重度の患者が在宅で生活できるよう社会資源を最大限に活用する
在宅サポートながさきクリニック(北九州市小倉北区)
2018-04-05
POINT
(1)医療・介護・福祉諸制度を熟知し、患者の生活を支える
事務職員だけでなく、医師や看護師も諸制度に精通。限られた社会資源を最大限に活用して患者の在宅療養生活を支援。

(2)他事業所との強力なネットワークで困難事例を受け入れ
地域の信頼できる事業所とのネットワークで、困難事例もチームで受け入れる。訪問看護やヘルパー、病院医師が仕事をしやすいように配慮し信頼関係を深める。

(3)患者の生活背景を考えた、一歩踏み込んだ積極的な支援
「人に役立つおせっかい」をモットーに、患者や家族が抱える問題に対し、医療の枠を超えて危機介入支援を行う。


医療・介護・福祉諸制度を学び在宅療養生活をサポートする

在宅サポートながさきクリニックは、毎月約120人の在宅患者の訪問診療、年間約25人の在宅看取りを行う機能強化型の在宅療養支援診療所だ。在宅医療を主とし、外来は主に予約制としている。

特徴は長崎修二院長の「0歳から100歳まで」という方針に基づき、年齢を問わず、困難事例も断らないこと。患者の8割弱は高齢者だが、それ以外にもAYA世代のターミナル、小児がん、重度障害児など幅広い患者層に対応している。

こうした患者の在宅療養を支えるためには、医療・介護・福祉などさまざまな社会資源の利用が欠かせない。患者一人ひとりが適切なサービスを利用できるよう、院内全体で、医療・介護・福祉の諸制度の理解を深めるための勉強会を実施している。医師や看護師を含めたスタッフ全員が参加。「人に教えることができてこそ、理解が深まる」との考えから、勉強会では全員が持ち回りで講師を担当している。

長崎修二院長は「疾患や状態によって、利用できる制度・サービスは異なります。つまり、在宅患者さんを支えるための社会資源を最大限活用するには、さまざまな制度・サービスへの理解が不可欠なのです」と説明する。長崎院長は自ら制度への理解を深めるため、1998年の第1回ケアマネジャー試験で資格を取得したという。

スタッフの社会資源への理解が深まったことによる成果はさまざまな面で見られる。その1つが、患者にかかわる多職種の連携と協力を最大限に引き出せるようになったことだ。

たとえば、在宅でサービスを受けていた重度の短腸症候群の患者のケース。人工肛門からの多量の排液があり、ストーマ管理が不安定で、毎日訪問看護が入る必要があったが、保険サービスの利用には制限がある。そこで同院の看護主任が呼びかけ、訪問看護やケアマネジャー、訪問薬剤師、行政のケースワーカーなどを集めた会議を開催。その結果、地域の調剤薬局の無菌調剤室に中心静脈栄養剤の準備作業を任せられることになった。そのほか、地元医師会による無料の送迎付き入浴サービスなど、さまざまな社会資源情報が集まり、効率的なサービス活用を組み立てられた。

長崎院長は「『人に役立つおせっかい』をモットーに、患者さんの生活背景にまで視野を拡げ、社会資源を活用した積極的な支援を行っています。頸椎損傷でマウスピース型人工呼吸器使用の患者さんの大学進学の際、他府県には通学支援の助成金があることを知り各所に相談したところ、マスメディアや地方議員の尽力もあり、北九州市でも『重度障害者大学等進学支援事業』が始まりました。医療面だけでなく、さらに踏み込んだ積極的な生活支援型医療を心がけています」と話す。


信頼できる相手と連携しネットワークを広げる

困難事例受け入れを可能にしているもう一つの要因が、訪問看護ステーションや病院との連携体制だ。強固な連携体制をつくるために同院では連携先が仕事をしやすい環境づくりに取り組んでいる。

たとえば訪問看護に対しては、相手の見解を尊重するほか、必要な医療材料はコストを惜しまず提供している。また、病院や訪問看護との患者の状態・情報の共有化で、病院、診療所、訪問看護等の相互の信頼感を高め、急変時の対応が必要になった場合にもスムーズに受け入れられてもらえるよう努めている。細かな配慮が信頼関係につながり、病院から、同院と訪問看護とセットでの患者の逆紹介を受けるケースも増えている。その際には、患者の入院前のかかりつけ医とも連絡を取る。こうした丁寧な対応は、地域の他診療所との良好な関係にもつながっている。

同院では現在、院長と非常勤医師4人で24時間365日体制を敷いているが、今年4月から新たに常勤医師1人と、夜間対応もできる非常勤医師1人を増員する予定だ。

「患者数は順調に伸び、現在当院では、キャパシティオーバーで軽度の患者さんを断らざるを得ない場合もあります。若い常勤の先生にはその部分もカバーしてもらいながら在宅医療のマインドを学んでもらい、次の世代の地域医療を担う存在になってほしいと考えています。私もますますターミナルや困難事例に注力することができるので、地域の患者の在宅療養生活をこれからも支え続けていきたい」と長崎院長は意欲的だ。


●在宅サポートながさきクリニック
[所在地] 福岡県北九州市小倉北区真鶴1 - 4 - 11 - 5 F
[TEL ] 093 - 562 - 0900
[診療科] 内科、在宅医療

(クリニックばんぶう 2018年1月号)

 

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