特集 医師発信の医療機器開発(中)
アイデア発掘の必要性と在り方とは
2018-11-06
【産業界の立場から】
オールジャパンでの医療機器開発プロジェクトを実施

最先端技術開発の重点は治療系開発など5分野に

公益財団法人医療機器センター理事長の菊地眞氏は、これまでの来し方の多くを医療機器開発に費やしてきたという。現在でも国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)プログラムディレクターなどを兼任している。

菊地氏は冒頭、2019年度予算概算要求に言及。オールジャパンでの医療機器開発プロジェクトが掲げられ、文部科学省、経済産業省、厚生労働省の3省が一体となって日本の医療機器開発に取り組んでいくことを示した。つまり文科省は川上側の基礎的な研究を実施、それを経産省がモノとして作り、実際に医療現場に普及させるのが厚労省という、一貫して関わるという構図になっている。

その上で現在のAMEDによる医療機器開発・実用化は大きくいえば、(1)医工連携による医療機器開発(2)世界最先端の医療機器開発‐の2本柱で行われているという。(1)は、臨床現場からのニーズに基づいて地域内が連携し、場合によっては後発であったり、改良だったりするが、AMEDが積極的に支援をしていく。(2)は、大企業を中心とした複数企業などが開発主体となり、日本が強みを持つ診断技術やロボット技術などを活用した最先端の機器開発を目指すという。

現在、医療機器の市場規模の変化を見ていくと、治療系の医療機器が弱いと菊地氏はいう。そのためAMEDが定めた最先端技術開発の重点5分野でも、▽手術支援ロボットシステム▽人工組織・臓器▽低侵襲治療‐と治療系開発が3分野に及ぶ。その他、▽イメージング(画像診断)▽在宅医療機器‐が続く。

「治療系の先端技術開発はなかなか難しく、海外も含め2000年以降開発され実用化されたものは数えるしかない」(菊地氏)

そのため菊地氏は、在宅医療にかかる機器開発も同じくらいのウエイトで行うべきと提案した。

2017年、AMEDには菊池氏を座長とする調査会が発足した。そこでは、これからの医療の在り方や医療機器開発の方向性を検討した。これまでの開発では行政の担当者が変わると引継ぎがされず、議論が最初から行われることが多かった。それでは進歩がない。せっかくAMEDができたのだから、全体のベースを作っていくべきではないかという視点から検討が行われた。事実日本には、医療機器開発にかかわるセンターがなく、情報の集約化がされていなかった。海外に比べると、これは相当ハンディキャップとなっており、AMEDの在り方に期待するとした。


求められる臨床・基礎系医学会の総意としての『骨太の提案』

続いて菊地氏は、今後に期待される医療機器開発・製品について言及した。菊地氏によれば、それは誰に聞いても▽機器の超小型化▽インテリジェント化▽患者への利便性向上▽特殊ニーズを抱える人への対応‐を挙げるという。

ここ数年の間でも、リードがない「カテーテル心室内留置ペースメーカー」(超小型化)、「経皮的冠動脈形成術<PCI>の遠隔操作ロボット」(インテリジェント化)、「カテーテル検査不要の非侵襲検査」(利便性向上)などの医療機器が承認された。これらは海外企業による開発が多いというが、いずれにせよ先に挙げた4つのファクターに注目して開発が進められているということだ。

さらに菊地氏は今後、既存治療法の改良や既存治療法の未知の分野への応用などは、まさに臨床現場のニーズから生まれる医師主導型の開発になるのではないかと指摘した。一方で、菊地氏が課題として挙げたのは、現在治療手段が存在しない初めての研究開発だ。

「これまでAMEDに応募された医療機器研究開発課題は、ほぼ個人、チーム発案によるものだった。臨床・基礎系の医学会から総意として挙げられる『骨太の提案』がない」(菊地氏)

例えば日本医学会の総意として、今後の医療機器開発の方向性を示すことが求められてくるのだ。

菊地氏は、これからの機器開発は、予防医学中心の家庭用・生活用医療機器に意識を向けるべきだという。その例として示したのが、自動体外式除細動器(AED)だ。2004年から非医療従事者によるAEDの使用が認められ、救命率が格段に高まった。

同様に、「高齢社会の到来とともに、病院仕様から在宅仕様に仕向けなければならないだろう」と菊地氏は述べた。


医師のアイデア具現化を産業界が支える

一般社団法人日本医療機器産業連合会会長の渡部眞也氏は、産業界の立場から、ニーズ創出・支援化の話をした。

日本の医療機器産業の市場規模は2.8兆円だが、8,000億円の輸入超過となっている。その上で活動している企業を見ていくと、▽世界のTOP50に入る、グローバルに展開する企業群▽日本の医療を支える中小企業群▽大手企業の新規参入、ベンチャーの活性化に代表される新たな担い手‐の3つのカテゴリーに分かれるとした。ただ日本の医療機器のトレンドは、新規承認・認証件数が減少傾向にあり、今後の再活性化を期待しているという。

渡部氏は臨床現場にとっての医工連携の意義を、▽臨床現場から大きな研究業績が出せる▽産業振興系の公的資金やライセンス収入が獲得できる▽自分の欲しい医療デバイスを実現できる▽臨床現場の改善意識が高まり、医療の質・安全が向上する▽臨床と研究の両方のマインドを併せ持つ医療者を育成できる▽臨床立脚型の医学の実現につながる‐などを挙げた。

その上で渡部氏は、実際に医師自身がオンライン診療システムの会社を設立し、医工合わせた事業を創生した医師主導モデル、複数社のコア技術を束ね世界№1の内視鏡8Kを開発した先端エコシステムモデル、製販企業がものづくり企業をリードし、メニエール病の治療器を開発し事業化した製販ドリブンモデルなどの成功事案を紹介。その成功のカギを、臨床現場のど真ん中にいるドクターの参画が必要とし、まさに「医工連携は臨床の現場から始まる」(渡部氏)。また医療機器ビジネスを熟知した医療機器メーカーや製販企業のノウハウの活用を推奨した。
最後に渡部氏は、「臨床現場に根差した医師のアイデア具現化を産業界が支えることが大事だ」とし、そのために必要な人材を、「起業家マインドがある医師、工学に理解を示す医師、薬機申請・保険収載など先々のことを考えている医師、グローバル展開も考える医師」と強調した。

(下)へつづく

 

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