職員が動くとき、組織が変わるとき 第13回
IVHの在宅事業の継続の道を探る
2018-01-05
どうにか事業として継続させるために、何が問題なのかを探るために担当者に何度も話を聞きました。訪問に同行もしました。

最初の訪問は忘れ難い経験でした。その患者はパーキンソン病の方でした。訪問してみるとご家族が本当に喜んでくれます。事業の意義を思い知らされました。それにしても肉体仕事です。この患者は30日処方のため、段ボール箱で6箱もの薬の量になりました。薬の量が1日分で800ml程度になるため、30日分でざっと25キロになり、これを女性スタッフが1日に何件も訪問してくれていることを知り、本当に頭が下がる思いでした。

また、彼女たちの仕事を見ている中で、電話がたくさんかかってくることにも気づきました。電話の主は開業医の先生方です。このような先生方は、通常はあまり麻薬の処方をすることがないため、ウメノキ薬局(仮称)のIVH担当薬剤師を頼って意見を聞くための電話をかけてくるのです。てきぱきと、堂々と答えるウメノキ薬局のスタッフを見て、頼もしさとともに尊敬の想いが込み上げてきました。

こうしたことを踏まえ、私は「やはり継続させなければならない」という思いを強く持ちました。では、継続のためにはどうすればいいのか。赤字の要因を探ると効率の悪さがあることがわかりました。

上記の通り、IVHの患者は長期処方がほとんどなので、一回の訪問で大量の高カロリー輸液を届けなければなりません。届ける会社側の負担も問題ではあるのですが、むしろ患家のほうに事情があります。無菌調剤室で調製した高カロリー輸液は冷蔵庫保存が必要なのですが、これほど大量の輸液を保存しておける患家はまずありません。そのため、患者が週1回ずつに分けて届けてもらうことを希望するケースがほとんどで、ウメノキ薬局はこれに応じていたのです。しかし、毎週訪問しても、毎回指導料を算定することはできません。効率が悪く、収益が上がらない最大の要因になっていることが分かりました。


患者の理解を得られるか

IVHの在宅事業の継続のためには、処方に応じた訪問回数にする必要がありますが、患者側が簡単にこれに応じてくれるはずはありません。そこで、色々と議論し、医師の方々にも相談したところ、缶詰にされた経腸栄養剤で代替できないかという案が出てきました。これであれば保存のスペースも取りませんし、ウメノキ薬局としてもスペースと設備の問題を抱えていたクリーンルームの対策をとることができます。思い入れの強いIVHの担当者とも協議を重ね、ウメノキ薬局の経営事情も考慮したうえで、なおかつIVHの在宅患者さんへの貢献が続けられるのであればということで、理解を得ました。

問題は患者さんの同意が得られるかです。当時40人のIVHの患者さんを在宅支援していましたが、担当者が一人ひとり、丁寧に説明に回ってくれました。無菌調剤をやめるのは会社の責任ですから、説明資料は私が作り、必要があれば同行もしました。主治医は患者の数ほどの医師がいましたが、主治医にも全員説明して回りました。結局、40人中、35人の患者さんが同意してくれました。担当者は本当に一生懸命やってくれました。特にIVHのリーダーは、当初すごい勢いで私を怒鳴りつけてきた薬剤師ですが、そんなことは抜きにして本当に頭が下がります。要は、私の向き合い方次第でした。一緒に難局に取り組む中で、同志、戦友のようになっていきました。

問題は、同意いただけなかった5人の患者です。この5人については、ウメノキ薬局よりもIVHの在宅に力を入れている、他の調剤薬局にお願いすることになりました。そもそも、お願いできる薬局があるのであれば、最初から全員お願いするという選択肢もあったのですが、当時ウメノキ薬局がある県でIVHの無菌調剤に取り組んでいる薬局は他に1軒しかなかったのです。そのため、大量に受けるのは無理だと言われていました。希望者が5人に絞られたところで、了解を得ることができ、IVHのリーダーと二人で、車で引き継ぎに行きました。帰りの車中、二人ともなぜだか涙ぐんでいました。達成感なのか、敗北感なのか。いろいろな感情ですが、何かを乗り越えたということは間違いなかったと思います。(次回につづく)

株式会社日本経営戦略人事コンサルティング 橋本 竜也

 

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