職員が動くとき、組織が変わるとき 第16回
さいごに
2018-03-12
初日に若手の女性薬剤師から「お前、何しに来たんだ!」と言われてスタートした私の出向も、6ヶ月を迎え、とうとう出向期間満了となりました。最初は本当にどうなるかという状況でしたが、経営状況も好転し、職員の退職も収まり、補充も進み、何とか回復基調に乗せることができました。当初は話す相手もなく、職員から敵視されることばかりでしたが、最後は皆さんと笑顔で別れることができました。

思い返すと経営陣への極度の不振、職員間の対立、極端な退職(「今日辞めます」)、IVHの在宅事業の危機、取引業者との問題、患者さんとのトラブルなど、この連載でご紹介できたもの、できなかったもの含め、あらゆる問題のオンパレードで、私としては大変貴重な体験をさせていただきました。出向当初に手帳に記した「逃げない、投げない、あきらめない」という言葉を毎日見て、真摯に取り組むことにより、道が開けてきました。

さて、この連載のテーマである「職員が動くとき、組織が変わるとき」についてですが、私はこの出向期間を通じて、次のように気づきました。

(1)「職員が動くとき」は、職員が希望を見出すことができたときである。危機感であおったり、問題点を糾弾するやり方は、一時的には動くかもしれないが、委縮してしまい継続しない。とにかく職員に希望を示すことが経営者にとってとても重要である。

(2)「組織が変わるとき」は、経営陣を含めた職員全体が信頼感で結ばれるとともに、モノの見方・考え方が磨かれていくことで実現される。だから経営者やリーダーは考え方を高め続けなければならない。これらを具体的に実践してきたのが、私の出向体験でした。振り返ると、「職員が動き始めたな」、「組織が変わり始めたな」と思うポイント、潮目が変わり始めたなという時期が確かにありました。一つは、出向して1ヶ月少し経った頃です。私は次のことを継続していたのですが、職員が少しずつ私の話を聞いてくれるようになってきたと実感しました。

・毎朝一番に出勤し、一番遅くに退社すること
・毎朝必ずどこかの店舗に出勤し、朝礼を一緒にすること(それまで朝礼をしていない店舗もあった)
・日中はとにかく店舗を回り、職員の話をよく聞くこと
・良い提案や要望は即決で即時着手すること(認識即行動)

当たり前の徹底が、職員からの信頼を得るポイントだと思います。

もう一つの変化のポイントは、週3回の「本部通信」を発行したことです。ものの見方・考え方を自分中心から相手中心に向けて高めてほしい、これがないとウメノキ薬局(仮称)の発展はないと考えて取り組みました。週3回は大変で、これは私自身の決意を示したものでもあったのですが、本部だよりの発行が進むにつれて、職員がより前向きに取り組んでくれるようになってきました。組織としての一体感が高まってきたように思います。やはり、職員からすると、経営陣がどのような考え方で組織を動かしているのかを知るということは重要なことでしょうし、その考えが納得のいくものであれば、さらに信頼が高まると思います。考えを発信していくということがとても大事だと思いました。

経営は正解や答えがないものなのかもしれませんが、外してはいけない本質というものはあると考えています。それは、経営者が真摯な姿勢を持って、正しいこと、当たり前のことを徹底していくということです。そうすれば、職員は必ずついてきてくれるはずです。これは、経営者だけでなく、リーダーも同じことでしょう。部下からの信頼を今一つ得られていないリーダーは、この部分が足りていないということが少なくありません。その割に様々なマネジメント“手法”にこだわってしまう。信頼の土台の上に手法があるから効果的なのであって、信頼の土台がないのに手法だけ駆使すると相手は騙されたかのような感覚に陥ってしまいます。

私は入社以来、社内で当たり前の徹底を叩き込まれてきました。弊社では5つの基本行動としてまとめられています。とにかく当たり前のことです。しかし、これこそが、組織の根幹であり、実際に多くの組織の発展に貢献できるということを実感した出向でもありました。

ウメノキ薬局は現在も順調に事業を継続しており、在宅事業も広がりを増しています。今回の連載が、皆様の何かのヒントになることができましたら幸いです。ご愛読ありがとうございました。(連載終)

株式会社日本経営戦略人事コンサルティング 橋本 竜也

 

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