2018年度介護報酬改定の大枠を提示
2018-01-09
2017年9月の衆議院解散と10月の総選挙で中断された2018年度の介護報酬改定に関する社会保障審議会介護給付費分科会(分科会長:田中滋慶応大学名誉教授)での審議は、10月末以降急ピッチで進められた。その結果、12月6日の155回と13日の156回で審議報告に向け取りまとめが事務局から示され、分科会では各委員から意見が出された。


中重度者のケアができる体制をつくる

2017年12月13日に開催された第156回社会保障審議会介護給付費分科会で、2018年度の介護報酬改定に関する大まかな内容が示された。示された案では、「1.地域包括ケアシステムの推進」「2.自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現」「3.多様な人材の確保と生産性の向上」「4.介護サービスの適正化・重点化を通じた制度の安定性・持続可能性の確保」が柱になっている。

審議報告書では、まず1点目には地域包括ケアシステムの構築目標となる2025年が近づいている中で、引き続き「同システムの推進」が掲げられ、中重度の要介護者も含め、どの地域に住んでいても適切な医療・介護サービスを切れ目なく受けることができる体制を可及的速やかに整備すべきと示された。その上で、中重度の在宅要介護者や、居住系サービス利用者、特別養護老人ホーム入所者の医療ニーズへの対応策として、「医療・介護の役割分担と連携の一層の推進」「医療と介護の複合的ニーズに対応する介護医療院の創設」「ケアマネジメントの質の向上と公正中立性の確保」「認知症の人への対応の強化」「地域共生社会の実現に向けた取組の推進」などを上げる。

上記対応策による介護報酬上の見直しについて、次の6点を述べている。

(1)中重度の在宅要介護者や、居住系サービス利用者、特別養護老人ホーム入所者の医療ニーズへの対応として、「ターミナルケアの実施数が多い訪問看護事業所、看護職員を手厚く配置しているグループホーム、たんの吸引などを行う特定施設に対する評価を設けること」「ターミナル期に頻回に利用者の状態変化の把握等を行い、主治の医師等や居宅サービス事業者へ情報提供するケアマネ事業所に対する評価を設けること」「特養の配置医師が施設の求めに応じ、早朝・夜間または深夜に施設を訪問し入所者の診療を行ったことに対する評価を設けること」「特養内での看取りを進めるため、一定の医療提供体制を整えた特養内で、実際に利用者を看取った場合の評価を充実させること」を考えている。

(2)医療・介護の役割分担と連携の一層の推進では、報酬上のポイントとして「医療機関との連携により積極的に取り組むケアマネ事業所について、入退院時連携に関する評価を充実させるとともに、新たな加算を創設する」「訪問介護事業所等から伝達された利用者の口腔や服薬の状態等について、ケアマネジャーから主治の医師等に必要な情報伝達を行うことを義務づけること」「リハビリテーションに関し、医療から介護への円滑移行を図るため、面積・人員等の要件を緩和するほか、リハビリテーション計画書の様式は互換性をもったものにすること」など医療と介護がいっそう連携を強化していくよう求めている。

(3)注目されている医療と介護の複合的ニーズに対応する介護医療院の創設では、「現行の『療養機能強化型』と『転換老健』に相当する2つの類型を設ける」「床面積要件や、併設の場合の人員基準の緩和、転換した場合の加算など、各種の転換支援・促進策を設けること」といった転換への具体策を示している。

(4)ケアマネジメントの質の向上と公正中立性の確保として「ケアマネ事業所の管理者要件を見直し、主任ケアマネジャーであることを管理者の要件とする。ただし、一定の経過措置期間を設けること」「利用者は複数の事業所の紹介を求めることができる旨説明することをケアマネ事業所の義務とすること、これに違反した場合は報酬を減額すること」などを上げている。

このように、現在のケアマネジャーの行うケアマネジメントについて、きびしい見方をしている。これに対して委員から「主任ケアマネジャーは人員が不足している地域がある」「主任ケアマネジャーの認定については都道府県でバラつきがあり、研修を受講しただけで同資格を得るとも聞いている。果たして主任ケアマネジャーを要件にして質の高いケアマネジメントが確保できるのか」といった意見も出た。

(5)認知症の人への対応の強化については、「看護職員を手厚く配置しているグループホームに対する評価を設けること」「どの介護サービスでも認知症の人に適切なサービスが提供されるように、認知症高齢者への専門的なケアを評価する加算や、若年性認知症の方の受け入れを評価する加算について、現在加算が設けられていないサービス(ショートステイ、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、特定施設等)にも加算を創設する」といった評価が考えられている。

認知症についても重度化した人へのケアを考える必要がある。グループホームでの高度の認知症の人への対応策として看護師の配置を考えるだけでなく、すべての職員が認知症について十分な知識をもちその上でスキルをもつことが求められよう。

(6)地域共生社会の実現に向けた取組の推進では、「障害福祉の指定を受けた事業所について、介護保険の訪問介護、通所介護、短期入所生活介護の指定を受ける場合の基準の特例を設けること」「療養通所介護事業所の定員数を引き上げること」などが盛り込まれる。


自立支援と重度化を防止する介護サービス

2点目にあげているのが「自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現」である。ここでは特にリハビリテーションの効果に着目して、各サービスに加算を検討されている。具体的には下記の6点を上げている。

(1)リハビリテーションに関する医師の関与の強化として、「リハビリテーション(リハビリ)に関する医師の詳細な指示について、リハビリのマネジメントに関する加算の要件とした上で、別途評価すること」「要支援者のリハビリについて、要介護者のリハビリに設けられているリハビリのマネジメントに関する加算を設けること」

(2)リハビリテーションにおけるアウトカム評価の拡充として「現在、介護予防通所リハビリに設けられているアウトカム評価(事業所評価加算:要支援状態の維持・改善率を評価)を介護予防訪問リハビリにも設ける」「現在、通所リハビリに設けられている生活行為の向上のためのリハビリに関する加算(6か月で目標を達成できない場合は減算)を、介護予防通所リハビリにも設けること」を上げる。

(3)外部のリハビリ専門職等との連携の推進を含む訪問介護等の自立支援・重度化防止の推進では、「訪問介護、通所介護、特別養護老人ホーム等において、通所リハビリ事業所等のリハビリ専門職等と連携して作成した計画に基づく介護を評価すること」「訪問介護の身体介護として行われる「自立生活支援のための見守り的援助」を明確化するとともに、身体介護に重点を置くなど、身体介護・生活援助の報酬にメリハリをつけること」「統計的に見て通常のケアプランとかけ離れた回数(※)の訪問介護(生活援助中心型)を位置付ける場合には、ケアマネジャーは市町村にケアプランを届け出ることとすること」「市町村は地域ケア会議の開催等により、届け出られたケアプランの検証を行い、必要に応じ、ケアマネジャーに対し、利用者の自立支援・重度化防止や地域資源の有効活用等の観点から、サービス内容の是正を促す。
※「全国平均利用回数+2標準偏差」を基準として2018年4月に国が定め、10月から施行。

(4)通所介護の心身機能の維持を図るアウトカム評価の導入では、「通所介護事業所において、自立支援・重度化防止の観点から、一定期間内に当該事業所を利用した者のうち、ADL(日常生活動作)の維持または 改善の度合いが一定の水準を超えた場合を新たに評価すること」が盛り込まれる。

(5)さらに、褥瘡(床ずれ)の発生予防のための管理や排泄に介護を要する利用者への支援に対する評価を新設する。これには「特別養護老人ホーム等の入所者の床ずれ発生を予防するため、発生と関連の強い項目について、定期的な評価を実施し、その結果に基づき計画的に管理することに対し新たな評価を設けること」「排泄障害等のため、排泄に介護を要する特別養護老人ホーム等の入所者に対し、多職種が協働して支援計画を作成し、その計画に基づき支援した場合の新たな評価を設けること」などを考える。

(6)身体的拘束等の適正化の推進について、「身体的拘束等の適正化を図るため、居住系サービス及び施設系サービスについて、身体的拘束等の適正化のための指針の整備や、身体的拘束等の適正化のための対策を検討する委員会の定期的な開催などを義務づけるとともに、義務違反の施設の基本報酬を減額すること」を盛り込む。

このように、身体介護と生活支援介護との評価をいっそう明確にして、生活援助介護のあり方を見直す方向だ。これに対して、委員からは「地域包括ケアシステムでは居宅の生活を支える方向性を打ち出しながら、独居高齢者や認知症高齢者が必要とする生活支援を制限するのは逆行するのではないか」との意見も出された。

株式会社メディア・ケアプラス 松嶋 薫
(本稿は2017年12月の時点の内容です)

 

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