特集 衝撃の診療報酬改定 危機回避のポイントはここだ!(5)
知らない診療所は危ない!!
2018-05-23
【解説 介護報酬改定】
診療所のための介護報酬改定対策
介護事業の方向性を知りWin-Winの関係づくりを

2018年度介護報酬改定は地域包括ケアシステムの構築を御旗に掲げ、自立支援や重度化防止、サービスの適正化がテーマになった。全体ではプラス0.54%となったが、今回の介護報酬改定は、診療所経営にどのような影響を与えるのか。小濱道博・小濱介護経営事務所代表に解説してもらった。


サービス種別を問わず提供時間と対象を見直せ

2018年度介護報酬改定は0.54%のプラスとなったが、同じサービスでも提供時間や提供形態によって明暗が分かれている。なお、従来散見された事業所の移転や利用者の施設間移動などで高い点数を算定するといった対策は通じなくなってきている。

大幅な提供時間の変更や利用対象者の見直しも考えていく必要がある。とはいえ、急な変更は混乱を招くため、中長期的な計画で進めていくことが肝要だ。そのうえで今回の介護報酬改定で、診療所が新たにできるようになった事業を整理すると次のようになる。

・看護小規模多機能型居宅介護について、個人の開業医でも許認可を受けることが可能
・食堂がなくても有床診療所の短期入所療養介護の許認可を受けることが可能
・訪問リハビリが病院、診療所、老健に限って常勤専従配置となった医師の兼務が可能(実質的に独占業務になった)。
・介護医療院の創設


ケアマネとの連携強化に加え特養との関係づくりも重要

今改定では介護と医療の連携を強化するさまざまな仕組みが導入されている。たとえば、診療報酬改定で特別養護老人ホームにおける看取りや緊急時対応時の診療報酬が整理された。これによって、介護報酬の看取り加算などとの整合性が図られている。末期の悪性腫瘍患者への特養への往診に対する診療報酬も充実しており、診療所の先生が特養に行きやすくなったと言えよう。介護と医療は双方がwin-winとなる関係が構築できる環境が整いつつある

その一環として、主治医とケアマネジャーとの連携強化も進められた。在宅療養中の患者を含めて、多くの高齢者にとって最も身近な在宅サービスである訪問介護のサービス提供のなかで、現場の介護職が口腔関連と服薬で気づいたことを、ケアマネジャーを通して主治医に報告することが運営基準で義務化されたのである。また、医療系サービスをケアプランに位置づけた場合、意見を求めた医師にケアプランの控えを交付することも義務となり、在宅で亡くなった末期の悪性腫瘍患者に対してケアマネジャーが月2回の訪問を行って主治医に報告する加算も新設された。入退院時のケアマネジャーと病院の情報の提供や取得関連の加算も充実している。

今後はいかに地域でケアマネジャーと連携を取りながらリーダーシップを発揮していけるかが診療所のサクセスポイントとなる。簡単に整理すると、診療所はケアマネジャーとの関係の構築、さらには介護施設などへの往診、訪問診療も積極的に展開すべきと言える。これらは、診療報酬点数上の収益はもちろん、地域との密な関係づくり、患者のリアルタイムの情報を診療所に居ながらにして集約させることができる環境構築にもつながる。医療の質と生産性も上げることができるというわけだ。介護との連携を通じて、診療所の経営は新たな時代に向かうのだ。
なお、参考までに主な在宅関連の介護事業のポイントもまとめておく。介護事業を展開されている診療所はもちろん、連携相手の事情を把握するという観点からも押さえておいていただきたい。


2018年度介護報酬改定 在宅関連サービスの主なポイント

【訪問介護】
身体介護中心への移行が重要

4月以降、生活援助は、資格がなくても一定の研修受講者であれば提供可能になった。今回、研修期間の関係から大幅な引き下げは見送られたが、次回は基本報酬の大幅な引き下げ、あるいは市町村事業への移行が有力。訪問介護は、身体介護中心への移行が急がれる。


【訪問看護】
重度者には手厚い評価

訪問看護はほぼ現状維持。ただ、訪問リハビリは前回改定でセラピストと看護師の報酬が統一されたが、今回再び差がつけられた。看護師による訪問看護計画書と報告書への関与と、定期的な利用者への家庭訪問による評価が義務化されたからだ。この手間を考えると実質的にはマイナスと言える。さらに予防報酬が分離されたが、これも手間を考えると採算面で厳しい。

このように軽度者へのサービスは厳しくなった半面、本来業務である重度者ケア、特にターミナルケアは手厚い評価がなされている


【通所介護】
通所介護は長時間が中心

通所介護は基本報酬据え置きで時間区分が変更された。時間が短いほどマイナスの幅が大きい。報酬体系から読み取ると、厚生労働省は通所介護に、最低でも5時間以上のお預かりサービスを実施したうえで、機能訓練を提供して、さらに結果を出すことを求めていると言える。


【通所リハビリ】
通所リハは短時間の方向

通所リハビリは介護事業経営実態調査で収支差率が5.1%と高かったため、4時間以上の時間区分が2時間単位から1時間単位に細分化され、大きく下げられた。特に4時間以上5時間未満と6時間以上7時間未満は通常規模、大規模ともに約10%のマイナスだ。

一方、2~4時間の時間区分は現状維持。通所リハビリには短時間のリハビリを求めるという方向が明確となった。ただし、6時間程度のサービスを提供しているところが、3時間程度への急激な変更は難しい。この対策としては短期(4月から)、中長期(3年後)を見据えた2本立ての対策が必要だと考える。

短期的な対策としては時代の流れと逆行するが、提供時間を6時間から7時間に移行し、新設されたサービス提供体制加算を算定し現状維持に近い収入を確保する。さらにリハビリテーションマネジメント加算II・IIIの算定で経営を安定させながら、中長期のスパンで短時間への移行に踏み切るタイミングを熟考する。

さらに100人に1人のセラピスト配置を、25人に1人とする場合、リハビリテーション提供体制加算が新設された。また、予防の報酬は下げられたが、新設された予防リハビリテーションマネジメント加算と予防生活行為向上リハビリテーション実施加算を算定すればプラスになる。

訪問サービスとの連携で、ADLの向上を共通の目標に据えて、通所リハビリのセラピストのリーダーシップのもと、施設と居宅両面で、より高いリハビリの成果を上げていくことができるため、訪問サービスと連携したリハビリ提供も視野に入れたい。通所リハビリ、訪問リハビリのセラピストには地域のリハビリのリーダーとしての役割が期待されている。


【居宅介護支援】
ターミナルケアを高く評価

医療機関併設の居宅介護支援事業として注目したいのは、ターミナルケアマネジメント加算である。在宅で亡くなった末期癌の患者に、通常月1回のモニタリング訪問を2回実施し、その状況を主治医と居宅事業者に提供した場合に算定できる。医療機関併設のケースや、近年注目されているホスピス機能を持った癌・難病患者に特化した高齢者住宅などでは十分算定可能。現実的に、医療機関向けの加算だ。

●小濱道博
小濱介護経営事務所代表。一般社団法人日本介護経営研究協会(NKK)専務理事、一般社団法人介護経営研究会(C-SR)専務理事、介護事業経営研究会(C-MAS)最高顧問。介護事業コンサルティングを幅広く手がけ、全国で年間200件以上の介護事業経営セミナーを行う。全国各地の自治体の介護保険課、介護労働安定センター、社会福祉協議会主催等での講師実績も多数


(司会=編集部 写真=関口宏紀/クリニックばんぶう 2018年4月号)

 

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