『骨太の方針2018』で示されたエビデンスに基づく費用対効果と、調剤薬局におけるフォーミュラリー導入の可能性(2)
地域包括ケアシステムの中で「かかりつけ薬局」が主導するフォーミュラリーの推進
2018-09-14
フォーミュラリーとDPCの共通点は医療費をコントロールする仕組み

筆者は2018年6月初旬、調剤薬局業界のリーディングカンパニーである日本調剤(株)を取材、その際にフォーミュラリー(医療機関において患者様に対して、最も有効で経済的な医薬品の使用における方針)に関して、様々な情報提供を頂きました。

日本調剤(株)ではフォーミュラリーの定着に向けて、企業全体で取り扱う約1,300万枚の処方箋をデーターベースにした研究に取り組んでおられましたが、フォーミュラリーの導入は薬剤師の薬学的知見を発揮させ、臨床薬剤師の育成にも繋がることや、エビデンスに基づいた医薬品の適正な使用により、国の命題である医療費の抑制にも寄与すること等が理解出来ました。その時に提示頂いた資料の中で、「国保・市町村単位で適切なフォーミュラリーの仕組みを作ることや、健保組合が医療機関等を募って、実際にフォーミュラリーを運用する」等、今後の具体的な取り組みの可能性にも言及されていました。

これは極めて重要な視点で、フォーミュラリーは「医薬品使用の標準化」とも言えるものです。病院の入院医療におけるDPC(診断群分類包括評価)と同様に、医療機関や薬局において求められる標準的薬物治療を国全体で普及・推進し、年々膨張する薬剤費の伸長に“歯止め”をかけることに繋がるのです。その流れを促進するカギを握るのが、地域住民の服薬情報を把握・管理する「かかりつけ薬局」、要するに民間の調剤薬局になるわけです。


医薬品の評価が出来ない薬局は淘汰される!

現在、厚生労働省は医療費の抑制に向けて地域医療構想の推進や地域医療計画等によって地域毎、二次医療圏毎の機能別病床数の管理を進めています。行きつくところは、エビデンスに基づく地域毎の医療費のコントロールであると伺えます。

国が進める地域包括ケアシステムも大義名分としては「地域で自分らしい暮らしを人生の最終段階まで続けられるよう住まい・医療・介護・福祉を一体的に提供する仕組み」と位置づけていますが、本音では「地域毎に医療・福祉・介護コストの効率化を進めるための、これらサービスの再編成」とも言い換えられます。

厚生労働省は、今後の高齢化の進展で、膨れ上がる社会保障に係るこれらコスト削減のために地域包括ケアを活用しようとしている訳ですが、「かかりつけ薬局・薬剤師」の導入や、更にフォーミュラリーの定着も、近い将来は各地域の総額薬剤費をコントロールする方向に向かうと予想されるのです。実際に筆者は、厚生労働省・元キャリアから「2017年の段階で約57,000件あった調剤薬局を15,000件程度に縮小し、全ての調剤薬局機能を“かかりつけ”薬局に収斂。地域包括ケアシステムの日常生活圏に一つずつ位の割合で整備していくことを目指している」と聴いたことがありますが、薬剤費の削減と同時に“マーケットの縮小”をも目論んでいるのです。これは、厚生労働省よりも財務省の目指してきたことですが、厚生労働省の役人は長年にわたり医薬分業政策を推進し、調剤薬局を「儲かるビジネス」として利益誘導してきた経緯があります。なので、表立って「調剤薬局をつぶす!」とは言えませんが、本音は財務省と変わらないと思います。

どのような調剤薬局が淘汰されるのかと言うと、「かかりつけ薬局」の機能が果たせなかったり、医薬品の評価まで出来る薬剤師が「不在」の薬局です。

もちろん、薬剤師が「医薬品を適正に評価する」仕組み作りは重要で意義のあることですが、地域包括ケアシステムの日常生活圏の中でフォーミュラリーがどのように機能するのかは今後、非常に重要な課題です。

さて、前述の資料の中では、国保・市町村単位でのフォーミュラリーの作成や、健保組合がクリニック等を募ってのフォーミュラリーの運用等についても言及されていましたが、これは調剤薬局の近い将来の“あるべき姿”とも読み取れます。

要するに、健保組合が組合員に「最も有効で低コストな薬剤」を推奨する仕組み構築において、地域包括ケアシステムの日常生活圏の中で「かかりつけ薬局・薬剤師」が健保組合の指定する病院や診療所と連携し、フォーミュラリーを活用しながら、患者に有効・最適な薬剤を提供していく。近い将来、地域包括ケアシステムにおけるフォーミュラリーは、「かかりつけ薬局」が管理するシステムの中で、導入が進められて行くのではないでしょうか。

ここ数年“身も蓋もない”薬価のマイナス改定、調剤医療費の抑制が進められる中で、調剤報酬や診療報酬における経済誘導等で、薬局におけるフォーミュラリーの普及が実現する日は、遠くはないと感じています。

(医療ジャーナリスト:冨井淑夫)

 

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