2018年に向けて調剤薬局の抱える大問題(1)
財務省のやり玉に上がる大手調剤薬局チェーン
2017-12-21
薬剤師バブルを招いた責任は国や文科省にある

2018年度の診療報酬改定は、予想された通り全体ではマイナス改定となる見通しです。ただ、幾つかのマスコミで報道されたように、医師等医療専門職の技術料等に係る「本体部分」は若干のプラス幅に調整し、薬価等を大幅に引き下げて、政府は医療団体や族議員らの「顔を立てる」姿勢を“演出”することになるのでしょう。

マイナス改定で、薬価と同様にスケープゴートになりそうなのは調剤報酬です。財務省が2017年10月25日に開催した「財政制度分科会」の資料をつぶさに検証すると調剤薬局、特に全国規模の大手調剤薬局チェーンやマンツーマン薬局に対して、同省の調剤報酬マイナス誘導に向けた厳しい姿勢が伺えます。(図表1)

同資料の冒頭で、「日本の薬剤師数は近年、増加しており、国際的にもOECD諸国の中で最も多い」こと。更に、現在5万8千件を超える薬局数は近年、激増しており、「コンビニエンスストアの店舗数よりも多い」ことが強調され、しかしながら「供給調整が行なわれず、薬剤師の増加により薬剤師一人当たり処方せん枚数が減少している中、調剤報酬の引き上げで薬剤師一人当たりの技術料が維持されてきた状況」を危惧しています。

【図表1】

ただ、矛盾していると感じるのは、そもそも2003年以降に全国各地で薬科大学や薬学部が次々と新設され、今後も薬学部の新設計画が進められていること。一方、薬科大学・薬学部の新設ラッシュにより、57私立大学中14大学が定員割れに陥っている状況等、政府・文部科学省の薬剤師養成に対する失策に大きな責任があることは否定出来ません。『週刊東洋経済』2017年11月11日号で、「薬局の正体」という特集記事が掲載されていますが、「57私立薬学部を独自格付け」という衝撃的なデータが示されています。

2011年入学者を対象にしたデータで、その中では何と入学者比国家試験・合格率の50%を切っているのが57校中21校、30%以下の大学が4校も存在しています。ちなみに、獣医学部の新設で話題になった加計グループの千葉科学大学薬学部は合格率が31.17%という数字。国家試験合格率の低い大学の多くは、2000年以降に開設された薬学部・薬科大学が多くを占めています。(薬剤師養成に係る問題は、次回でより詳しく書く予定です。)

財務省は近年の薬剤師バブルを招いた国や文科省の薬剤師養成のあり方そのものに一石を投じるべきなのですが、政治マターにも係る案件であり、その点については「忖度」したのか、同資料でも言及されていません。全ての問題解決を調剤報酬圧縮に収斂しようとするのは、納得しかねる薬局関係者も多いのではないかと想像します。


財務省が描く「かかりつけ薬局=善」「大型門前薬局=悪」の二元論図式

さて、図表2の資料では、院外処方と院内処方のコスト差に言及され、「院外処方の場合は院内処方と比べて3倍超の診療報酬(技術料)が算定され、(中略)調剤基本料と調剤料については、薬局のどのような機能を評価して、院内処方と比べたコスト差が生じているのかが明らかでない」と問題視しています。

【図表2】

財務省が、一番のやり玉に上げているのは大手調剤薬局チェーンで、「同一法人で保険調剤を行っている店舗数の多い薬局では、収益率が2ケタ台と高い」上に、特定医療機関で処方される医薬品への対応が中心になるため、備蓄品目数が少なくて済み、面分業を行っている薬局と比べてコストを低く抑え易い傾向にある」ことを具体的なデータで示しています。続いて、今年の夏頃に幾つかの大手調剤薬局グループで相次ぎ発覚した処方せん「付け替え」による不正請求問題について言及されています。要するに現行の制度では門前薬局で、特定医療機関からの「処方せん集中率」が高ければ高い程調剤基本料が低く設定されています。「付け替え」請求問題とは特定の医療機関からの処方せん集中率を下げることを目的に、大手薬局グループが同グループの他の薬局で受け付けて調剤した薬局の従業員や家族等の「処方せん」を不正に受け付けて保険請求した問題です。

巧妙な不正請求の手口ですが、店舗数の多い薬局グループである程、起こり易い行為とも言えます。残念だったのは本来、調剤薬局業界で自ら範を示すべきトップ10に入るような規模3社のグループ薬局において「付け替え」請求が表面化したこと。だから、マスコミも大きく報道したのです。しかし見方を換えると次回調剤報酬改定で、世論を味方に付け大手門前薬局チェーンのネガティブイメージを増殖させたい財務省にとって、「付け替え請求」問題が実際に起こったことは、「渡りに船」だったのかもしれません。

同報告書「予算執行調査を踏まえた改革の方向性」の中に注目すべき記述が見られます。紹介すると「調剤基本料や調剤料について、地域のかかりつけ機能を担っている薬局は適切に評価しつつ、こうした機能を果たしていない薬局の報酬水準は適正化すべき」とした上で、「大手調剤薬局グループに所属している薬局や、処方せん集中率の高い薬局については、経営環境・収益性の観点からも、より低コストでのサービス提供を求めて行くべき」と断言。

更には、「28年度の改定での調剤報酬の適正化は不十分である」と指摘した上で、「大型門前薬局に係る調剤基本料の対象範囲を拡大し、(中略)規模に応じた収益性や処方せん集中率の差異を踏まえた段階的な報酬設定をすることも考えられる」とまでで踏み込んでいます。

これらの文脈から推定されるのは、言うまでもなく「かかりつけ機能」を担う薬局を重点評価し、門前薬局は前回改定よりも更に減額すること。現在、1~5までと「特別調剤基本料」の6種類ある調剤基本料に関して、更に細分化しメリハリを付けて、特定医療機関への処方せん集中率の高い門前薬局は、更にマイナスへと誘導しようとの意図が透けて見えます。財務省の思惑通りに事は進むのか? 財務省対厚生労働省の攻防は、これから本格的に始まります。

(医療ジャーナリスト:冨井 淑夫)

 

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