対1」で、1人当たりの療養室面積はいずれも8.0m2以上と、介護老人保健施設と同じ。従来、6.4m2以上で運営されていた介護療養型医療施設は、4人部屋を3人部屋にしてスペースを確保する等の一部、リニューアルが必要になるケースも出てくる。

療養環境面で重視されているのが、「自宅」と同様の生活施設としての位置づけで、従来の介護療養型医療施設や介護老健施設は、多床室の場合、カーテンだけで区切る「個室化」でも可とされてきた。介護医療院は、それでは駄目でカーテンと家具、パーティション等を組み合わせて室内を区分し、プライバシーを確保出来るスペース作らなければならない。従来の療養環境と全く同じで、パーティションを付けるだけで「なぜ、自宅と同じなのか?」と疑問を感じる向きも多いだろう。筆者が取材した中にも、利用者の背よりも随分と低い板をベッド間のカーテンによる仕切りの間に挟んで、パーティションとしての扱いをしている施設も見られた。この点については、各都道府県の恣意的な判断に任されているようにも感じる。

ケアミックス型等、医療機関と併設する介護医療院は併設する医療機関との設備の共有が認められている。診察室、臨床検査施設、処置室、エックス線室等は共有可能だが、病室・療養室の共有は不可。新築の施設の場合は、診察室の共有が原則、不可とされているが、個々のケースにより認められる場合もあり、この点もグレーゾーンになっている。この他、機能訓練室は「40m2以上」と規定されているが、レクレーションルームは「十分な広さ」、談話室は「談話を楽しめる広さ」と抽象的な表現だ。

食堂に関しては、従来の介護療養型医療施設と同じで「入所定員1名当たり1m2以上」と施設基準で規定。従来の介護老健は「1名当たり2m2以上」の規定だから、介護老健よりも狭いスペースで良いことになる。


5%減算措置ある特別サービス費は4つの新設加算算定が不可

肝心の介護医療院に係る介護報酬だが基本報酬は、(I型)(II型)共に(サービス費I~III)までの三段階に設定。(I型)のサービス費Iは前出の「療養機能強化型A相当」でサービス費II・IIIは「療養機能強化型B相当」になる。

(I)型のサービス費I・IIは介護職員「4対1以上」の基準で、サービス費IIIは「5対1以上」の基準、但しサービス費IIIは医療機関に併設した介護医療院で入所19人以下の場合、基準緩和され、「6対1以上」でも可能に。そして、(I型)の場合、最上位ランクのサービス費Iは入所者要件として、(1)「重篤な身体疾患を有する者及び身体合併症を有する認知症高齢者の占める割合」が「50%以上」(2)「喀痰吸引、経管栄養、インスリン注射が実施された者の占める割合」が「50%以上」(3)「ターミナルケアに該当する者の割合」は「10%以上」が要求されている。しかし、サービス費II・IIIは(1)「50%以上」(2)「30%以上」(3)「5%以上」‐のいずれかが達成されていれば良いので、サービス費Iに比べて、ハードルは下がる。サービス費IIとIIIの違いは介護職員配置だけなので、サービス費IIIの介護医療院が努力して「4対1以上」をクリア出来ればサービス費IIにランクアップが可能である。

そして、従来の介護療養型医療施設との大きな違いとしては、「生活リハビリの実施」と「地域貢献活動の実施」が要件として義務付けられていることだ。

(II型)に関しては、よりシンプルで介護職員配置「4対1」、「5対1」、「6対1」の基準であり、各々サービス費I・II・IIIの評価として差が付けられている。

サービス費I~IIIまで全て、前出(1)「喀痰吸引等の割合」が「15%以上」、「認知症生活自立度Mの占める割合」が「20%以上」、「認知症高齢者の日常生活自立度IV以上」の占める割合が「25%以上」、更に「ターミナル体制のあること」のいずれかの入所者要件に適合していることが条件なので、(I型)に比べて要件緩和され、算定し易い内容となっている。前述したように、3年後の介護報酬改定で予想される再編に関しては、現在はハードルが低く設定されている(II型)の入所者要件に、メスが入るような気がしている。

介護医療院の入所者要件が満たせない場合の基本報酬としては、「I型特別介護医療院サービス費」、「II型特別介護医療院サービス費」と呼ばれるものも作られた。

所定単位の100分の95、要するに5%の減算が行なわれる他、「移行定着支援加算」等、介護医療院にだけに創設された4つの高単位の介護報酬を算定することが出来ない。

その4つの新設項目とは、「再入所時栄養連携加算」(400単位/回)、「緊急時施設診療費(緊急時治療管理)」(511単位/日)、「重度認知症疾患療養体制加算」、及び「移行定着支援加算」(93単位)。介護医療院に入院(入所)する患者・利用者で、これらの新機軸を算定可能な患者が多ければ多いほど、増収が期待される。

さて、次回では「介護医療院」の最終回として、病院等、医療保険施設との連携に係る診療報酬項目や、介護医療院(II型)の登場で方向性の見え難くなる既存の介護老人保健施設の行方等について考えてみたい。

(医療ジャーナリスト:冨井 淑夫)

 

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