特集 地域医療構想と働き方改革(前編)
2018年テーマの焦点を問う
2018-02-13
2018年度診療報酬改定の基本方針は「地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進」である。この方針のもとに進められている地域医療構想は、どこまで医療提供体制を変革できるのか。さらに2017年、新たなテーマにクローズアップされた医師の働き方改革は、応召義務や救急現場との両立から着地点が見えていない。一般社団法人医療介護福祉政策研究フォーラムが10日、都内で開いた新春座談会「地域医療構想と地域包括ケア」では各分野の論客が課題を語った。


【問題提起】
形骸化して実態が議論されない医療介護総合確保促進会議

2025年の在宅医療ニーズは現在の60万人から130万人へ

2025年に向けた医療・介護提供体制の柱は「病床の機能分化・連携の推進」「医療ニーズの高い要介護者への対応」「在宅医療・介護サービスの充実」である。厚生労働省大臣官房審議官(医療介護連携担当)の伊原和人氏は10日、一般社団法人医療介護福祉政策研究フォーラムが都内で開いたシンポジウム「地域医療構想と地域包括ケア」で、こう強調した。

「2025年に向けて在宅医療の需要は、高齢化の進展や地域医療構想による病床機能・連携により大きく増加する見込みである。こうした需要の増大に確実に対応していくための提供体制を都道府県、市町村、関係団体が一体となって構築していくことが重要だ」

現在の訪問診療患者数は約60万人。25年の在宅医療ニーズ増加数は、75歳以上人口で約40万人、病床機能分化で新たに約30万人の計70万人と推計されている。この推計について、日本医師会副会長の今村聡氏は「病床機能分化で発生する新たなニーズは、あくまで機械的な計算結果。実際に現場で対応可能な数字ではない。全国的に在宅の基盤づくりを進めていくが、入院と在宅のどちらも重要という考えが基本原則である」と指摘した。

2018年度診療報酬改定では、在宅医療の論点が(1)比較的状態の安定した患者に対する訪問診療について、新たな評価を設ける(2)併設する高齢者向け住まいへの訪問診療について、外来診療と訪問診療の中間的な性質であることを踏まえ、評価を新設する-とされた。

在宅医療の体制構築に向けて、訪問診療を実施する医療機関の整備目標をどう設定すればよいのか。伊原氏は「将来の在宅医療の需要を、医療機関ごとの対応できる患者数(訪問診療数、在宅看取り数など)で割り返した値(施設数)を目標とする」と説明する。整備目標を試算している例に、横浜市青葉区の取り組みがある。

青葉区は「2025年に死亡者数のボリュームが医療機関での看取り能力の限界を超え、在宅看取りへと流れ込み、在宅看取りの増加は約3.5倍に膨らむ」と予測し、在宅医療に集中・特化したクリニック、午前外来・午後在宅のクリニック、外来クリニックの3タイプ別に年間の在宅看取り数目標を想定。その上で、内科クリニック(152カ所)総動員パターン、在宅専門クリニック(94カ所)牽引パターンの2つの整備体制を検討している。


高度急性期を担う大学病院は地域包括ケアに絡まない

在宅医療提供体制の整備など地域医療構想の財源となる地域医療介護総合確保基金の活用で、重要な役割を担っているのは地域医師会である。地域医師会が市町村の基金事業計画策定に参画して、地域の実情に応じた配分や柔軟な運用の実施が求められているが、「都道府県医師会に聞くと、そうはなっていない」(今村氏)。原因の1つとして今村氏が挙げるのは、自身も委員を務める医療介護総合確保促進会議の形骸化である。

「年に1~2回開いて、厚労省から基金の交付データなどが報告されるだけで、基金が有効に活用されているかどうかの実態まで踏み込んだ議論が行われていない。基金には積み上がった余剰金があるとも聞いている。具体的な議論を行う場が必要だと思っている」

地域医療構想については現実とのギャップも表面化している。同シンポジウムで全日本病院協会会長の猪口雄二氏は、回復期機能の把握を問題視して「回復期病棟の理解が不十分だ。回復期病棟は在宅復帰に向けた医療やリハビリを提供する機能を担う病棟で、単に回復期リハビリテーション病棟入院基本料を算定している病棟ではない。全国的に大幅に不足しているように誤解されているが、現実は不足していない」と指摘した。

地域包括ケアにおける病院の役割も、現実と乖離しているという。地域ケア会議への参加、地域の医療・介護連携体制の構築、往診・訪問診療の支援と実施などが病院の役割に挙げられているが、猪口氏によると「基幹病院や大学病院は高度急性期医療な必要な時にアクセスできる体制を整えておけばよいのであり、地域包括ケアには絡まない」

機能分化の議論は、地域包括ケアとの機能分化という新たな課題も浮上させたようだ。


(後編)へつづく

 

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