「脱・老人病院」を院内に徹底しケアミックス病院へ
社会福祉法人信愛報恩会信愛病院(東京都清瀬市)
2017-12-14
「長期療養」機能は残しつつ地域の高齢者の受け入れも開始

社会福祉法人信愛報恩会信愛病院はもともと、介護療養病床を中心に緩和ケアなど、在宅療養が難しい患者の受け皿機能を中心に担ってきたが、2016年以降、地域の実情を踏まえた機能強化にも取り組み、着々と成果をあげている。


長期療養一辺倒から「地域を支える」病院へ

「長期療養一辺倒の病院からの脱却」。2016年4月、都内の急性期病院副院長から信愛病院に着任した当初、越永守道院長が地域の実情や自院に求められる役割などを考え合わせた末に出した方向性である。

従来、同院は介護療養病床を軸に自宅での療養が難しい患者を受け入れ、長期療養の受け皿として機能してきた。そのため外来機能もあるものの、仮に入院が必要と判断されても空床がほとんどなく、他の病院に受け入れてもらうこともあった。「このままでは、今後求められる地域の医療需要に応えきれないと考えました」

自宅で療養を続ける高齢患者は増える一方だが、それを支える病院は市内にはあまりない。急に具合が悪くなった際には市外の高度急性期病院に搬送され、入院するケースもある。受け入れる高度急性期病院としても事前情報がないまま治療を始めざるを得ず、結果的に患者に過度な負担を強いることさえある。それよりは、患者の生活背景について情報を得やすい地域の病院で受け入れ、状態に適した医療を提供したほうが患者にとってもいいのではないかと考えたのだ。「場合によっては過度な処置はせず、お看取りすることもあります。そうした対応は、やはり地域の病院のほうが適任です」

新たな役割を果たすべく、介護療養病床3棟のうち1棟を医療療養病床に転換し、「自宅に帰せる患者は帰す」医療体制に改めた。「しつこいくらいに繰り返した」(越永院長)事前説明が奏功し、スタッフの反発も離脱もなく、いざとなった時でも入院できる仕組みが整った。

入院経路は従来の急性期病院からの紹介に加え、在宅患者や診療所の紹介も増え、複線化。平均在院日数は大幅に減り、療養病棟では100日以上も短縮。1日あたりの平均入院単価も上昇するなど、着実に成果をあげている。


在宅療養に「乗り出す」のではなく「支える」を追求

さらに入退院の調整機能としてすべての患者を一括で管理する「患者サポートセンター」を2017年4月に立ち上げるなど、地域との連携にも本格的に乗り出している。その過程で「(在宅医療を担う診療所のための)後方病床も当院が担うべき機能と気づきました」と越永院長は語る。

「正直に言うと、当院も在宅療養支援に乗り出したほうが良いと考えたこともありますが、診療所と患者を奪い合うのは不毛。それよりも診療所をさまざまな形で支えるほうが病院という資源の有効活用につながります」

「在宅医のためのレスパイト入院」はその典型例だ。「在宅医も時には休んだり、研修に出かけて最新情報を仕入れたりする必要があります。そんな時に当院が1週間ほど患者さんを預かることができれば、医師も患者も安心できます」
緩和ケア病棟で培った終末期ケアのノウハウを活かし、「看取り」機能を在宅支援につなげる取り組みにも着手した。可能な間は自宅で療養するにしても、状態が悪化すれば、在宅に固執せず、入院してもらう。そこで回復が見込めなければ、過度な医療提供は控え、看取るという。すでに市内で訪問診療を行うある診療所とは、終末期患者の受け入れについて提携を結ぶなど、地域からの期待度も高い。「必要以上に在宅での看取りに固執するのは、本人はもちろん家族にとっても酷だと思います」

このように「ケアミックス」志向を強める同院だが、これまでどおり長期療養病院としての機能も果たしていく。ただ、そこで課題となるのが最近、議論が活発になってきた介護医療院への転換である。「現状では介護医療院の報酬体系や加算等のインセンティブが具体的に公表されていないし、近隣他病院の動向や患者・利用者の反応も見えてこないので、引き続き情報収集に努めながら検討していきたいと思っています。どのようにも動けるように事務部門にはシミュレーションを数パターン作製させており、看護部には決定が出たら迅速に対応できる体制をつくるように指示を出してあります」

急性増悪から長期療養、看取りまでの機能を再構築し、「究極のケアミックス病院」(越永院長)を志向する信愛病院。今後の舵取りに注目が集まる。


●社会福祉法人信愛報恩会 信愛病院
所在地:東京都清瀬市梅園2丁目5番9号
電話:042-491-3211
病床:199床(一般〈10:1〉43床、緩和ケア20床、回復期リハビリ32床、医療療養〈25:1〉34床、 介護療養70床)
職員数:265人(常勤医9人、常勤看護師66人)

(フェーズ3 2017年11月)

 

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